プロローグ
不定期連載となりますが、よろしくお願いします。
「貴様の野望もここまでだぁぁっ‼︎ ‘サイヤーク首領’」
世界支配を目論む、悪の秘密結社ーー‘サイヤーク’。その首領である‘ドン・サイヤーク’に俺は相棒の2号ライダーこと、“Σ”である十文字じゅうもんじハヤテと同時にトドメの一撃をくらわせた。
「ーーーグハッ‼︎」
2人のエネルギーを一点に集めた蹴撃をもろに食らったサイヤークは、そのまま壁際へと吹っ飛ぶ。
「終わったな、北豪」
「あゝ、十文字」
“不倶戴天の敵との腐れ縁に決着がついた。” そう喜び、俺と十文字はグータッチをした。
「て、敵...ながら...み、見事だ! 北豪タケル、十文字ハヤテ」
喜びも束の間、ドン・サイヤークの声が聞こえてきた。すぐさま迎撃態勢にシフトチェンジしようとしたが一手先遅く、俺も十文字も奴の放つ衝撃波で吹っ飛ばされたあと、突然現れた拘束具で身体の動きを制限されてるというなんとも情けない失態である。
簡単に勝てる相手じゃないとわかっていた。だからこそ相打ち覚悟で挑んだ。なのに...フラつきながらも奴は未だ倒れず、俺達の目の前に立っている。
その姿を見て、
「オレと北豪の全力全開の蹴りをもろに喰らって死なねぇとか、チートじゃねぇかッ!」
と、十文字は悪態を吐く。一方、俺はというとなんとか抜け出そうともがいていた。
相棒の言葉にサイヤークは不気味に笑い言った。
「容易たやすくやられるようでは悪の秘密結社の首領などは務まらんよ。が、我の悪運もここまでのようだ。北豪タケルに十文字ハヤテ、わたしと共に地獄へとつきあってもらうぞ!」
そう言ってサイヤークは、テレキネシス能力を使い、世界征服計画の中核たる転移装置を暴走させ、小さなブラックホールを創りだし、『冥府で待っているぞ! アハハハッ』と塵になりながらそのまま黒い渦の中へと消えていった。
“この状況は非常にマズい”と、悟ったオレと十文字は自滅行為だが、サイヤークの金縛りから逃れるために限界ギリギリまでエネルギーを放出した。反動で火花が散り、身体の所々から煙がではじめる。だが、知ったことか! ここで無茶をしなければ世界中の人々の命が危険に晒されるのだから。
「北豪ッ!」
「ヨシッ、十文字」
「「ハァアアーーッ‼︎」」
なんとか束縛から逃れることには成功した。が...
(かなりヤバいことになった。)
十文字の変身が解けてしまった。敵から受けたダメージが俺よりも大きく、脱出時の負荷でベルトが壊れたのが原因で修理しなければ変身は無理らしい。対して、自分はギリギリ変身を維持できていたものの身体のあちこちがガタガタだ。
幸い、俺も十文字も再強化手術で体内に医療用ナノマシンをいれているため、首以外なら腕や脚の一本失おうが片目が潰れてようが重症になろうが、もとに戻るので問題無いのだが....ここまで酷いと完治には時間がかかる。さすがにそこまでの余裕は無い。
考えた末に俺は覚悟を決めた。
「十文字、此処は俺に任せてお前は先に脱出するんだ」
「!? 突然何を言いだすんだ、北豪」
俺は十文字にエネルギーをオーバーヒートさせ、それをぶつけてブラックホールの相殺を試みることを説明する。
「絶対にダメだ!! そんな自殺紛いなことーー」
「“2人で同時に”ってのは却下だぜ、十文字。ついでに手前テメェが代わりにやるってのも無しだ。そんな変身すら出来ないボロボロの状態じゃ足手纏いだ、第一に成功するはずもない」
渋る十文字をどうにか納得させ、俺は彼の懐から“韋駄天”と刻印されたカートリッジとスマホを取り出し、それらを合わせバイクへと変形させ、オートパイロットモードで彼をバイクに固定してそのまま脱出させた。
それを見届けた俺は変身用カートリッジを二つベルトに挿入した。ひとつは自身の、もうひとつは餞別にと十文字が使っていたカートリッジの予備を。
変身を完了し、全エネルギーを極限状態にまで解放して俺はブラックホールへと飛び込んだ。