第二節 事変
「神、様! いい、加減、に! してください!」
「んあ?」
「見てください! 祈りや願いがオーバーフローしてるんですよ! もう、限界です! 限界! 足の踏み場も無いですよ!」
「まぁまぁ、もう少し待て。もう少しだ……あと、近いぞ」
「仕方ないじゃないですか。さっきも言った通り、何処にも居場所が無いんですよ……その椅子、私に貸してくれません?」
「お前は神か? 違うだろ? この椅子だけは譲れん」
「……ケチですね。まぁ、期待してないんですけど―――で、その日記、あれから結局どうなったんですか? 様子がおかしいとか何とか言ってましたけど」
「あぁ、完全に壊れた。赤星の体験した事や思っている事しか書かれなくなった。赤星の生写みたいになっている……まぁ、でも……これはこれで面白いがな」
「その羊皮紙が一杯になる度にこれにピン止めされるの、どうにかならないんですか? めっちゃ邪魔なんですけど……あと、その赤星っていう人の性別知らないですけど、場合によっては相当な変態ですよ?」
「バカを言うな、それが日記の本体だろうが……あと、変態って言うな。余は神だぞ」
「また出た……じゃぁ、どうします? 捨てますか? この日記」
「ダメだ。この日記は残す……余にとって、良い結果を与えてくれそうだからな」
「はぁ、そうですか。じゃぁ、いつまでたっても私の居場所は無さそうですね」
「安心しろ、もうじき走り回れるようなスペースが開く」
「一体いつなんですか、それ」
「もう直ぐだ―――少しはおかしいとは思わないのか?」
「何がですか」
「―――ラファエルが堕天させられたことが、だ」
「はぁ? あの。あの、ラファエルさんがですか? というか、させたのアンタでしょ??」
「……はぁ、違うに決まっているだろうが……余はアザゼルですら生かしているんだぞ……アイツを堕天させたのも余では無いしな―――ほら、思い出せ。アザゼルを堕天させたのは? 誰だ?」
「他の、神々でしょ? でも、神々は死んだ筈じゃ―――」
「あぁ、だが―――蘇りつつある……赤星が、ルシファーの力の片鱗を見せた時にな……まぁとはいえ、肉体はまだ持っていない様だが」
「でも、だって……それじゃ」
「あぁ、だが―――安心しろ。余の計画に狂いは無い……安心して肩に乗っかって居れば良い」
「…………。むぅ……まぁ、任せます」