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『銀座ママ、北条政子に転生す 〜善人なのに悪女と呼ばれたので、今日も鎌倉を籠絡させます〜』  作者: 双鶴


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第102話 三浦の沈黙、鎌倉のざわめき

京の密使が三浦義村の屋敷を去った翌朝。


──鎌倉の空気が変わった。


昨日までの“ざわめき”は、

今日は“探り合い”へと形を変えていた。


「三浦殿は……何か考えているらしい」

「京の影が三浦にも……?」

「義時殿は……どう動くのだろう」


(鎌倉は今、

 “誰がどちら側か”を探り始めている)


義時が政子の屋敷へ現れた。

その顔は、昨夜よりもさらに険しい。


「姉上……

 三浦殿が……

 “政所に姿を見せない”との報せが……」


私は息を吸った。


(来た……

 義村の“沈黙”は、揺れの証)


「義時。

 三浦は今、

 “京の言葉”と“鎌倉の現実”の間で揺れているのよ」


義時は拳を握った。


「姉上……

 三浦殿は裏切るのでしょうか」


「まだよ。

 でも──

 “沈黙”は、最も危険な兆し」


義時は息を呑んだ。


(義時……

 あなたはまだ“沈黙の意味”を知らない)



──三浦義村の屋敷。


義村は、

密使の言葉が頭から離れずにいた。


「北条は鎌倉を滅ぼす」

「距離を置くだけでよい」


(本当に……

 北条は鎌倉を滅ぼすのか)


そこへ、

三浦家の家臣が駆け込んできた。


「殿……!

 鎌倉の町で、

 “三浦殿が京につく”という噂が……!」


義村は顔を上げた。


「誰がそんなことを……!」


「分かりませぬ。

 しかし……

 町の者たちは動揺しております」


義村は拳を握った。


(密使……

 お前か……

 お前が噂を流したのか)


家臣が続けた。


「殿。

 このままでは……

 三浦家は“疑われる側”に……」


義村は言葉を失った。


(義村……

 あなたは“揺らされている”のではない。

 “揺れるように仕向けられている”)



──政所。


御家人たちが集まっていた。

しかし、昨日までのような議論はない。


代わりに──

“視線”が飛び交っていた。


「三浦殿は……どう動く」

「京の密使が来たらしい」

「義時殿は……三浦を信じるのか」


義時が前に出た。


「皆。

 三浦殿は裏切っていない。

 ただ……

 “沈黙している”だけだ」


御家人たちがざわつく。


「沈黙こそ危険では……?」

「和田殿の時もそうだった……」

「京は三浦を揺らしているのか……?」


私は前に出た。


「皆。

 三浦を疑うのは早いわ」


空気が止まった。


「京は“鎌倉を割るために”動いている。

 和田の次は三浦。

 その次は……

 あなたたちよ」


御家人たちの表情が変わった。


義村の弟・三浦胤義が立ち上がった。


「政子様……

 三浦は鎌倉を裏切りません。

 兄上は……

 ただ考えているだけです」


私は頷いた。


「胤義。

 あなたの言葉を信じるわ。

 でも──

 義村を支えるのは、

 “あなたたち三浦の者”よ」


胤義は深く頭を下げた。


(よし……

 三浦家の“内部”を味方につけた)


義時は息を吐いた。


「皆……

 三浦殿を信じてほしい。

 鎌倉は、

 “疑い”ではなく“支え”で守る」


御家人たちの空気が、

少しだけ柔らかくなった。



──その頃、京。


後鳥羽院は報告を聞き、

静かに笑った。


「三浦が沈黙したか。

 良い兆しだ」


侍従が言った。


「鎌倉は政子様と義時殿が

 三浦殿を支えております」


後鳥羽院は扇を閉じた。


「ならば──

 “沈黙を裏切りに変える”」


行成は息を呑んだ。


(政子殿……

 京は本気で“三浦家”を奪いに来る)



──夜。


政子は灯火の揺れを見つめていた。


和田家の揺れは収まった。

だが──

三浦家が揺れ始めた。


筆を取る。


「……三浦義村。

 あなたの沈黙が、

 鎌倉の空気を変えている」


筆を置いた。


静かに、

しかし確かに──

鎌倉の底が、

またひとつ鳴った。


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