もしもメロス以外がムキムキだったら3
今回がムキムキだったらの最終回です。
なんやかんや時間があきましたが最後まで見てくれると嬉しいです。いやー、真面目にやったのいつぶりだろう。
ゆっくりしていってね。
「ああ、メロス様。」うめくような声が、風と共に聞えた。
「誰だ。」メロスは走りながら尋ねた。
「フィロストラトスでございます。貴方のお友達セリヌンティウス様の弟子でございます。」その若い石工も、メロスの後について走りながら叫んだ。「もう、駄目でございます。走るのは、やめて下さい。もう、あの方をお助けになることは出来ません。」
「いや、まだ陽は沈まぬ。」
「ちょうど今、あの方が死刑になるところです。ああ、あなたは遅かった。おうらみ申します。ほんの少し、もうちょっとでも、早かったなら!」
「いや、まだ陽は沈まぬ。」メロスは胸の張り裂ける思いで、赤く大きい夕陽ばかりを見つめていた。走るより他は無い。そしてもちろん張り裂けるのは物理的にではない。そして後ろからはどしんどしんと走る音が聞こえる。
「やめて下さい。走るのは、やめて下さい。いまはご自分のお命が大事です。あの方は、あなたを信じて居りました。刑場に引き出されても、平気でいました。王様が、さんざんあの方の筋肉をからかっても、メロスは来ます、とだけ答え、強い筋肉を持ちつづけている様子でございました。」
「それだから、走るのだ。信じられているから走るのだ。間に合う、間に合わぬは問題でないのだ。人の命も問題でないのだ。私は、なんだか、もっと恐ろしく大きいものの為に走っているのだ。ついて来い! フィロストラトス。」
「ああ、あなたは気が狂ったか。それでは、うんと走るがいい。ひょっとしたら、間に合わぬものでもない。走るがいい。俺は帰らせてもらう!」
言うにや及ぶ。まだ陽は沈まぬ。最後の筋力を尽して、メロスは走った。メロスの頭は、からっぽだ。何一つ考えていない。ただ、わけのわからぬ大きな力にひきずられて走った。noukin。陽は、ゆらゆら地平線に没し、まさに最後の一片の残光も、消えようとした時、メロスは疾風の如くスポーツジムに突入した。間に合った。
「待て。その人を殺してはならぬ。メロスが帰って来た。約束のとおり、いま、帰って来た。」と大声で刑場の群衆にむかって叫んだつもりであったが、喉のどがつぶれて嗄しわがれた声が幽かすかに出たばかり、群衆は、ひとりとして彼の到着に気がつかない。セリヌンティウスは、徐々に釣り上げられてゆく。メロスはそれを目撃して最後の勇、先刻、濁流を泳いだように群衆を掻きわけ、掻きわけ、
「私だ、刑吏! 殺されるのは、私だ。メロスだ。彼を人質にした私は、ここにいる!」と、かすれた声で精一ぱいに叫びながら、ついにスポーツジムに昇り、釣り上げられてゆく友の両足に、齧かじりついた。群衆は、どよめいた。あっぱれ。ゆるせ、勇気100倍、筋肉100倍、と口々にわめいた。セリヌンティウスの縄は、ほどかれたのである。
「セリヌンティウス。」メロスは眼に涙を浮べて言った。「私を殴れ。ちから一ぱいに頬を殴れ。私は、途中で一度、悪い夢を見た。君が若もし私を殴ってくれなかったら、私は君と抱擁する資格さえ無いのだ。殴れ。」
セリヌンティウスは、すべてを察した様子で首肯うなずき、刑場一ぱいに鳴り響くほど音高くメロスの右頬を殴った。メロスは遥か彼方へ吹っ飛ばされていった。
「メ、メロスーーーー。」
メロスはなんとか群衆に掴まれそこまで飛ばなかったが気絶していた。
群衆の中からも、歔欷の声が聞えた。暴君ディオニスは、群衆の背後から二人の様を、まじまじと見つめていたが、やがて静かに二人に近づき、顔をあからめて、こう言った。
「おまえらの望みは叶かなったぞ。おまえらは、わしの筋肉に勝ったのだ。信実とは、決して空虚な妄想(筋肉)ではなかった。どうか、わしをも筋肉仲間に入れてくれまいか。どうか、わしの願いを聞き入れて、おまえらの仲間の一人にしてほしい。」
どっと群衆の間に、歓声が起った。
「万歳、王様万歳、筋肉万歳。」
ひとりの少女が、緋のマントをメロスに捧げた。メロスは、まごついた。佳き友は、気をきかせて教えてやった。
「メロス、君は、全く筋肉がないじゃないか。早くそのマントを着るがいい。この可愛い娘さんは、メロスの筋肉を、皆に見られるのが、たまらなく口惜しいのだ。」
勇者は、ひどく赤面した。
と、ここまでがこれまでの話だと、メロスはいった。何度でも諦めない精神を私に教えてくれた、セリヌンティウスに良き友で居続けさせた。そして、王に信ずることを教えた。街には平和が戻り、メロスはセリヌンティウスと良き友で居続け、王は街を良い方向に発展させた。その後、メロスは激怒しなかった。fin.
さて、いかがだったでしょうか。昔思い浮かべていたネタはほとんど忘れたので、これからも思いつきでどんどん描く形にしていこうかなと思います。
あとがきにですが、一行でメロスが終わるのでここに書こうかと。
走れメロス〜王が平和主義〜
王が民のことを案じ、この街は平和だったので、メロスは激怒しなかった。