第2話 キャラクリエイト
「よし! その言葉を待ってたんだ!」
「じゃあ早速転生を――」
「ちょ、待て待て待て〜」
αが慌てている。どうしたのだろうか。
「君さ〜、もしかしてそのまま転生するつもり? 肝心の“アレ”を忘れてるよ〜」
「アレって? ……そうか! チート能力!」
完全に忘れていた。丸腰で異世界に転生しても、すぐに死ぬのがオチだからな。
「正解! それが無いとグダグダして面白く無いからね〜」
「それで、どんなスキルをくれるんだ? 魔力無限か? 最強の剣か? いや、不老不死も捨て難いな〜」
「それなんだけど、せっかくだから君に選んで欲しくてさ。ゲームのキャラメイクみたいな感じにさ」
「そうだな〜 どれも捨て難いけど、やっぱり魔法を撃ちたいな」
「よし! 決まりだね。君には類稀なる魔法の才能を与えよう。絶対、大賢者になれるぞ〜」
これで僕も、かっこいい詠唱をきめて、憧れの大規模魔法が撃てるはず。
「あ、それで外見はどうする? エルフとか吸血鬼みたいな別種族にもなれるけど。あ! せっかくだから美少女ライフ送っちゃう〜?」
「いいなそれ! それなら長い白髪で、碧眼のロリがいいな〜」
「お〜 めっちゃいい。それで行こう」
吸血鬼も捨て難かったが、これがベストかな。ゲームのアバターもだいたいこんな感じだったし。どうせなら、向こうの世界では美少女として生きていこう。今とかけ離れていた方が楽しいだろうし。
「あ、あとアホ毛もつけてくれ」
「おけおけ〜」
「じゃ、準備するからちょい待ち〜」
こいつとはすごく気が合う。こんなやつと友達になれていたら、楽しかっただろうな。できれば一緒に冒険したいものだ。流石にそれはできないだろうが。ふぅ、いよいよ転生か。
「あ、ちょっと待て」
「ん〜? どした?」
「転生した後は、現世の僕はどうなるんだ?」
「あ〜 家族とかに迷惑かけたく無いってことね? 大丈夫、手続きとかそう言う面倒なのはボクがやっとくから。安心して転生するといいさ。これでも神だからね。朝飯前だよ」
「そうか、よかった。ありがとう。親には何もしてやれなかったからさ、せめて迷惑はかけたくなかったんだ」
さよならを言えなかったのは心残りだが、こんな親不孝者だ。黙って消えるくらいがちょうどいいか。
「あ、言い忘れてたけど、最初はボクがガイドするからさ。緊張しなくていいから」
「至れり尽くせり、ありがとな」
本当に、神がこんなフレンドリーなやつでよかった。向こうの世界でも信仰しよう。どちらかと言うと友達だが。
「準備できたぞ〜 最終確認だけど、転生、初めていい?」
「ああ、頼む」
「それでは、剣と魔法の異世界へ出発〜」
ゆっくりと、意識が遠のいていく。なんか走馬灯みたいなのが見えるが大丈夫か? ああ、転生だから一度死ぬってことか。それにしても、アニメばっかじゃねえか。これじゃあただの総集編ではないか。結局僕の人生は漫画とアニメに塗れていたな。……まあ、それはそれで悪くないか。