↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/33

第23話「黒ギャルと幕府と陰キャ」

 徳川さんのあとしばらくは、個性のないモブJKたちの自己紹介が続いて、僕は安堵していた。


 心の中でツッコまずにすむからね……


「ええと、次は古本(ふるもと)さんね」


「はーい! 古本美保(ふるもとみほ)でーす!」


『古本美保』……ミホノブルボン!!


「香菜子(かなこ)とはマブでー、うちも勉強とか全然できないんでー、3年間遊んで遊んで遊びまくりたいと思いまーす! よろー!!」


 ギャルだ。


 無敗の二冠馬みたいな名前しているくせにギャルだ。


 だって黒いんだもん、大庭さんは白ギャルだったけど、古本さんは黒ギャル。


 でも髪の毛は栗色なんだよな、やっぱミホノブルボンだからかな……


「はい、お願いだから勉強も頑張ってね。えーと、次は北条(ほうじょう)さん」


「はーい!」


 ほう・じょう・さん!?


 室町、江戸だけじゃなくて、鎌倉幕府までいたぞ! このクラス!!


 こりゃ間違いなく、源(みなもと)さんもいるな。


 絶対いるよ……いや、プリント見たら源さんがいるかいないかはすぐわかるんだけど、ネタバレ防止のためにあえて見ないでおこう。


「はっじめましてー! 北条奈央(ほうじょうなお)でーす!!」


 北条奈央……なんかしくじって高野山(こうやさん)に追放されそうな名前だな……いや、高野山は女人禁制なんだっけ?


 っていうか、その北条は鎌倉幕府の北条とは別の北条、元々の名字は伊勢(いせ)だったが、関東支配を正当化するために、あえて鎌倉幕府の執権と同じ名字を名乗り……


「特技は木管楽器ならわりとなんでも吹けることでーす! 私もお近づきの印に1曲披露したいと思いまーす! 聴いてください!!」


 僕の頭の中で無限に展開される歴史うんちくなど完全に無視して、北条さんは手に持っていたサックスを吹き始めた。


 見た目だけじゃあ何サックスかはわからない僕だけど、音色を聴くにどうやらアルトサックスのようだった。


 さっきの『フルート王子』と違って、なんの曲を吹いているのか、僕には正直わからなかった。


 サックスはジャズやポピュラー音楽でよく使われる楽器であって、クラシックでは不遇の存在だからね。


 でも、曲名はわからなくても、北条さんの演奏が、さっきの『フルート王子』と同じかそれ以上にうまいということははっきりわかった。


 わかったけれども……なんでこの人たちは入学式の日に楽器持ってきてんの?


 リコーダーならまだしも、サックスもフルートも重かろうに、なんで持ってくるのよ? おかしくない?


「これから1年間、よろしくお願いしまーす!」


 アルトサックスを吹き終えた北条さんは万雷の拍手を浴びながら、自分の席に帰っていった。


 黒髪ポニーテールの明るそうなコだった。


 北条さんのあと、モブJKを挟んで、自己紹介の順番が回ってきたのは……


「み……緑井朱里です……ほ……本を読むのが好きです……よ、よろしくお願いします……」


「陰キャだ」


「陰キャだな」


「陰キャね」


「陰キャよ」


 僕といる時と違って、ボソボソ声で自己紹介した緑井は『陰キャ』認定されてしまっていた。


 こりゃ自分の身だけでなく、緑井のことも僕が守ってあげなきゃいけないのかもね。


 このクラス、いわゆる『陽の者』が多いクラスっぽいしな……いくらなんでも友達がいじめられたり、パシリにされたりするのを黙って見過ごせる僕じゃないぞ……


 武田信玄(たけだしんげん)に信濃(しなの)を追われた豪族たちや、北条氏康(ほうじょううじやす)に上野(こうずけ)を奪われた上杉憲政(うえすぎのりまさ)を見捨てずに庇護(ひご)した上杉謙信公のように、僕も友である緑井朱里を見捨てることは決してない。


 改めて決意した僕を尻目に、自己紹介はまだまだ終わらない。


 いや、さすがに『み』まで来れば、もうすぐ終わると思うけど……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。