表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『銀座ママ、北条政子に転生す 〜善人なのに悪女と呼ばれたので、今日も鎌倉を籠絡させます〜』  作者: 双鶴


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

111/120

第111話 義村、沈黙の代償

政所の外で民衆が怒号を上げた翌朝。


──鎌倉の空気が変わった。


昨日までの“敵意”は、

今日は“静かな恐怖”へと形を変えていた。


「三浦殿は……沈黙したままか」

「胤義殿は潔白とされたが……」

「沈黙こそ、最も不気味だ……」


(鎌倉は今、

 “三浦が何を考えているか分からない”ことを恐れている)


義時が政子の屋敷へ現れた。

その顔は、これまでで最も険しい。


「姉上……

 三浦殿が……

 “屋敷に籠もったまま”だと」


私は息を吸った。


(来た……

 義村が“沈黙”を選んだ段階)


「義時。

 沈黙は、時に“裏切り”より重いのよ」


義時は拳を握った。


「姉上……

 義村殿は……

 壊れてしまうのでは……」


「壊れる前に、

 あなたが行きなさい」


義時は頷いた。


(義時……

 あなたは今、

 “友を救う”のではなく、

 “鎌倉を守るために友を抱きとめる”段階に入った)



──三浦義村の屋敷。


義村は、

暗い部屋の中で膝を抱えていた。


外の怒号は消えた。

だが──

その静けさが、

義村をさらに追い詰めていた。


「……皆……

 私を……

 見放したのか……?」


そこへ、

弟の胤義が駆け込んできた。


「兄上!」


義村は顔を上げた。


「胤義……

 私は……

 鎌倉に……

 必要とされているのか……?」


胤義は首を振った。


「兄上。

 鎌倉が兄上を疑っているのではありません。

 “京が鎌倉を揺らしている”のです!」


義村の目が揺れた。


「だが……

 民は……

 私を裏切り者と呼ぶ……

 御家人たちも……

 私を疑う……

 私は……

 何を信じれば……

 よい……?」


胤義は義村の手を握った。


「兄上。

 信じるものは一つでいい。

 “兄上は鎌倉を裏切らぬ”という事実です」


義村の目に涙が浮かんだ。


(義村……

 あなたは今、

 “沈黙の代償”を背負っている)


そこへ──

義時が現れた。


「義村殿!」


義村は振り返った。


「義時殿……

 私は……

 どうすれば……

 鎌倉を……

 守れる……?」


義時は静かに言った。


「義村殿。

 あなたが立ち続けること。

 それだけで……

 鎌倉は守られます」


義村は息を呑んだ。


「だが……

 私は……

 もう……

 立てぬかもしれぬ……」


義時は義村の肩を掴んだ。


「立てます。

 私が……

 あなたを支えます」


義村の目に、

はっきりと涙が流れた。


(義村……

 あなたは今、

 “壊れる寸前”で踏みとどまっている)



──その頃、京。


後鳥羽院は報告を聞き、

静かに笑った。


「三浦義村は……

 沈黙したか」


侍従が言った。


「しかし……

 義時殿と政子様が支えております」


後鳥羽院は扇を閉じた。


「ならば──

 “支えを折る”」


行成は息を呑んだ。


(政子殿……

 京は本気で“鎌倉の柱”を折りに来る)



──夜。


政子は灯火の揺れを見つめていた。


義村は、

沈黙の中で揺れている。


筆を取る。


「……義村。

 あなたの沈黙は、

 鎌倉を揺らし、

 京を喜ばせている。

 だが──

 あなたが立ち続ける限り、

 鎌倉はまだ壊れない」


筆を置いた。


静かに、

しかし確かに──

鎌倉の底が、

またひとつ鳴った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ