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『第九十五章 蘇る黒と神』

広範囲で張られた魔法壁の上でジエトを相手するタクマとリーシャ。

二人の息の合った連携が少しずつだがジエトを押していた。

「フレイム・ピラー!」

「うおっ⁉」

炎の柱が目の前に立ちジエトは怯む。

炎をかき分けタクマが攻め入る。

「『居合・風切(かざきり)』‼」

疾風の一閃がジエトに炸裂する。

だが相手は後ずさりするだけで致命傷にはなっていない。

男性の神は肉体の耐久力も高いようだ。

「痛ってぇな。なかなかやるじゃねぇか。」

「まともに食らって平気かよ。レーネはそんなんじゃなかったんだがな。」

「女は痛いのが嫌だとか抜かしてたからな。神は本来下界の奴らに傷つけられるほど柔じゃないんだよ。」

やはり倒すには頭の光の輪を砕かなくてはならないようだ。

「気を引き締めろ、リーシャ。」

「はい!」

タクマとリーシャは武器を構える。

「大分舐められてるな。そろそろ本気を出すか・・・。」

そう呟くとジエトは六枚の翼を広げ、翼は強く発光し始める。

「神器開放!ラウタール‼」

翼の数と同じ巨大な白い槍を六本出現させる。

「何だアレー・・・っ⁉」

気が付くと白い槍はタクマのすぐ真横に現れ彼の頭を貫通しそうになった。

かなりギリギリの段階で気が付き身体を逸らし、槍をかわした。

「今の一瞬で気が付いたのか。とんでもねぇ反射神経だ。」

ジエトもタクマのあまりにも人間離れした身体能力に驚いていた。

反り返した体勢から戻り居合の構えを取り距離を詰める。

「居合・水刃爆‼」

水の斬撃がジエトの腹部に命中し、傷口から水蒸気が起爆する。

両者は爆風で吹き飛んだ。

「やるじゃねぇか・・・。」

腹を押さえるジエトの傷がみるみる回復していく。

治癒力も神クラスのようだ。

「まだまだ!」

炎、水、氷、風、無の技を連続して繰り出しジエトを追い詰める。

ジエトも六本の槍を駆使してタクマの連続技を受け流す。

カウンターを狙い一本の槍を突き出されるが最小限の動きで避け、剣を振り上げ槍を一本弾き飛ばした。

ジエトが体勢を崩した一瞬にタクマは鋭い一撃を入れる。

「居合・竜炎斬‼」

切れることはなかったがジエトは炎の斬撃に大きくなぎ飛ばされた。

だが受け身を取って地面に着地しダメージを抑える。

反撃の隙を与えぬため、一気に攻め入ると。

「あんまり調子に乗るなよ?」

背後の六本の神器がこちらに向く。

そして突っ込むタクマに真正面から技を放つ。

「『天技・六槍一天(むそういってん)』‼」

槍先が一点に集中し強力な突きがタクマに襲い掛かる。

「居合・炎突(ほむらとつ)‼」

タクマも咄嗟に対抗するが神クラスの武器が六つ一点に集中してとてつもない威力となっており、容易にタクマを突き飛ばしてしまう。

「うぁ⁉」

「タクマさん!」

リーシャが助けに向かおうとするもジエトの操る一本の神器がリーシャを足止めする。

その隙にジエトは横転するタクマに止めを刺そうと槍を突き出して迫る。

(まずい!立て直しが間に合わない!)

一瞬覚悟したその時、突き出された槍の先端を受け止める小さな手が目に映った。

「メルティナ⁉」

タクマの背中に匿っていたメルティナが左手でジエトの槍を受け止めていたのだ。

「何だこいつ!」

槍を引き抜くと同時にメルティナもローブから引き出される。

「このガキ!離れろ!」

引き剥がそうと槍を振り回すがメルティナは必死にしがみ付き堪える。

「何してるんですかメルティナさん!危ないですから離れてください!」

「やだ!もう皆の足手纏いになりたくない!タクマが立て直す間で私が相手する!」

そう叫ぶメルティナにジエトは別の槍をけしかける。

「邪魔するんじゃねぇ!」

「メルティナさん!」

しかし、槍が直撃しそうになった瞬間メルティナの目が金色に輝き出す。

するとまるで別人のような身のこなしで槍を避け、ジエトの肩にかかと落としを食らわせた。

「ぐはっ⁉」

予想外の反撃にジエトは対処しきれずメルティナの回し蹴りに弾き飛ばされていった。メルティナは華麗に地面に降り立つ。

「メルティナさん・・・?」

普段の彼女からはあり得ない身のこなしに唖然とするリーシャとタクマ。

そして突然メルティナは気を失って倒れてしまった。

「メルティナさん!」

リーシャが駆け寄ろうとすると煙の中から一本の神器が飛び出し、リーシャを弾き飛ばしてしまった。

「きゃぁ‼」

「リーシャ!」

神器が回転しながら戻るとそこにはダメージを受けたジエトが立っていた。

「ハァ、ハァ・・・、今の魔力・・・まさか、先代の創造神なのか?」

その言葉にタクマは反応する。

(先代、てことはやっぱりメルティナは・・・!)

ジエトは腕を抑えながら倒れるメルティナの前に立つ。

「アンタに恨みはねぇが新生創造神様のため、生かしちゃおけない。悪いが死んでもらうぜ。」

神器を構えるジエトに起き上がったタクマが攻め入る。

「させるかぁぁ‼」

炎の剣でジエトを捉えるも、残り五本の神器がタクマに突き刺さり身動きを封じられてしまった。

「タクマさん!」

拘束から逃れようともがくが神器はビクともしない。

「そこで大人しく見てろ。前任の創造神の最期を。」

リーシャが駆け寄ろうとしたその時、タクマから覚えのある恐ろしい気配を感じ取り、足を止めた。

「新世界創造のため、死んでくれや。元創造神様。」

ジエトは神器を掲げメルティナに思いっきり振り下ろした。

その瞬間、タクマの目が突如赤く変色し、どす黒い覇気を放った。

「っ⁉」

覇気に当てられたジエトは神器を止める。

恐る恐る振り向くとタクマから漆黒の炎が溢れている姿が目に映った。

「タ、タクマさん・・・まさか‼」

「ガァァァァァ‼」

叫びと共に黒炎が爆発し神器を吹き飛ばす。

そして黒い炎の翼を有した黒炎の竜化となってしまった。

「何だその姿は?」

あのジエトさえも冷汗が止まらないでいた。

タクマは黒炎を纏った剣を構える。

「居合・暗麗滅尺(あんりめっしゃく)‼」

二つの黒い斬撃がジエトに襲い掛かる。

ジエトは斬撃を避けメルティナから離れた。

「闇属性⁉こいつ、幾つ属性をもってやがる⁉」

ジエトも神器を持ち直すがタクマの息もつかせぬ容赦ない連撃が反撃を許さなかった。

(クソッ!反撃の隙が無い!)

猛攻に耐え切れずジエトは足を崩してしまった。

「しまった!」

「『居合・紫月(しげつ)』‼」

まるで紫色の三日月のような静かな斬撃がジエトを切り裂いた。

「ぐ、ぐあぁぁぁぁ⁉」

生まれて初めての大傷にジエトは動揺を隠しきれず膝から崩れ落ちる。

(馬鹿な⁉俺が、神の俺が切られた⁉)

顔を上げると黒炎の剣を持ったタクマがゆっくり歩んでくる。

「クソッ!」

ジエトは神器を飛ばすがタクマは難なく弾き返す。

「クソッ、クソッ、クソッ、クソッ‼」

全ての神器をけしかけるも全て弾かれ、ジエトも前にタクマは立つ。

そしてこの時、ジエトは初めて恐怖という感情を体現した。

そんな彼に容赦なく追撃を入れる。

「『居合・虚空三連(こくうさんれん)』‼」

振り上げる三連続の剣技がジエトを上空へ飛ばした。

「ぐぉっ⁉」

タクマは地上から居合の構えを取り、黒炎は更に燃え広がっていく。

()()()()()・・・‼』

その時だった。

強い心音が鳴ったと思ったらいつの間にか赤黒い空間にいた。

そして正面にはタクマの中にいる故人、シーナがいた。

「それ以上私の黒炎を使うな。()()()!」

タクマの背後にはバハムートにそっくりなドラゴンの影が居座っていたのだった。


 体内でシーナが何かをしてくれたおかげかタクマは黒炎状態のまま半分だけ意識を取り戻すことが出来た。

「ぐぐっ!もう取り込まれて、たまるか!」

左目が赤から元の色に戻り、リーシャに叫ぶ。

「リーシャ!止めをさせ‼」

咄嗟のタクマの指示に驚くもリーシャは言う通りに杖に魔力を溜め始めた。

(っ⁉何だあのガキから溢れる魔力⁉)

ジエトはリーシャの神殺しの魔力に気が付きその場から逃げようとした。

だが、

「逃がさねぇ‼」

闇の魔力に蝕まれる身体を無理やり動かし剣を地面に突き刺す。

「居合・陽炎(かげろう)‼」

黒炎の翼から三つのタクマの影が飛び出し、一斉にジエトを拘束した。

「何⁉」

空中で固定されたジエト。

そしてリーシャの魔力チャージが完了する。

「『死滅の光神(ミスティルテイン)』‼」

極大の光の槍がジエトに向かって放たれる。

拘束してる陽炎諸共ジエトは槍に光に飲まれる。

「ぐぐ、ぐぁぁぁぁぁぁ‼」

神格に亀裂が入り大爆発。

爆煙からジエトが落下し、地面に倒れる。

「ハァ、ハァ・・・。」

戦いに決着がついたがタクマの黒の竜化が解けず、逆に炎は更に勢いを増し始めた。

(まずい!また意識が遠退く!このままじゃまたあの時みたいに暴走しちまう!押さえろ。押さえろ!)

必死に黒炎を抑え込もうとするが徐々に勢いが増していき左目が再び赤く染まっていく。

「グァァァァァ‼」

すると苦しむタクマの頭にそっと手を置かれる。

それは目を覚ましたメルティナだった。

「大丈夫。落ち着いて。」

未だ瞳が金色のままだった。

メルティナから発せられる不思議な光がタクマの黒炎を徐々に沈静化させていき、最終的に黒炎は完全に消え失せたのだった。

タクマはゆっくりと起き上がる。

「メルティナ・・・、やっぱりお前は・・・。」

言いかけたタクマの口を人差し指で優しく抑える。

「まだ全てを明かすには早い。でも、君の考えてることは合ってるわ。そう、私は前任の創造神。訳あってこんな姿になってるけど、これまで通りメルティナとして接して。時が来たら全てを明かすから、それまでリーシャさんや他の皆には秘密にしといて。お願い。」

少女とは思えない程大人びた口調に優しい笑顔。

タクマは彼女の要望を潔く受け入れた。

「・・・分かった。その時まで、待ってるぜ。」

メルティナは優しく微笑むと瞳が元の色に戻り、再び気を失った。

倒れる彼女を受け止め頭を撫でる。

「ありがとな。助けてくれて。」

そして遅れてリーシャもやってきて三人は無事ジエトに勝利したのだった。


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