第四節 明星
「っっっぷは~。何するんですか!」
「お前が煩いからだ。話が進まん」
「―――それで主よ、我々は如何様に致しましょう」
「うわぁ? いつの間に?」
「黙れ! そういう所だぞ!」
「んん!」
「―――ミカエル。お前は今まで通り動いてくれ」
「……はっ―――」
「あ~あ、もう行っちゃった……ホント、働き者だよね~」
「おい、そこの問題児ども―――お前もだ、ガブリエル」
「えぇ? 僕もなの?」
「俺はもう、用済みだろ? ……普通の生活に戻らせてくれ」
「あれぇ? 恰好以外普通になっちゃって……あの一戦で、丸くなった?」
「……今まで経験が無い、漫画でしか見た事ないような力を手に入れて、その力に溺れ、力の殆どを失っていた筈のルシファーにすら手も足も出なかった……もうこりごりだ……探偵してた方がましな生活だった」
「あらら……重症だね~こりゃ……」
「ふっ―――しかし、それだ。天月。余がお前に求めるのはそれなのだ」
「……はぁ?」
「余には、お前のそういう所が必要なんだ」
「一体、何を―――」
「お前は、過去に壮絶な経験をし、それでも強く生き、堅実に、しっかりと自分を見ることが出来ている……失敗して、学ぶ。そういうタイプだ……赤星にはそれが無い……負けたらまた、力を付けて挑戦する、そういう奴だからな……大概、ルシファーと同じだ……他の天使も例外無くたいていはそうだ―――そこの、ガブリエル以外はな」
「失礼だな~僕だって、悔しいな~って、思ったことくらいあるのに」
「……それで、俺に何を?」
「赤星達とは別に、世界中を旅してもらう―――目的は特にない……例えば、そうだな……お前の、親の仇を探したって構わない。その犯人が、悪魔出ないと決まったわけでもないしな……ただし、そこのガブリエルと一緒にな」
「え~~~~。こんなムサイのと旅したくないよ……僕は、ほら―――自由じゃなきゃ」
「赤星達と比べれば比較的自由だ……戦う義務も無い、本当に旅をするだけでいいんだ……それにお前も、死人の魂を導くのにも飽きてきた頃じゃないか?」
「……まぁね~」
「それで……旅をさせて、俺達に何を求めてるんだ? 俺は力を使って、元々の、探偵になってまで探し求めた奴を殺せるなら―――」
「お前達に結果など求めていない……余が求めているのは、お前たちが見分を広める。それだけだ」
「……何だよそれ……俺達は、赤星達みたいに戦わなくていいのか?」
「……ふっ。それは、任せる」
「な~んだ……ホント、気楽で良いってことか」
「あぁ、そうだ……ただし、1つ言っておこう」
「ん? 何~?」
「常に人の姿で生活するのだ。移動も、仮に、戦闘もな」
「はぁ? 何で?」
「言っただろう。何も考えず、旅をしろ。――準備は良いな」
「ちょ、待ってよ」
「あぁ、ソイツの言う通りだ。赤星と違って俺は―――」
「―――っっっっっっっぷはぁぁぁぁぁっあぁぁぁ! 苦しい! あぁ~あ……み~んな行っちゃいましたね……話したい事、一杯あったのに……」
「残念だったな」
「……の割には、凄く満足そうな顔ですけど?」
「あぁ、良く分かったな。非常に満足だ」
「……日記も、本当に赤星ちゃんの経験だけしか、書かれなくなりましたね」
「そう創り直したからな」
「めちゃキモイですけど……あ、そうだ―――ギルガメッシュって―――」
「それ以上は言うな。言いたいことは分かるが……神様と呼ばれるよりは、その呼ばれ方の方が良いと考えたまでだ」
「―――ふ~ん。そ~ですか~? じゃぁ―――ギルちゃん。って呼びますね?」
「ギルちゃん?」
「はい。ギルちゃん」
「その呼び方は辞めろ」
「じゃぁ、神ちゃん?」
「それはもっと辞めろ」
「じゃ、やっぱりギルちゃんですね」
「―――もういい、話しかけるな」
「ぎ~るちゃん」
「……」
「ギルちゃんギルちゃんギルちゃん? ギルチャ―――んんんんん!」




