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合同競技会・前哨戦

もう一回で上げるのは諦めました。

今回は前哨戦、本戦、決着?と分けようかと。

その中で男の戦い、女の戦いを散りばめて書く事にします。


もうぶっちゃけノリだけでやってます。

次回はのんびり上げます。

というより、次回『も』のんびり上げます。





「今日こそケリ付けてやるッ!こんの陰険関西弁ッ!!」


「ま、はしたないこと。ほんま見るに耐えまへんわ……このトカゲ女は」


「誰がトカゲ女だって!?こんの冷血クモッ!」


「クモ……!?火吹きトカゲにはトカゲ女で充分ですやろッ!?」


 またやってる……そんな思いに私は大きく溜め息をついた。

 向こうの副官、今目の前でカーリアンとやり合ってるオリヒメの副官、サクヤも疲れを多分に含んだ溜め息を吐いている。

 その脇では『銀鈴』のスズカがそのやり取りを首を傾げながら見ていたりするが……まぁ止めてくれたりはしないだろう。


 この2人のやり取り──睨み合いと罵詈雑言を含んだやり取りは顔を合わす度の事だし、それを毎回止めようなんて酔狂な人物などいはしない。

 なにせ仲裁するのにも命がけになる。

 スズカなら2人を抑え込む事も出来るだろうが、さすがに毎回となれば面倒くさくもなろう。


 ……まぁ彼女の場合は、最初の一度目からこの2人を止めたりはしなかったけど。


 いつであれどんな時であれどこであっても『我関せず』を貫いているし、いつでも不思議そうに首を傾げて眺めているだけだ。

 それに下手に顔を突っ込まれては逆に厄介にもなり得る。


「一回きっかりケリ付けてやる!」


「その口、氷りつかせたるわ!!」


 さて、今回の揉め事の原因は、だが……もうこれも毎回同じ理由だっったりする。

 懲りも飽きもせずに、今回もまたこの2人はシャクナゲの事で揉めているのだ。


 今回は『どちらが先に黒鉄に来たか』から始まり、『どっちが先にコードを持ったか』に繋がり、最終的には『どっちがより役に立っているか』となった。

 どこにも『シャクナゲ』の『シ』の字も出てはきていないが、その全てが『どちらが先にシャクナゲに出会ったか(2人とも彼に拾われた)』となり、『どちらが先に彼に認められたか(コードを持つに至るには、当時のリーダー格だったアカツキを始め、シャクナゲと既存種の代表たるカブトの承認が必要だった)』に繋がり、『どっちが彼に必要とされているか』に帰結する。

 2人は一切『彼』の名前を出していないが、彼の前での態度と、毎回彼に絡むネタでケンカしているのだから、バレバレもいいところだ。


「……カーリアン、落ち着いて。……深呼吸、深呼吸よ」


「フゥ〜、フゥ〜〜!!」


 それは深呼吸じゃない。唸っているだけだ。

 猫の威嚇みたいに唸っているカーリアンも、それはそれで可愛いけど。

 さすがにいつまでもこのまま見ているワケにはいかない。

 そう思えば嘆息が漏れる。

 このまま見ていたら、間違いなく炎と氷が辺りを薙払うだろう。

 そう思えば、肩にどっしりとした重石が架された気分だ。


 それでも前のケンカ場所……民政部の本部真ん前にあった廃屋みたいに、見事に炎の嵐で焼き落とされ、氷の舞で平地に馴らされる前に、なんとか止める必要があった。

 さすがに2回も続けば、前みたいにシャクナゲもフォローしてくれないだろうし。


「姫もお願いしますよぉ〜。お願いですから、これ以上『民政部』に目を付けられるような真似は──」


「おシャラップっ!」


 ……向こうは向こうで、『響音』のサクヤが『蒼』のオリヒメを抑えようとしているが……まぁ、あまり期待は出来なさそうだ。

 小柄なサクヤは(まぁ、私より若干背が高いのは認めよう)、その桃色の髪をピョコピョコ揺らしながら、やや長身な班長を抑えようとしているが、どう見てもオリヒメに引きずられている。

 アワアワと手を振り回し、オリヒメを止めようとする姿は可愛いのかもしれないが、残念ながら私はロリコンじゃない。

 ……まぁ、年齢は一緒ぐらいだけど。

 それに彼女の可愛さなど、私のカーリアンには到底及ばない。


 ……役立たず。

 そうサクヤに毒づきながら、私は深い溜め息を漏らした。

 どう考えてもこの場を抑えられるのは、私しかいないだろう。

 2人を抑える方法は幾つか考えているが、あんまりそれを無駄遣いはしたくないのだ。


 ……なにせもう本当に毎度の事だから。


「……親睦会をしましょう」


 そして、そんな事にかまけている暇もないから。


「親睦会?このクモ女と!?」


「二班副官はオツムが弱いんとちゃいますか?こんなトカゲと仲良くなんて……」


「なんだって!」


「ふん!」


「……親睦会と言っても私達二・四班だけで仲良く普通に宴会をするワケじゃない。……所謂競技会みたいなモノ」


 もう勝手にやってくれ、と危うく言いかけたけど、それはなんとか抑えて言葉を続ける。


「……三班や五班──ゴホン、『三班』や五班も誘って、黒鉄七班合同で模擬戦闘競技会。……親睦を深められる上に訓練にもなる。……何よりそういう名目で民政部に通しておけば、文句も言われない」


 敢えて三班の部分を不本意ながら強調し、そしてチラッとサクヤを見やる。

 そのアイコンタクトの意味が分かったのか、サクヤはオリヒメにしがみついたまま声を上げた。


「ヒ、ヒメ!どうせ揉めるならその時にしましょう!その時なら邪魔も入りませんからぁ〜」


「……カーリアンも落ち着いて。……ケリはシャクナゲが見ている場所で着ければいい。……ほら、いい子だから大きく深呼吸よ」


 この2人がいつであれ、どこであれ揉めるのは、今までキッチリケリを着けさせていない辺りに原因がある、と私は思っている。

 つまりそれが問題を長期化させている可能性があるのだ。

 消化不良をずるずると引きずっているに近い。

 一度キッチリと決着を着ければ、少しは大人しくなる……んじゃないかなぁ、と多少期待する。

 それを合同競技会という形にしようというワケである。


 ──もちろん私には他にもメリットはあるのだが。


「……まぁ、いいでしょ。陰険グモなんていつでも決着着けられるし」


「それはこっちのセリフやわ、このトカゲ!大勢の前でバッチリ恥かかしたります!」


「いちいち言い方が陰険なんだよ、このクモ女!」


「お気楽トカゲは知恵ないさかい、言い方がそう聞こえるだけやろ!」


 ホント天敵だ。なんというか水と油というより、油と火だ。

 相性が良すぎて、周りに迷惑をかける辺りとか、ばったり出会ったら被害が絶大な辺りとか。


 やいのやいの『仲良く』喚く黒鉄随一の迷惑コンビを端に見やりながら、さて……と小さく首を傾げた。

 目先に親睦会──という名前の喧嘩場所を晒した以上、ここで派手にぶつかり合ったりはしないだろう。多分……。

 そうなれば私にはさらに考える事があった。

 つまり他の班の連中に話を通し、参加させる方法を考える必要があったのだ。











「合同競技会?今度は何を企んでるんだ?」


「……それはちょっと失礼」


 話を聞き終え、開口一番にそれはあんまりだ。そう思い、目の前の黒髪黒瞳の男を睨みやる。


 場所は移って薄暗い元地下駐車場。現黒鉄第三班本部へと私は来ていた。

 もちろん『合同競技会』についての打診をする為である。

 出来れば全てのお膳立てをした上でここに来たかったのだが、黒鉄七班全てを巻き込む以上そうもいかない。

 まずは三班──中でも班長である彼の承認を受ける必要があったのだ。

 なにしろ彼さえ承認してしまえば、民政部は文句を言わないだろうから。

 ついでに彼と仲がいい五班の班長も賛成してくれるだろうからだ。


 だからいの一番にここに来たのに、彼の反応はあまりにも失礼だと思う。

 それでもその男は気にした風もみせず


「じゃあ言い直そうか。どんな目論見があるんだ?」


 なんて肩をすくめながら言いやがるのだ。

 それに唇を多少尖らせてみせてから、小さく溜め息を漏らした。

 ちゃんとカーリアンとオリヒメの確執や、問題が大きくなりがちな原因まで語ったのに、まさかそれだけじゃ理由として足りないと言うのだろうか?

 一度決着をきっちり付けるべきなのは、多分彼にも分かっているはずなのに。

 まさかあの2人のいざこざくらいどうって事ない、とは思っていまい。


「カクリさんが積極的に動くにしてはメリットが少ない……そうシャクナゲはおっしゃりたいのですよ」


「……それも失礼」


 睨みつけていた男の脇に立つ青年が、苦笑混じりにそう付け足すのを見て……小さく天を仰いだ。

 さすがに一も二もなく賛成してくれるとは思わなかったけど、『絶対に裏がある』と頭から決め付けられるのは心外だ。

 まぁないとは言わないけど。


「合同競技会自体はいいと思うよ。でも参加は自由、コードのあるなし関係なく、参加は個人の意志による……その条件なら構わない」


「……ちっ」


 したり顔でそう付け足すシャクナゲに、私は見せつけるように舌打ちをする。

 この競技会にかこ付けて、能力が分かっていないコードフェンサーの力を見ようと思っていたのに。

 あわよくばアゲハやスイレン、そしてスズカの能力の一端でも見られれば……なんて期待して、『競技会』って形を取ったのに。


 なんだかんだ言いながら、こちらの思惑を読んだかのように条件を付けてくるのが侮れない。

 こっちの目論見が分かっているなら、最初からそう条件を付ければいいだけなのに、『何を企んでいる?』なんて聞いてくるのは、嫌がらせもいいところだ。

 あるいは『あんまり裏工作ばかりするな』という忠告だろうか?

 だとしたら余計な親切心で、デッカいお世話だ。


「ウチからはヒナが出るくらいかな?スイレンは面倒くさがりだし、ヨツバが出たら多分めちゃくちゃになるからね」


「まぁ他の仲間も何人か出るでしょう」


「……ちょっと待って」


 もう決定事項のように参加選手を語る二人に、私は慌てて待ったをかける。


「……スイレンやヨツバは構わない。……でもシャクナゲには出てもらいたい」


「悪いけど、俺も無理だよ。万が一競技会──多分トーナメント形式なんだろうけど、その初戦で俺が負けちゃう事があったら、決戦班たるウチのメンツが潰れちゃうからさ」


 それは分かる。分かるけど簡単には納得はしない。

 なにせシャクナゲが出るという形があるのとないのとでは、盛り上がりが違う。

 五班のカブトはカブトで、その名前が持つ意味は大きいけど、彼は既存種であり、戦闘能力は決して高くないのだ。


 彼は裏方としては非常に優秀だけど、こういうイベントには向いていない。

 まぁ祭り事は好きそうだから参加くらいはしそうだが、それも記念参加だろう。

 ならば最低でも、メインとしてシャクナゲには参加してもらわなければ困る。

 彼が参加すれば、ひょっとしたらスズカやスイレンも参加するかもしれない……そんな裏も捨て切れないけど、なにより彼の名前がバックに付けば、民政部とのやり取りが非常に楽になるのが大きい。

 そんな考えが彼には分かったのか、少し考えるような素振りを見せてから、チラッと隣に佇む副官へと視線を向けた。


「……どうしようか?確かにカーリアンとオリヒメの問題は頭が痛いところだし、あの2人の性格上、派手に決着を付ける事を望むのも間違いない。それにヒナだけを参加させて、初戦から強いヤツと当たってあっさり負けちゃったら、それはそれでちょっと情けないしね」


「そうですね。あまり深く考える必要もないとは思いますが、やはり勝ち負けを決める以上は、三班として情けない結果は頂けませんね」


 隣の副官であるアオイは冷静にそう言ってから、チラッと私へと視線を向ける。

 そして穏やかな笑みを浮かべたまま、言葉を続けた。


「それに問題は他にもありますね。トーナメント形式でいって、『万が一オリヒメさんとカーリアン』がぶつからなかったらどうされます?その辺りは考えてらっしゃるのでしょう?」


 ……ちっ

 本当に鋭い。

 それを理由に……しかもそれを隠して、私に都合よく対戦表を作るつもりだったのに。

 思わず舌打ちを漏らしそうになるけど、それはなんとかこらえてアオイを見やる。


「ですから、対戦の組み合わせについて私も一口かませて頂けるというのなら、ウチも全面的に協力させて頂く、という事でどうでしょう?」


 ──あくまでもあの2人の決着がメインなのですから、運を天に任せるくじ引きで、トーナメントをするワケにもいかないでしょう?

 あくまでもにこやかなその笑みに、蹴りを入れてやろうかと内心で葛藤しながら、不承不承それを受け入れる。

 ここまで譲歩案を飲まされては、もうあんまり旨味がない。


 オリヒメとの決着をカーリアンの勝利で終わらせ、なおかつ他班の戦力を観察し、その上でその戦力をぶつかり合わせて、最後は私のカーリアンに勝ち抜いてもらう……

 そうすれば私のカーリアンの評価も上がるし、彼女もしばらくご機嫌だろう。


 そう思っていたけど、そんな甘い計算は、やはりそうそう上手くはいかないモノらしい。


「……分かった。……それでいい」


 全然良くなかったけど、ここまで来てしまった以上、ゴネるのはあまりにも情けない。


「では民政部には私から話を通しておきましょう」


「俺はカブトんトコに顔を出してくるかな。久しぶりだし」


 そんな風に立ち上がる二人と連れ立って、三班執務室を後にするが、なんというかすごくやり込められた気がして仕方がない。

 私が話してから、参加者の募り方、そしてトーナメントの組み合わせまで、最初から話の流れは向こうに合ったような──


「ちょうど良かったよ、カクリ。あの二人の対策として、同じような話し合いをちょっと前にアオイとしてたからさ。じゃあ書類の方は任せたから」


「……分かった。……地獄に落ちろ、雑草野郎」


 にこやかに、というにはシニカルな成分が含まれ過ぎた、タイムリー過ぎるシャクナゲの言葉に、私は精一杯の悪態を返してその場を後にする。


 そして、最後に押し付けられた感がある『合同競技会』に向けて必要な書類を準備する為に、自室へと足を向けたのだった。



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