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憎悪

 わたしはパルモがけしかけてきた甲冑姿の男たちの攻撃を後ろにテレポートして躱す。


 それぞれが剣やら槍やら斧やら、さらにはボウガンまで持って武装しており、殺さずに無力化するのは難しそうだ。


「ファイアーボール!」


 クーディリアが敵たちに火球を放つ。


 だが、鎧には魔法反射の魔法がかけられているらしく、火球は逆にクーディリア目掛けて跳ね返された。


 わたしは咄嗟にクーディリアを庇う。


 身体にはすでに防御魔法を張ってある。この程度の魔法ならたいして熱くもない。


 剣で斬られそうになるが、わたしの防御魔法を超えるほどの威力はないようで簡単に折れる。


 しかし、まったく動揺することなく、腰から新たな剣を抜く。


 防御魔法と、攻撃魔法。


 なにか、なにか、魔法以外で使える手段はないか。


 瞬間移動できるのは数メートル。


 ウォルフがやっていたみたいに一気にルーグ村から国都へ飛ぶような転移はできない。


 防御魔法が効いているとはいえ、鎧男たちがガスガスと攻撃してくるのは一瞬でも防御を解けば致命傷になる。


 おまけにこっちの思考はパルモに筒抜けなのだ。


 何か作戦を立ててもすぐに対策されるだろう。


 パルモが余裕の表情で笑みを浮かべていることからそれが読み取れる。


 クーディリアごと防御魔法で守っていてはどうしても守りが薄いところができてしまう。


 そこを正確に狙われているのが心を読まれている何よりの証拠だ。


 常に心が読まれている――。


 なら逆にこっちから向こうの頭蓋を揺さぶるほどの強い感情をぶつけてやれば!


 憎め!


 今まで生きてきて一番強い感情はなんだ!?


 ミアを殺された時ではないか。


『あれ? 僕なんかやっちゃいました?』


 ウォルフの軽薄な声。


『この世界は僕のために用意された世界じゃないか。元々僕が満足するためにあるんだ』


 転生者を許せないと思った瞬間。


 怒れ! 強く怒れ!


 炎のように、パルモの脳神経が焼き切れるほどに強い感情をぶつけろ!


「ガッ!?」


 パルモがよろける。


 わたしのあまりに強い怒りを読んでしまい、ショックを受けたのだろう。


 わたしは防御魔法を解いて、手でさっき折れた甲冑男の剣の切っ先を拾い上げる。


 今のわたしが二種類の魔法しか同時に使えないというのなら、両方転移に費やせば、より早く、速く、パルモのところへ飛べるはずだ。


 刃が手に食い込み血が流れる。構うものか。


 その切っ先を未だショックから立ち直っていないパルモの左胸に突き刺す――!


 浅い! けどパルモの集中を乱すことはできた。


 防御魔法がかかったわたしから離れ、甲冑男に囲まれピンチになっていたクーディリアが悲鳴を上げる。


 しかし、その刃が彼女に届く前に甲冑どもの動きが止まった。


「クー! 今のうちに逃げなさい! 上に行って客に混ざるのよ!」


「は、はい!」


 クーディリアは素直にわたしの言葉に従ってドアを開けた。


 パルモは心臓を刺し貫かれた傷に動揺していたが、懐から瓶を取り出し、飲み干す。


 と、胸の傷が癒え始めた。用意周到なことに自分用のポーションまで持ち出していたか。


 その傷が治りきる前にわたしはパルモに火球を浴びせる。


「ぎゃああ」


 熱さと衝撃で吹き飛ぶパルモ。


 周りの甲冑男どもの目からまた光が消える。


 危なかった。また大挙して襲ってこられたら勝ち目はなかった。


「ど、どうして……、お金がなくて無理心中するしかなかった私がやっと……手に入れた居場所だったのに」


 大火傷をしているパルモが床に這いつくばりながら呪詛のように吐き出す。


「あなたに転生者の幸せを壊す権利があるの!? 客の中には転生前のトラウマに苦しんでいた患者もいたわ! 私は彼らに幸せな夢を見せていただけなのに!」


「ないかもね」


 わたしは静かに告げた。

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