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紅葉

作者: 純な峠

 最高気温12℃、曇り。


 秋にしては寒い日だったが、此処はまるで暖炉の火が燃えているかのような暖かな色に包まれている。赤、黄、橙――色とりどりの葉と沢山の紅葉の木が湖を囲む。水に紅葉が反射して、湖は色鮮やかだ。


 さわさわ、と風が吹いた。色が動く。赤、黄、橙――まるで小さな波だ。色の波。時々それぞれの色が全て混ざり合ったかのような錯覚を覚える。混ざり合って、赤色、黄色、橙色じゃなくて、赤黄橙色になるのだ。赤黄橙色。この色を、紅葉色と名付けたい。紅葉色。暖かな色、紅葉色。




 湖に、一人の少女が訪れた。


 ざくんざくん、と赤、黄、橙――紅葉色の絨毯を踏みつけて歩いていた少女は、ふと足を止め、その場にしゃがんだ。


 湖。


 鮮やかな紅葉が映った湖。


 少女はじっと湖を見続ける。時たま水面が揺れ、ぶわわん、と丸い波が出来る。映った紅葉の木も、水と一緒に歪む。ぶわわん、ぶわわん……。


 少女は少しだけ微笑むと、湖の水を手で掬った。指の隙間から水が零れる。ぽちゃぽちゃん。……静寂の中で、その音はよく映えた。少女はまた少し笑った。




 さわさわ、と風が吹いた。


 木も揺れ、葉も揺れ、水も揺れ、紅葉色の景色も揺れる。赤、黄、橙の中で、少女の黒い髪も揺れる。さわさわ、さわさわ、と。


 少女は立ち上がると、水を掬った手にはあ、と息を吹きかけた。そして、それまで開けていたコートのボタンを留め、ざくんざくん、と、色とりどりの葉を踏みつけながら帰っていった。




 ぶわわん、と景色が揺れる。

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