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第七章:風の背中、敗北の軌道

風は、いつも味方とは限らない。 この第七巻では、風見塾が初めて“本当の敗北”を経験します。風が背を向けたとき、走る者は何を感じ、何を選ぶのか。 負けを知ることで、走る意味は深くなる。 そして今回も、少しだけ笑える場面を添えて。風に振り回される人間は、やっぱり愛おしい。 風の背中を追いかける走り――その軌道を、どうぞ見届けてください。

風は、時に背を向ける。 それは、走る者にとって最も残酷な瞬間だった。


世界選手権・最終戦。舞台は南米・アンデス山脈に築かれた高地サーキット「クルス・デル・ビエント」。標高3,800メートル。空気は薄く、風は強く、そして気まぐれだった。


「ここは、風が試す場所だ。」


神谷悠人は、K-ZERO WINDのステアリングを握りながら呟いた。翔太が設計したこのマシンは、人工風流と感情応答を融合させた“風を届ける”車だった。だが、この地では人工風は意味をなさなかった。自然の風が、すべてを支配していた。


レースには、風見塾の精鋭が揃っていた。涼と蓮の兄弟チーム、美月の峠派ユニット、そして悠人と剛志の親子ペア。だが、対するのは“風の支配者”と呼ばれる南米の伝説的ドライバー、エステバン・ロハス。彼は風を読むのではなく、風に命令するような走りを見せる男だった。


「風は、俺の背中を押す。お前らは、まだ風に甘えてる。」


レース開始。第一コーナー、悠人は風を読み違える。横風が強すぎて、車体が外へ流れる。修正が遅れ、順位を落とす。翔太が無線で叫ぶ。


「風が変わった!南西から、突風だ!」


「わかってる……でも、体がついてこない。」


第二コーナー、涼がスピン。蓮が避けきれず接触。美月はブレーキが遅れ、コースアウト。風見塾が、次々と崩れていく。


「風が……俺たちを拒んでる。」


中盤、悠人はなんとか持ち直す。だが、エステバンは別次元だった。彼は風の変化を予測し、ラインを変え、加速と減速を自在に操る。まるで、風と会話しているかのようだった。


最終ラップ。悠人は3位につける。だが、エステバンとの差は縮まらない。最終コーナー、悠人は賭けに出る。風の“乱れ”を読んで、インを突く。だが――風が、裏切った。


突風が吹き、車体が浮く。タイヤが路面を離れ、K-ZERO WINDはスピン。ゴールラインを越えたのは、エステバンだった。


敗北。


ピットに戻った悠人は、ヘルメットを外し、静かに座り込んだ。剛志が隣に座る。


「負けたな。」


「……うん。完敗だった。」


「でも、風はお前を見てた。試したんだ。お前が、どこまで走れるか。」


表彰式。風見塾は表彰台に立てなかった。だが、観客は彼らに拍手を送った。敗れてなお、風を追い続けた者たちに。


その夜、悠人は日記にこう書いた。


風は、背を向けた。 でも、俺はその背中を追いかける。 負けを知ったからこそ、走る意味が深くなる。


風見塾は、再始動する。敗北を糧に、次なる挑戦へ。翔太は「K-ZERO REBIRTH」の設計を始め、美月は風の“裏切り”をテーマにした走行理論を構築。リナは自然風と人工風の共存モデルを提案した。


そして悠人は言った。


「次は、風に勝つんじゃない。風と、並んで走る。」


赤いスポーツカーは、今も走っている。風に背を向けられても、魂は止まらない。 走ることは、負けを知ること。そして、それでも走ること。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。 この巻では、風に背を向けられるという“敗北”を描きました。風は、いつも優しいわけじゃない。でも、だからこそ、走る価値がある。 書きながら何度も思いました。負けるって、悔しい。でも、負けたときこそ、風は本当の顔を見せてくれる。 もしあなたの心にも、少しでも風が吹いたなら、それがこの物語のゴールです。 次巻では、風と並んで走る――そんな走りを描きます。風は、まだ止まりません。

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