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ミアとの生活

「リンカー! こっちの畑にも水~」


「はいはい」


 ミアの大声にわたしはすぐ魔法を詠唱して青いトマトが実りかけている畑に雨を降らせるように水を撒く。


「日が高くなってきて暑いね~、ちょっと休憩する?」


「どうせまた飲み物に氷入れてって言うんでしょ」


「うん、お願いね」


 まったく、人使いの荒いこと。でも不思議と嫌な感じはしない。


 今はミアと農業の真っ最中だ。彼女と暮らし始めて早くも一年が過ぎた。ミアは本当に色々なことにわたしの魔法を使わせる。


 しかし、あの羊皮紙も倒れていたところに落ちていたのをミアが拾って持ってきてくれた訳ではないらしいし、わたしが寝ている間に転生させた誰かが置いたとしか思えない。


 あの羊皮紙がなければこの世界に魔法があることも知らないままでいただろうし、ミアとどれくらい一緒にいられたか分からない。


 ぬるめに入れた紅茶にわたしが生み出した氷を入れたアイスティーを飲みながら野外に設置されたテーブルに着いたミアは何気なく言ってくる。


「ねえ、やっぱりリンカってモンスターとも戦ったことあるの?」


「あるわけないじゃない」


 当然のようにわたしが返すとミアは意外そうな顔をする。


「魔法の修行してたんでしょ? 炎飛ばしたり氷の矢で攻撃したり、そんな経験はないわけ?」


「第一モンスターを見たこともないよ……、別に見たいとも思わないし」


「リンカが目を覚ました日にも言ったけどさ、あたしの両親、モンスターに殺されたんだ。だからって訳じゃないけどリンカにはなるべくモンスターと戦ったりしないでほしいの」


 ミアは普段薪を取りに入る森の入り口に目をやった。あの奥に進んでいってミアの両親はモンスターに襲われたのだろう。


「そもそもなんでリンカは魔法使いを目指してたのさ?」


 そんなこと言われても困る。大体「立派な魔法使いになるために旅をしてた」なんてのが嘘なのだから。


「強大なモンスターを倒す冒険者になって一儲けとか、国に仕える宮廷魔術師になって一生安泰、とかそういう野心とかはないわけ?」


「そんなこと、考えたこともないよ。わたしは今のままミアと過ごしてこの村で平和に暮らせてればそれで充分」


「そっか」


 普段からよく喋るミアがそこで珍しく黙って安心したようにわたしを見つめてきた。


 村のみんなも新参者のわたしを怪しんだりせず、普通に受け入れてくれている。

 

 死ぬ前の世界に比べたらなんと幸せなのだろう。


「できればずっとそうしてほしいな。それに、もしリンカが男だったら……」


 沈黙を破って、ミアはそんなことを言う。


「男だったら、なに? そもそも家にあげてベッドも貸さなかった?」


「そういうわけじゃないけど」


 ちなみにミアの家にはベッドはミアの分一つ、つまりリンカが寝かされていたものしかない。


 だから、一つのベッドで二人で寝ているわけだが、ミアには抱き癖があるので毎晩抱きしめられる。


 同世代の女友達も、姉妹もいないわたしには少々刺激が強い経験だったが、もうとっくに慣れた。


 前は孤独は怖くなかったけど、今はミアと離れるのが怖い。


 もしわたしが異世界転生物でよくあるように、無茶苦茶な強さを手に入れられるのならそれはミアを守るために使いたい。


 ミアは反対しそうだが、自警団とやらについて行ってモンスターや野盗と戦ってみようか。


 そんなことをぼんやり考えながら今日も二人で農業に精を出したのだった。

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