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『銀座ママ、北条政子に転生す 〜善人なのに悪女と呼ばれたので、今日も鎌倉を籠絡させます〜』  作者: 双鶴


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第109話 義村、二つの忠義の狭間で

胤義が“京と通じている”という噂が広まって二日目。


──鎌倉の空気が変わった。


昨日までの“静けさ”は、

今日は“ざわめき”へと形を変えていた。


「今度は胤義殿が疑われているらしい」

「三浦家は……どうなっているのだ」

「義村殿は……どう動くのか」


(鎌倉は今、

 “三浦家そのもの”を疑い始めている)


義時が政子の屋敷へ現れた。

その顔は、これまでで最も険しい。


「姉上……

 三浦殿が……

 “政所に来られぬ”と……」


私は息を吸った。


(来た……

 義村が“決断を迫られる段階”)


「義時。

 義村は今、

 “弟を守るか、鎌倉を守るか”

 その二つの間で揺れているのよ」


義時は拳を握った。


「姉上……

 義村殿は……

 どちらを選ぶのでしょう」


「それは……

 義村自身が決めるしかない」


義時は息を呑んだ。


(義時……

 あなたはまだ“忠義の重さ”を知らない)



──三浦義村の屋敷。


義村は、

胤義と向き合っていた。


「胤義……

 お前は……

 本当に京と通じていないのだな」


胤義は叫んだ。


「兄上!

 私は裏切っておりません!」


義村の目が揺れた。


「だが……

 密書は……

 お前の筆跡に似ていたと……」


胤義は拳を握った。


「兄上。

 筆跡など、いくらでも真似できます!

 兄上が疑うなら……

 私は……

 どうすれば……!」


義村は震える声で言った。


「私は……

 お前を疑いたくない……

 だが……

 鎌倉は……

 お前を疑っている……」


胤義は息を呑んだ。


(義村……

 あなたは今、

 “弟”と“鎌倉”の間で裂かれている)


そこへ、

家臣が駆け込んできた。


「殿……!

 政所から使者が……!」


義村は顔を上げた。


「何だ」


家臣は震える声で言った。


「“胤義殿を政所へ出頭させよ”

 とのことです……!」


義村の心が、

音を立てて揺れた。


「……胤義を……

 政所へ……?」


胤義は顔を青ざめさせた。


「兄上……

 私は……

 どうすれば……」


義村は言葉を失った。


(義村……

 あなたは今、

 “選ばされる側”に追い込まれている)



──政所。


御家人たちがざわついていた。


「胤義殿を呼び出すべきだ」

「いや、三浦殿を刺激するのは危険だ」

「だが……

 このままでは鎌倉が揺れる……!」


義時が前に出た。


「皆。

 胤義殿は裏切っていない。

 だが……

 “疑いを晴らす場”は必要だ」


御家人たちが頷いた。


私は前に出た。


「皆。

 京は“鎌倉を割るために”動いている。

 和田の次は三浦。

 そして今度は……

 “三浦の中の三浦”よ」


空気が止まった。


義時は続けた。


「三浦殿が来られぬなら、

 私が三浦殿のもとへ行きます」


御家人たちが息を呑んだ。


(義時……

 あなたは今、

 “鎌倉の柱”として動き始めた)



──三浦義村の屋敷。


義村は、

胤義の肩に手を置いた。


「胤義……

 政所へ行け」


胤義は目を見開いた。


「兄上……!」


義村は震える声で言った。


「お前が行かねば……

 三浦家が……

 鎌倉の敵になる……」


胤義は拳を握った。


「兄上……

 私は……

 兄上のためなら……

 どこへでも行きます」


義村の目に涙が浮かんだ。


(義村……

 あなたは今、

 “弟を信じる”という決断をした)


しかし──

その場にいた誰も気づいていなかった。


屋敷の外で、

密使が静かに呟いたことに。


「弟を差し出すか……

 ならば──

 “兄を壊す”」



──夜。


政子は灯火の揺れを見つめていた。


義村は、

胤義を政所へ送る決断をした。


筆を取る。


「……義村。

 あなたの忠義は、

 今、最も痛ましい形を取ろうとしている」


筆を置いた。


静かに、

しかし確かに──

鎌倉の底が、

またひとつ鳴った。


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