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魔法

 そうしてお互いに名乗りあった二人はシチューを食べながら自己紹介した。


 まず、ミアはこの村出身で、村から出たこともないということ。

 そもそもこの村はルーグ村という国都から馬車で一週間という片田舎であること。


 ミアの両親は残念ながら数年前に森でモンスターに襲われ亡くなってしまい、以降は村の人たちに親切にされながら自給自足の暮らしをしているとのこと。


 ここまでの情報で、まず自分がモンスターが出るような世界に飛ばされたことをわたしは知った。


 馬車とかの単語からある程度の文化レベルも分かる。


 わたしを見つけてくれたのは薪を採るために森の浅いところへ入っていったときだという。


 なるほど。


 このシチューも薪を燃やして熱源にしたかまどで作ったということか。


 野菜は両親が残した畑で自作したり、村で買ったりしたものらしい。


 これでこの世界に通貨の概念があることも分かった。


「野菜っていくらぐらいのものなの?」


「銅貨2枚くらいかな。値引いてもらってだけど」


「武器とか買うなら金貨か銀貨がいる?」


「この村じゃ自警団くらいしか武器なんか持ち歩かないし、皆が持ってるのはせいぜい銀貨数枚の剣とかよ」


「じゃあミアは金貨って見たことないの?」


「この家を買うときに両親が袋に入れて持ってたときくらいかしら」


「じゃあこの家や畑がご両親の形見なのね」


「うん、そうなるかな。……リンカって優しいものの言い方をするんだね」


 と、あまり怪しまれるのもなんなのでミアにそれとなく訊いてみたら銅貨、銀貨、金貨が貨幣として使われていることがわかった。


 価値は分からないが、いずれは自分で働き口を見つけて金を稼ぐ必要があるだろう。


「ね、ね、リンカのことも聞かせてよ。別に記憶喪失って訳でもないんでしょ」


「わたしは……」


 どう答えたものか返事に困る。


 まさか正直に「こことは別の世界から来てそこで死んだら森で倒れてました」なんて言えるわけがない。


 ふとあの羊皮紙に書かれていたことが気になって、わたしは右掌の上に小さな火が出るところをイメージしてみた。


「どうしたの? 何してるのリンカ。シチューおかわり?」


「ちょっと待って……」


 しばらくイメージを続けると脳内に未知の言葉が流れ込んでくる。

 

(この言葉を復唱すればいいの……? ウト・デ・イグネ……?)


 瞬間。


 マッチくらいの火がわたしの手のひらに出現した。


「わっ!?」


 当然ながら、ミアは驚く。


 正直、わたしも驚いていた。


 魔法だ。これが魔法なんだ。


 起こしたい現象をイメージすると脳内に言葉が流れてきて、それを反芻すると魔法が発動するんだ。

 きっと、これが小説で魔法使いがやってる「詠唱」ってやつなんだろう。


 ふっ、と息を吹きかけてやると簡単に消える。


「リ、リンカって魔法使いだったんだね!」


「そ、そうなの。まだ修行中の身だけど。魔法の修行のために旅をしていたら路銀が尽きて道も分からなくなって野垂れてたのよ」


 わたしは口からでまかせを言う。


「もしかしてっ、水も出せる? 風は起こせる?」


「えっと、多分……」


 ミアが興奮した様子で色々訊いてくる。


「土の浄化は? 水を凍らせたりもできる?」


 それから、ミアがせがむので火を出したときと同じ要領で色んな魔法を使って見せてあげる。


 するとミアは、


「そこまでできるなら旅なんかやめてここで一緒に暮そうよ! リンカの魔法、今でも生活に充分役立つって」


 と同居を勧めてくる。


 うーむ、どうしたものか。行く当てもないし。


 なによりわたしはこのミアのことが気に入った。一緒にいたい。


「うん、わたしで役に立てるなら。居候させてください」


 こうして、わたしとミアの生活が始まった。

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