第4話 初戦闘と出会い
「はぁ、はぁ」
あれから数時間。一向に森を抜ける気がしない。同じ場所をぐるぐる回らないように、ひたすら一方向に歩いている。途中、小川の水を飲んだり、木になっているりんごのような果実を食べた。水はキリッと冷えていて、僕の喉を潤してくれた。りんごも思いの外、甘くて美味しかった。幸い、魔物にはまだ出くわしていない。空がだんだん暗くなってきている。早く安全な場所を見つけないとまずいんじゃないか?
ガサッ。茂みから物音が聞こえる。
「もしかして、魔物か?」
もちろん、まだ魔法の使い方は分からない。今は逃げるべきか? それとも、一か八か試してみるか?
……よし、やってみよう。茂みから距離を取り、腕を突き出す。αのことを信じよう。僕には魔法の才能はあるはず。それに、もし撃てなかったとしても、逃げればなんとかなる。多分……
ガササ――スライムが飛び出してきた! 青いゲル状の魔物が、ぬるりと這い寄ってくる。僕はそいつに狙いを定める。
「なんか、出ろぉ!」
――バシュッ!
一瞬、目の前が真っ白になり、轟音が鳴り響いた。
……目を開けた時には、辺りが消し飛んでいた。
スライムだけじゃない。背後の木々は折れ、地面は抉れている。少し手に力を込めただけなのに、巨大な青い魔力の塊が放たれたのだ。
しばらく固まっていた。声も出せなかった。
「うそ……。これ全部僕がやったの?」
衝撃でまだ手が震えている。
「これは……そこまで心配しなくてよかったんじゃ……」
もう戦闘のついては心配しなくて良さそうだ。少なくともこの森の魔物なら一発で倒せるだろう。囲まれたとしても、この殲滅力なら対処できるだろう。一応、奇襲されないように注意しておこう。完全には安心できないが、少しだけ肩の力が抜けた。
――その時だった。
ザッ、ザッ、ザッ!
足音がする。しかもかなり速い。何かがこちらに走ってくる!
魔法の音を聞きつけた他の魔物か?
身構える。音のする方向に向き直り、息を深く吸って、魔力を集中させる。
「……! えっ! 人間!? 大丈夫!?」
驚いた。飛び出してきたのは魔物ではなかったのだ。人間だ。剣を構えている少女だった。驚いた顔でこちらを見つめている。僕より背が高いし、歳は上だろう。淡いピンク色の美しい髪が風になびいている。あまりの美しさに言葉を失っていた。異世界で初めて出会った人が、こんなに綺麗なんて――。