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転生者は転生者を殺す

前に公開していた小説の修正版です。

 その転生者の少年はわたしを丸呑みにできるほどの火球を手のひらから発射した。しかも無詠唱で瞬時にだ。


 しかし、その程度のチートでわたしが動揺するはずもない。


 右手の中指の先に魔力を込め向かってくる火球に振るう。


 スパン。


 と、火球は分断されわたしの両脇をすり抜けて背後の森林を大火事にする。


「ったく、これだから転生者って嫌いなのよ」


 わたしは舌打ち一つして過去の苦い記憶を掘り起こされるの感じた。


 チート能力の持ち主はどいつもこいつも大きな力を振りかざすことで周りにどのような惨事がもたらされるか考えもしない。


「なっ……!?」


 チート魔法を使った転生者の少年は動揺している。


 それはそうだろう。この世界に転生されチート魔法を扱えるようになってから自分の魔法がこうも簡単に防がれた経験などないのだろうから。


「ならばっ」


 チート使いの少年は今度は瞬間転移でわたしの背後に回った。


 だが、この相手が肉薄してくるときこそが待っていた瞬間だった。


「食らえっ!」


 また無意味に大きな威力の魔法を使う。


 わたしは強大なエネルギーの奔流に巻き込まれ、細胞レベルで分解される。


 ……なんてことはなかった。

 少年がエネルギー波を放ったのはわたしの残像。

 

 次の瞬間、わたしは憎き転生者の背後に転移していた。


 そして、今度は指先ではなく手全体に最大硬化の魔法とありったけの憎悪を乗せる。


「死になさい」


 魔力が宿った右腕が強大魔法を使って油断していた少年の左胸を背中から貫く――!


 やはりこいつも慢心していたか。


 圧倒的な破壊力の魔法をぶちかませば間違いなく勝てると考えていたのだろう。


 自分の体の防御がまるでなっていなかった。


 心臓を刺された現実が受け入れられないかのように、転生者の少年は胸から飛び出したわたしの真っ赤に染まった右手を見つめる。


「どう? 二回目に死ぬ気分は」


 返り血をまともに顔に浴びながら言ってやると、


「う、嘘だ……。俺は、俺は神に選ばれたんだぞ……」


 少年は転生してきてからおそらく初めての敗北にそんなことを言った。


 そう。それだ。


 転生者とは「神」に選ばれ、端正な容姿と強大な力を与えられてこの世界にやってきた者たちだ。


 元々の世界でどんな人生を送っていたか知らないが、自分の経験上、ろくな人生を歩んでいなかったのだろう。


 だからこそ、転生し、この世界―‐ブレイブランド―‐に異世界転生してきたときに調子に乗る。


 今までの報われない生き方の鬱憤を晴らすかのように授けられた力を振りかざして悦に浸る。


 これまでこの世界の誰も倒せなかったようなモンスターを倒し、多くの異性に好かれ、大衆に感謝される。


 そのことが気持ちよくて仕方ないから、さっきわたしにやってみせたように必要以上に強大な魔法を使ったりするようになるのだ。


 それが、少数の力なき者を犠牲にしているとも知らずに。


 わたしは少年が絶命したことを鼓動から確認すると血に塗れた手を引き抜いた。


 ああ、汚らわしい。罪深きかな転生者。


 しかし、こうして「神」とやらが選んだ転生者を殺し続けていればいずれその元凶にも出会えるだろう。


 そいつを殺した後、わたしは最後の転生者わたしを殺そう。


 自己紹介が遅れた。


 わたしはリンカ。転生する前の名前は根石凛花。


 そう、こうやって転生者を殺して回っているれっきとした”転生者”にして、神からチート能力を与えられた者の一人だ。


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