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『銀座ママ、北条政子に転生す 〜善人なのに悪女と呼ばれたので、今日も鎌倉を籠絡させます〜』  作者: 双鶴


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105/120

第105話 揺れる三浦、裂ける家中

偽の密書が政所に持ち込まれた翌朝。


──鎌倉の空気が変わった。


昨日までの“疑い”は、

今日は“分裂”へと形を変えていた。


「三浦殿の筆跡に似ていたらしい」

「いや、政子様は偽書だと言っていた」

「だが……似ているのは事実だろう」


(鎌倉は今、

 “真実”ではなく“印象”で動き始めている)


義時が政子の屋敷へ現れた。

その顔は、昨夜よりもさらに険しい。


「姉上……

 三浦家の家臣たちが……

 “義村殿を疑い始めている”との報せが……」


私は息を吸った。


(来た……

 京の狙い通り)


「義時。

 三浦の揺れは、

 “鎌倉の揺れ”ではなく、

 “家中の揺れ”に変わったのよ」


義時は拳を握った。


「姉上……

 三浦殿は……

 大丈夫でしょうか」


「義村は強い。

 でも──

 “孤独”には弱い」


義時は息を呑んだ。


(義時……

 あなたはまだ“家中の崩れ”の恐ろしさを知らない)



──三浦義村の屋敷。


義村は、

家臣たちの視線に囲まれていた。


「殿……

 昨日の密書は……

 本当に偽のものなのですか」


「殿は……

 京と通じておられぬのですか」


「殿が沈黙していたのは……

 何か理由が……?」


義村の顔が歪んだ。


「黙れ……

 私は裏切っていない!」


しかし──

家臣たちは止まらなかった。


「殿。

 筆跡が似ていたのは事実にございます」

「鎌倉の者たちも疑っております」

「このままでは……

 三浦家が危ういのです!」


義村は拳を震わせた。


「……お前たちまで……

 私を疑うのか……?」


家臣の一人が言った。


「殿。

 “沈黙”は……

 家中を揺らします」


義村は言葉を失った。


(義村……

 あなたは今、

 “外”ではなく“内”から揺らされている)


そこへ──

弟の胤義が現れた。


「兄上!」


義村は振り返った。


「胤義……

 お前まで……

 私を疑うのか」


胤義は首を振った。


「兄上を疑う者など、

 三浦には一人もおりません!」


家臣たちがざわついた。


「胤義殿……

 しかし……」

「密書の件は……」


胤義は一喝した。


「黙れ!」


空気が止まった。


「兄上は裏切らぬ。

 それを疑う者は……

 三浦の名を汚す者だ!」


義村の目が揺れた。


(胤義……

 お前だけが……

 私を“信じている”のか)


胤義は続けた。


「兄上。

 政所へ行きましょう。

 “沈黙”が兄上を傷つけているのです」


義村はゆっくりと頷いた。


「……分かった。

 行こう、胤義」


(よし……

 三浦家の“内部崩壊”は、

 胤義が止めた)



──政所。


義村が姿を見せると、

御家人たちの空気が揺れた。


「三浦殿……」

「本当に……裏切っていないのか……?」

「いや、政子様は偽書だと言っていた……」


義村は前に出た。


「皆。

 私は裏切っていない。

 京とも通じていない。

 密書は……

 “偽り”だ」


御家人たちが息を呑んだ。


義時が言った。


「三浦殿。

 あなたが来てくれて……

 私は嬉しい」


義村は小さく笑った。


「義時殿。

 私は……

 鎌倉を裏切らぬ」


(義村……

 あなたは“戻る道”を選んだ)


しかし──

その場にいた誰も気づいていなかった。


政所の外で、

密使が静かに呟いたことに。


「戻る道を選んだか。

 ならば──

 “戻れぬ道”を作るまで」



──夜。


政子は灯火の揺れを見つめていた。


三浦家の揺れは、

家中の裂け目にまで広がった。


筆を取る。


「……三浦義村。

 あなたは今、

 “疑いの渦”の中心にいる」


筆を置いた。


静かに、

しかし確かに──

鎌倉の底が、

またひとつ鳴った。


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