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幸せな夢

「リンカー!? 今夜の夕食は何がいい?」


「寒くなってきたし久しぶりにシチューが食べたいかな。初めて会った日に作ってくれたの」


「じゃあ、そうするね」


 ミアは嬉しそうにわたしの言葉に微笑む。



 ミアがベッドの中でわたしにささやきかける。


「リンカ、あたしがどこかにお嫁に行っても友達でいてくれる?」


「当たり前でしょ。っていうか相手候補がいるの?」


 そういうとミアは可愛くぷくっと頬を膨らませる。


「そんなのいないけどさ。いつか、いつか、リンカと離れ離れになっても友達でいたいなって」


「というか、この村で結婚する限り、ミアが結婚したら、わたしもついて行っちゃうよ」


「ホント?」


 ミアはわたしをぎゅっと抱き締める。



 ミアがいない。


 家のどこを探してもいない。


 って、あれ? ミアの家ってあのウォルフの大魔法で吹き飛んだんじゃなかったっけ?


 何事もなかったかのようにここにこうしてある。


 てか、ウォルフって誰だっけ? そんな奴わたしの人生に出てきたっけ?


「リンカ!」


 ミアが奥の部屋から笑顔で呼びかける。


「どうしたの? ぼうっとしちゃって」


「ごめん、ミアがこの家ごと吹き飛んで心臓を貫かれて死んじゃう悪い夢をみたの」


「アハハ、なにそれ。縁起でもない……」


「そうだよね、アハハ……」


「お姉さま!」


 あれ? この村にわたしを「お姉さま」なんて呼ぶ人いた?


「起きてください、お姉さま!」


 体が揺すられている。


 ああ、これはクーだ。男装のハーフエルフ、クーディリアの声だ。


 わたしは目を覚ます。


「ああ、お姉さまがやっと目を開けてくれた! あまりに幸せそうな顔で寝てるからそのまま昇天しちゃうんじゃないかって心配しましたよ」


「ごめん、わたし、そんなに寝てた?」


「ええ、丸一日も。あの薬屋に行ってくるってメモ一枚残して、ボクが目を覚ましたらずっと寝てるんですもの」


 パルモの店から宿に戻ってきたときのことは覚えている。


 だけど、あまりに幸せな夢に落ちていく感覚にわたしは目を覚ますことを拒んでいた気がする。


 転生者への恨みも、ミアを喪った悲しみも、復讐心も夢の中で溶かしていくように薄れていた。


 できれば、もう一度眠りに就きたい。また夢の中でミアに会いたい。


『あれ? 僕何かやっちゃいました?』


 夢からの誘惑が襲い掛かってきたときに、憎きウォルフの軽薄な声が再度思い出された。


 やはり、許せない。


 転生者を生かしておいちゃいけない。そう誓ったはずじゃないか。


 今日もパルモに会いに行こう。あいつは転生者なんだ。


 いくら善人面していても転生者なんだ。


「お姉さま、すごく怖い顔してる……」


 クーディリアの怯えた声で我に返る。


「クー、転生者は憎い?」


 きめ細かい金髪の頭を撫でてあげながら、わたしはクーディリアに問いかける。


「はい! けどお姉さまを殺す気はもうありません」


「どうして?」


「お姉さまがいなかったらボクは死んでたからです。それにお姉さまは目的を果たしたら自分で死ぬつもりなんでしょう?」


 そうだ。この子もわたしと同じく転生者に未来を台無しにされたんじゃないか。


 決心がついた。あのパルモを殺そう。


 転生者のいない世界を作るんだ。そしてそれが罪だというなら最後にすべてを償うまでだ。

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