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『銀座ママ、北条政子に転生す 〜善人なのに悪女と呼ばれたので、今日も鎌倉を籠絡させます〜』  作者: 双鶴


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第104話 密書一通、鎌倉を裂く

三浦義村が政所に戻った翌朝。


──鎌倉の空気が変わった。


昨日までの“疑心暗鬼”は、

今日は“安堵”へと形を変えていた。


「三浦殿が戻られた」

「ならば……鎌倉はまだ一つだ」

「義時殿も政子様も、よく支えたものだ」


(鎌倉は……

 “戻った”と信じたいのだ)


義時が政子の屋敷へ現れた。

その顔には、久しぶりに安堵があった。


「姉上。

 三浦殿は政所で皆に頭を下げました。

 “疑われるような真似はしない”と」


私は頷いた。


「義村は……

 まだ揺れているけれど、

 “戻る場所”を選んだのよ」


義時は少し笑った。


「姉上のおかげです」


(義時……

 あなたはまだ知らない。

 “安堵の直後”こそ、最も危険だということを)



──その頃、鎌倉の外れ。


黒衣の密使が、

新たな文を手にしていた。


「……三浦が戻ったか。

 ならば──

 “戻れぬようにすればよい”」


男は文を開いた。


そこには、

三浦義村の名で書かれた“偽の密書”があった。


「義時を討つべし。

 鎌倉を割るべし。

 院の御意に従う」


男は微笑んだ。


「これを……

 鎌倉の者に“拾わせる”だけでよい」


(京は……

 本気で鎌倉を壊しに来た)



──昼。鎌倉の町。


一人の若い武士が、

道端に落ちていた文を拾った。


「……これは……?」


文を開いた瞬間、

彼の顔が青ざめた。


「三浦殿が……

 京と通じて……

 義時殿を討つ……?」


武士は震える手で文を握りしめ、

政所へ駆け出した。


(京は……

 “噂”ではなく“証拠”を作りに来た)



──政所。


武士が文を差し出すと、

御家人たちの顔色が変わった。


「これは……三浦殿の筆跡……?」

「いや、似ているだけでは……」

「だが……内容が……!」


義時が文を受け取った。


「……義村殿が……

 私を討つ……?」


空気が凍った。


私は前に出た。


「皆。

 これは“偽の密書”よ」


御家人たちがざわつく。


「政子様……

 なぜそう言い切れるのです」


「義村は昨日、

 “鎌倉につく”と決めたばかり。

 その翌日に裏切る理由がない」


義時も頷いた。


「三浦殿は……

 そんな男ではない」


しかし──

一人の御家人が言った。


「だが……

 “筆跡が似ている”のは事実だ」


空気が揺れた。


(来た……

 京の狙い通り)


私は言った。


「皆。

 “似ている”というだけで、

 三浦を疑うつもり?」


御家人たちが黙った。


「京は鎌倉を割りたいのよ。

 和田の次は三浦。

 その次は……

 あなたたちよ」


義時が文を握りしめた。


「この文は……

 京の罠だ。

 三浦殿を疑わせるための」


御家人たちの空気が、

少しずつ戻っていく。


(よし……

 “偽の密書”はひとまず抑えた)


しかし──

その場にいた誰も気づいていなかった。


政所の外で、

密使が静かに笑っていたことに。


「疑いは……

 一度芽生えれば消えぬもの」



──夜。


政子は灯火の揺れを見つめていた。


三浦は戻った。

だが──

京は“証拠”を作って揺らしに来た。


筆を取る。


「……三浦義村。

 あなたは今、

 “疑いの渦”の中心にいる」


筆を置いた。


静かに、

しかし確かに──

鎌倉の空気は、

“疑いの匂い”を帯び始めていた。


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