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『銀座ママ、北条政子に転生す 〜善人なのに悪女と呼ばれたので、今日も鎌倉を籠絡させます〜』  作者: 双鶴


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第108話 京の刃、義村の胸に届く

義村が政所に姿を見せ、

義時と胤義に支えられて立ち直りかけた翌朝。


──鎌倉の空気が変わった。


昨日までの“重さ”は、

今日は“静けさ”へと形を変えていた。


だがその静けさは、

“嵐の前の静けさ”だった。


「三浦殿は……落ち着かれたらしい」

「義時殿が支えたと聞いた」

「ならば……鎌倉はまだ大丈夫だ」


(鎌倉は……

 “戻った”と信じたいのだ)


義時が政子の屋敷へ現れた。

その顔には、わずかな安堵があった。


「姉上。

 三浦殿は……

 昨日よりも落ち着いておられました」


私は頷いた。


「義村は……

 “支えられれば立てる男”よ」


義時は少し笑った。


「ええ。

 胤義殿も、よく支えておられます」


(義時……

 あなたはまだ知らない。

 京は“支え”そのものを狙ってくる)



──その頃、鎌倉の外れ。


黒衣の密使が、

新たな文を手にしていた。


「……三浦はまだ折れぬか。

 ならば──

 “折れる理由”を与えるまで」


男は文を開いた。


そこには、

三浦義村の弟・胤義の名があった。


「胤義を……

 “裏切り者”に仕立てる」


密使は微笑んだ。


「義村は……

 “自分のためには揺れぬが、

 弟のためには揺れる男”」


(京は……

 本気で義村を折りに来た)



──三浦義村の屋敷。


義村は、

久しぶりに落ち着いた表情をしていた。


「胤義……

 昨日は……

 すまなかった」


胤義は笑った。


「兄上。

 私は兄上を信じております。

 それだけで十分です」


義村は目を細めた。


(胤義……

 お前がいてくれるから……

 私は立てる)


そこへ、

家臣が駆け込んできた。


「殿……!

 大変です……!」


義村は顔を上げた。


「どうした」


家臣は震える声で言った。


「胤義殿が……

 “京と通じている”という噂が……

 鎌倉中に広まっております!」


義村の顔が凍りついた。


「……何だと……?」


胤義は目を見開いた。


「兄上……

 私は……

 そんなことは……!」


家臣が続けた。


「しかも……

 “胤義殿の筆跡に似た密書”が……

 町で見つかったと……!」


義村の心が、

音を立てて揺れた。


(密書……

 またか……

 今度は……

 胤義……?)


義村は震える声で言った。


「胤義……

 これは……

 本当なのか……?」


胤義は叫んだ。


「兄上!

 私は裏切っておりません!」


義村の目が揺れた。


(義村……

 あなたの弱点は“自分”ではなく“弟”)



──政所。


御家人たちがざわついていた。


「今度は……胤義殿が……?」

「三浦家は……どうなっているのだ……」

「義村殿は……どう動く……?」


義時が前に出た。


「皆。

 これは“京の罠”だ。

 胤義殿が裏切るはずがない!」


しかし──

一人の御家人が言った。


「だが……

 密書は“胤義殿の筆跡に似ていた”と……」


空気が揺れた。


私は前に出た。


「皆。

 京は“鎌倉を割るために”動いている。

 和田の次は三浦。

 そして今度は……

 “三浦の中の三浦”よ」


御家人たちが息を呑んだ。


義時は拳を握った。


「三浦殿のもとへ行きます。

 義村殿を……

 これ以上揺らさせぬために」


私は頷いた。


(義時……

 あなたは今、

 “鎌倉の柱”として動き始めた)



──夜。


政子は灯火の揺れを見つめていた。


京は、

義村ではなく、

胤義を狙った。


筆を取る。


「……義村。

 あなたの心は、

 今、最も折れやすい場所にある」


筆を置いた。


静かに、

しかし確かに──

鎌倉の底が、

またひとつ鳴った。


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