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『銀座ママ、北条政子に転生す 〜善人なのに悪女と呼ばれたので、今日も鎌倉を籠絡させます〜』  作者: 双鶴


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第10話 鎌倉殿、気を遣いすぎて逆に怖がられる

翌朝。


屋敷の庭で、私は侍女たちと花の手入れをしていた。

冬の空気は冷たいが、土に触れると少しだけ心が落ち着く。


「政子」


背後から声がした。

振り返ると、頼朝が立っていた。


(あら、珍しい時間に)


「おはようございます、鎌倉殿」


頼朝はなぜか、少しだけ視線を逸らした。


「……昨日のことだが」


(まだ気にしてるのね)


私は静かに言った。


「もう済んだことです」


頼朝は一瞬で固まった。


「……怒っていないのか?」


「怒る理由がありませんもの」


頼朝は、何か言いかけてやめた。

その表情は、どこか安心したようで、どこか戸惑っている。


(この人、本当に不器用ね)


侍女たちは遠巻きに震えていた。


「見た……? 政子様、鎌倉殿を一言で黙らせた……」


「やはり……恐ろしい……」


(黙らせたんじゃなくて、落ち着いただけよ)



昼。


私は文を整理していた。

そこへ、頼朝が妙にそわそわした様子で入ってきた。


「政子。

 その……何か困っていることはないか?」


「特には」


「そ、そうか……!」


(なにその反応)


頼朝は妙に嬉しそうに頷いた。


「では……何かあれば、すぐに申せ。

 私は……お前の言葉を大切にしたい」


(あら、素直)


だが、廊下の御家人たちは青ざめていた。


「聞いたか!?

 鎌倉殿が政子様の“ご機嫌伺い”を……!」


「政子様……どれほどの力を……」


(力なんて使ってないわよ)



夕方。


義時が深刻な顔でやってきた。


「姉上……鎌倉殿が……

 “政子の負担にならぬように”と……

 御家人たちに指示を出しておられます……!」


(えっ、そんなこと言ったの?)


義時は続けた。


「そのせいで……

 御家人たちが皆、姉上を避けております……!」


(避けられる理由がまた増えたわね)


義時はさらに声を潜めた。


「……姉上。

 あなたは……本当に……」


「何?」


「……鎌倉殿の“心の中心”におられるお方です……!」


(表現が重いわね)


私は静かに言った。


「義時。

 頼朝さんは、ただ気まずいだけよ」


義時は完全に固まった。


「……姉上は……どうしてそこまで……」


「顔を見ればわかるわ」


義時はまた驚いた顔をした。


(この子、毎回驚いてる気がする)



夜。


頼朝が、妙に丁寧な声で言った。


「政子。

 今日は……その……

 ゆっくり休め」


(あら、気遣いが上手になってきたじゃない)


私は微笑んだ。


「ありがとうございます」


頼朝は一瞬で顔を赤くした。


「……っ……!」


その瞬間、廊下の侍女たちが震え上がった。


「見た!?

 政子様が鎌倉殿を“照れさせた”……!」


「やはり……恐ろしい……!」


(いや、ただお礼を言っただけよ)


私は空を見上げた。


──善意で普通に接しているだけなのに、

なぜか“悪女”扱いが止まらない。


でも、いい。


誤解されても、距離を置かれても、

私は今日も誰かの心を整える。


それが、私の生き方だから。


そしてこの日、

**鎌倉殿が政子に“気を遣いすぎている”という噂が、

鎌倉中に広がった。**


もちろん、本人は気づいていない。


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