6. 隠れ家へ
「お兄ちゃんのスキルは何だった?」
無垢故の質問!
あまり言いふらしたくはないが、その期待に溢れた目で見詰
められると、お兄ちゃん何でも答えたくなってくる!
「えっと、ファイアボールだよ。火の玉を打ち出すスキルだ
よ」
「かっこいい!こんど見せてよファイアボール!」
「わかった」
「約束だからね!」
あーやばい、弟ってこんな感じなんだ。何か新鮮。
「あーそうそう、2人はいくつなの?」
「僕が11で、お姉ちゃんが16歳!」
「こらっ!また勝手に。そう言う事は内緒って言ったでし
ょ!」
「でもこれからは一緒に行動するから良いと思って」
「次からは教えないでね」
そう彼女が言いながら、何質問してんのよみたいな目で睨ま
れた。
「神村さんでしたっけ?もうそろそろ私たちが隠れ住んでる
場所に着くよ」
「あ。はい、」
やばい女の人とほとんど喋ったことなんて無いからどうすれ
ば。
そんな事を考えてる間に家に着いた。
「ちょっと待ってて、神村さん」
わかった、と返事を返す間もなく彼女は玄関の方へ向かって
いった。
「…」
少しすると帰ってきた。何しに行ったのなんて聞けるはずも
なく、彼女からの言葉を待つことにした。
「2人とも入って大丈夫」
どうやら索敵をしてくれていたみたい?
そのまま家の中に入ると真っ先に目に入ったのが、タンスや
椅子、ソファーで作った簡易なバリケードだった。
「これ2人だけで?」
そう聞くと、ちょっと悲しげな表情を見せながらユウタくん
が喋り出した。
「お母さんと作ったんだけど、お母さん昨日から帰って来て
なくて…うぅ」
そう言い、そこには涙を流しながら声を必死に抑える子ども
の姿があった。
「ごめん、何も考えずに聞いちゃって…」
何とも言えない空気が流れる中。
「さっさと着いてきて」
少し頼もしいとさえ思える様な声でナズナちゃんが言った。
階段を登り二階の部屋に入るとナズナちゃんがユウタくんを
慰めていた。
悪いことしちゃったな…。
「私たち、お母さんを探し出て、神村さんと出会ったって
訳。明日も探しに行くつもり」
「明日から僕も手伝うよ」
「お兄ちゃんありがとう」
少し表情が戻ってきたユウタくんがいた。
「神村さんは、隣の部屋使って。トイレは一回だけど水は流
れないから、後変なことしたら怪我じゃ済まないから」
「わかった、ありがとう」
そう言い残し隣の部屋へ移動する。
何の信用もされてねー、まぁ普通はそうだよな…。
残りの食料を確認した所、残り3回、4回分が良い所だろ
う、まだ持つとは言っても沢山じゃ無いから少し心配だ。
明日から3人行動する訳で、2人を守りながら戦えるのか?
いや、戦うしか無い!
「よし、頑張るか」
と決意を固めている時に。
コン、コン、、
誰かが扉をノックする音が聞こえてきた。
「あ、どうぞ」
扉を開けて入ってきたのはナズナちゃんだった。
「明日のことで話に来た」
「ユウタくんは?」
「今さっき寝たから、置いてきた」
確かに大人の僕でも結構きついのに、子どもだと尚更だろ
う。
ナズナちゃん目の前に座って話し始めた。ユウタくんが起き
ない様に声を抑えて。
「神村さんは剣持ってたみたいだけど剣は使えるの?」
「まともに剣で戦ったのは一回だけ」
「そう、ならこれからは神村さんには剣メインで戦って欲し
い。私とユウタで中距離から援護するから」
「わかった、極力剣で戦う」
「後明日からお母さんと、食料を探して行くつもりだけど、
何処か荒らされてないスーパー見てない?」
「一応〇〇スーパーは荒らされてなくて男の人が4人既にい
る感じだよ」
ちょっと表情を曇らせながらこっちを見て言った。
「できれば他の人とは余り関わりたく無いんだけど、最悪の
場合そこに向かうとして他のコンビニも見て回るから」
「わかった、それで良いよ。今持ってる食料は半分くらいこ
の家に置いて行くね、できるだけリュック軽くしたいから
ね。何処か置く場所とかある?」
「私たちの部屋に食料は隠してある、場所は教えられないけ
ど渡してくれるんだったら同じ場所に隠してくる。」
その言葉を聞いてさっき出しておいた食料預けることにし
た。
「また明日起こしに来るから」
がちゃ、
そう言うと自分の部屋に戻って行った。
僕も明日に備えて今日は早めに寝よう。ベッドで寝るのは少
し恥ずかしいので床で寝ることにした。




