4. 生存者発見
出発の準備が終わった。
近くの人の集まりそうな所は学校なのだが、車は
使えないだろうし外を見た時に見えた場所を通らなけ
ればいけない。
少し遠回りにはなるが、迂回して行くしか無さそうだ
な。
「はぁー」
またこの扉の前かー。
少しその場で立ち止まり、覚悟を決めた僕は扉を開け
た。
そこにはさっき倒した片腕のゴブリンが倒れていた。
その場で痛みにより暴れたのだろう、そこら中に血が
飛び散っていた。
幸いにも近くには別のゴブリンは居なく階段付近まで
は辿り着けた。
問題はここからだった、一階はエントランスになって
おり2箇所しか出入りする扉がなく、通路には何も隠
れる所が無い。
「…」
足音を立てない様にゆっくり歩きながら周りを確認し
て行く、一階の扉の前には二体のゴブリンがいて、か
つて人だった物も落ちていた。
裏口から出るしか無いか。
裏口にはゴブリンは居なかったが争った形跡が残され
ていた。
僕はその場を後にして中学校へ向かう事にした。
しばらく歩いていると、目の前には大きなスーパーが
あり、周りには6匹くらいのゴブリンの群れと交戦し
ている4人を見つけた。
少し観察していると、1人の大人がゴブリンが持って
いた棍棒みたいな木の棒で殴られて倒れ込む。
「あっ、」
まずい、このままだと全滅してしまう。
そう思い少し近づいた身を隠せる様な場所からファイ
アボールを撃つ事にした。
『ファイアボール』
体の中から何かが抜ける様な感じがして、突き出した
右手の前に火の玉ができていた。
充分に火の玉に魔力が行き渡ったのだろう、火の玉は
ゴブリン目掛けて放たれた。
一匹のゴブリンに命中して火だるまになり、この場で
悶えながら動かなくなった。
始めて魔法を違ったが意外と使える様だ、さっきはご
めんよハズレスキルみたいな扱いして。
他のゴブリンがこれを見て動きを止める、僕はもう一
度ファイアボールを撃つ。
撃つと同時に少しふらつきを感じながらも撃ったファ
イアボールが命中するのを見届ける。
その後のゴブリン退治は簡単だった、と言っても交戦
中だった残りの3人が一気に倒してくれた。
「そこの君、出てきてくれないか?」
今日始めての生存者との出会いは荒々しく、少し嬉し
く感じながら4人の元へ行く。
「助けてくれてありがとな、俺は永井こっちは中村と
田島だそして倒れてんのが佐々木だ」
「えっと、僕は神村です。」
うーん、僕はどうやら思った以上にコミュ症だったよ
うだ。
「取り敢えず話は中でしよう」
「はい」
スーパーの中に入り、周りにはゴブリンがいない事を
確認した後に話しかけてきた。
「さっきの火の玉はどうやって出したんだ?」
「えっと、ファイアボールのスキルです」
「スキル?」
3人が息を合わせたかの様に返してきた。
いや、スキルのこと知らずにゴブリン倒したの?
僕より全然強くね?
「ステータスと心の中で叫んでください」
「おぉ、まじか俺ついに夢が叶った」
「永井、あんた厨二だったの?」
そう中村さんが言うと田島さんも笑っていた。
「ここのスキルってやつでできるんだな?」
「永井先輩はどんなスキルだったんですか?」
「身体能力上昇、筋力上昇だな」
は?何か強そうなんだけど、それ僕にもちょうだい
よ!
後の2人もウォーターランスとかアイススピアだとか
色々良いのを持っていて、少し悲しくなった。
「神村はどうしてここに?」
「学校に向かっている途中でして、物資の補充がてら
ここに来ました」
「俺たちはしばらくここにいる予定だが、神村もどう
だ?一緒にいた方が安全だぜ?」
「お誘いはありがたいのですが、明日の朝にはここを
出る予定です。ここは食料はまだ残ってはいますがい
つ何が起きてもおかしく無いので、次の拠点を探しな
がら学校を目指します。」
そうなのだ、僕は実のところワクワクしているのだ。
こんな世界になって不謹慎かもしれないが、僕はこの
世界を堪能していきたいと思ってるのだ。
だから一つの場所に留まりたく無いってのもある。
「そうか、わかった せめて今日はしっかり休んでか
ら行けよ」
「はい」
その日の夜は特に何事もなく一日が終わった。




