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『銀座ママ、北条政子に転生す 〜善人なのに悪女と呼ばれたので、今日も鎌倉を籠絡させます〜』  作者: 双鶴


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110/120

第110話 胤義、政所へ──裂ける三浦の絆

胤義が政所へ出頭することを決めた翌朝。


──鎌倉の空気が変わった。


昨日までの“ざわめき”は、

今日は“緊張”へと形を変えていた。


「胤義殿が政所へ向かわれるらしい」

「三浦殿は……どうするのだ」

「これは……鎌倉の分岐点では……?」


(鎌倉は今、

 “誰がどちら側か”を見極めようとしている)


義時が政子の屋敷へ現れた。

その顔は、決意と不安が入り混じっていた。


「姉上……

 胤義殿が……

 政所へ向かわれました」


私は静かに頷いた。


「義時。

 ここからが本番よ」


義時は息を呑んだ。


「本番……?」


「ええ。

 “出頭”は、

 京にとっても、鎌倉にとっても、

 “揺らすための舞台”なの」


義時の表情が強張った。


(義時……

 あなたはまだ“公開の場での揺さぶり”の恐ろしさを知らない)



──三浦義村の屋敷。


義村は、

胤義の背中を見送っていた。


「胤義……

 すまぬ……

 すまぬ……」


胤義は振り返り、微笑んだ。


「兄上。

 私は兄上を信じております。

 それだけで十分です」


義村の目が揺れた。


「胤義……

 私は……

 お前を守れぬかもしれぬ……」


胤義は首を振った。


「兄上。

 守る必要などありません。

 私は……

 兄上の“誇り”でありたいのです」


義村は息を呑んだ。


(胤義……

 お前は……

 私より強い)


そこへ、

家臣が駆け込んできた。


「殿……!

 鎌倉の町で……

 “三浦は裏切り者だ”という声が……

 さらに増えております!」


義村の顔が歪んだ。


「……なぜだ……

 なぜ……

 こうも簡単に……

 人は疑う……!」


家臣は震える声で言った。


「殿。

 “密書”が……

 また見つかったと……」


義村の心が、

音を立てて崩れた。


(密書……

 またか……

 今度は……

 誰を狙う……?)



──政所。


胤義が政所に入ると、

御家人たちの視線が一斉に向けられた。


「胤義殿……」

「本当に……京と通じていないのか……?」

「三浦家は……鎌倉につくのか……?」


胤義は一歩前に出た。


「皆。

 私は裏切っておりません。

 京とも通じておりません。

 密書は……

 “偽り”です」


御家人たちがざわつく。


義時が前に出た。


「皆。

 胤義殿の言葉を信じてほしい。

 京は鎌倉を割るために動いている。

 和田の次は三浦。

 そして今度は……

 “三浦の弟”だ」


空気が変わった。


しかし──

その時だった。


政所の外から、

怒号が響いた。


「三浦を出せ!」

「裏切り者を裁け!」

「鎌倉を乱すな!」


御家人たちが顔を見合わせた。


「町の者たちが……?」

「なぜ政所に……?」

「これは……ただ事ではない……!」


義時が外を見て、

顔を青ざめさせた。


「姉上……

 これは……

 “京の仕掛け”です……!」


私は静かに言った。


「ええ。

 京は……

 “民の声”を使ってきたのよ」


(政子……

 あなたは今、

 “鎌倉の民意”という新たな敵と向き合う)



──政所の外。


黒衣の密使が、

群衆の中に紛れていた。


「三浦を疑え。

 鎌倉を守れ。

 裏切り者を許すな」


密使は囁き続けた。


「声は……

 刃より鋭い」



──夜。


政子は灯火の揺れを見つめていた。


胤義は政所へ出頭した。

だが──

京は“民の声”を使って鎌倉を揺らし始めた。


筆を取る。


「……鎌倉。

 あなたは今、

 “内側から崩れる音”を立てている」


筆を置いた。


静かに、

しかし確かに──

鎌倉の底が、

またひとつ鳴った。


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