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『第九十三章 神龍の領域』

大穴の底で激しい戦闘音が鳴り響く。

「居合・竜炎斬!」

炎の竜化したタクマが連続の炎の斬撃をジエトは防壁を張りながら受け流していく。

ジエトは終始防戦一方だ。

(あれから魔獣をけしかけてこない。何かを企んでるのか?)

その予感は的中する。

「今だ!」

ジエトの合図でタクマの足元が砂に代わり中から大きなハサミが現れ足を掴まれた。

「⁉」

次の瞬間砂が急激に面積を広げ蟻地獄のように引き釣り込まれる。

「そのまま生き埋めとなれ!」

「ならねぇよ!『居合・水刃爆』!」

水の技で巨大なアリジゴクを切りつけ拘束から逃れる。

タクマはリヴのブレスをコピーし魔法陣を構える。

「ストリーム・ブラスト!」

大量の水がアリジゴクごと押し流し砂が固まっていく。

アリジゴクは固まった砂で身動きが取れなくなった。

「『居合・炎突(ほむらとつ)』!」

突きから繰り出す業炎がアリジゴクに炸裂。

爆発と共に瓦礫が崩れアリジゴクは生き埋めとなった。

崩れた瓦礫の上に降り立つタクマ。

「奇襲も通じず、か。」

「さっきからちまちま仕掛けてきやがって。テイマーの神はこんなもんじゃねぇだろ?」

タクマが言うがジエトはしばらく黙り込んだ。

「・・・そうだな、そろそろ本気をー・・・・・っ⁉」

途端にジエトは突然硬直したような表情になった。

そしてジエトの脳内にある男の声が聞こえてきた。

『何を遊んでいる。ジエト。』

(そ、()()()()⁉)

天界を支配する新生創造神、ラウエルがジエトの脳に直接語り掛けてきたのだ。

『戻りが遅いため連絡を入れたが、何をしている?神龍は手に入れたのだろうな?』

(も、勿論です!神龍は我が手中に収めました!し、しかし現在竜王を連れたテイマーの人間に妨害されておりそちらに戻る時間がございません!)

突然の偉い御方からの言伝に焦りながらも答えるジエト。

『竜王を連れたテイマー・・・。そうか、そいつが今そこにいるのか。憎きセレンティアナの息子が。』

(さ、左様でございます!)

新生創造神ラウエルがニヤリと笑う。

『そうかそうか。ではジエトよ。神龍の力を試すついでに可能であればその者等を始末しろ。神に逆らうとどうなるかを思い知らせるのだ!』

その言葉を最後にラウエルの声は聞こえなくなった。

その間はわずか数秒。

タクマがジエトに攻め走っている。

すると、

「・・・了解です。創造神様。」

突然おぞましい笑みを浮かべるジエトにタクマは驚き足を止める。

ジエトは魔法陣を展開し爆破魔法を放つ。

咄嗟に後ろに飛んだためダメージを最小限に抑えることは出来たが、突然のジエトの豹変に警戒が尋常じゃなかった。

(気配が突然変わった?一瞬黙ったと思ったら急に攻撃的になって・・・。)

「!」

考える間も与えぬと言わんばかりのジエトの猛攻がタクマに襲い掛かる。

全て遠隔攻撃だが手段が豊富過ぎて避け続けるタクマも全てを受け流すことが出来ないでいた。

そしてキツイ一撃をモロに受けてしまい弾き飛ばされてしまった。

「今だな。来い!神龍‼」

遠く離れた上空で神龍が突然咆哮を上げる。

「何だ⁉」

「なんや⁉」

神龍はウィンロス達に目もくれず横切って行った。

「どこ行く気やアイツ⁉」

「あの方角は、神龍が出てきた大穴・・・。」

すると神龍の尻尾を掴んだまま一緒に飛んでいく黒竜が一瞬目に入った。

「・・・・・。」

「・・・・・。」

ネクトとウィンロスは互いに顔を合わせる。

「「クロス⁉」」

「何やっとんねんアイツ‼」

急いで神龍を追いかけるウィンロス達だった。


 「グオォォォ!」

「はぁぁぁぁぁ!」

ニーズヘッグとリヴの衝突で衝撃波が辺りに響く。

「この石頭!」

互いに距離を取りニーズヘッグがブレスを放つ。

リヴは氷塊を出し受け止めるがあっけなく砕かれてしまい直撃してしまう。

「きゃぁぁぁ!」

怯んだ隙をつきニーズヘッグが赤黒い炎を纏った拳でリヴに殴り掛かってきた。

(ま、まずい!)

リヴに当たる寸前、

「おおぉぉぉぉ‼」

猛スピードで飛んでくるバハムートが拳を突き出しニーズヘッグの顔面に炸裂する。

ニーズヘッグは弾き飛ばされるも上空に留まる。

「おじ様!」

「無事か?リヴ!」

「なんとか!」

バハムートはニーズヘッグを見る。

「ニーズヘッグ・・・!」

「グルル・・・!」

互いに睨み合っていると頭上を神龍が通り過ぎていく。

「神龍⁉」

神龍はそのまま大穴へと降下していった。

「あそこには主様とメルティナが!」

「おーーーい!」

少し遅れてウィンロス達も現れる。

「神龍はどこに行った?」

「あの大穴に・・・。どうしたの?そんなに慌てて?」

「クロスが神龍に捕まったまま一緒に飛んでいっちまったんだよ。」

「何してるのよアイツ・・・。」

「同感や・・・。」

ニーズヘッグの相手をバハムートに任せ、それ以外のメンバーは神龍を追って大穴に向かっていった。

「・・・ニーズヘッグ。」

一人残ったバハムートは静かにニーズヘッグに語る。

「お主はまだ、我の事を・・・、恨んでいるか?」


 轟音と共に神龍が大穴に入り、ジエトの背後に留まった。

「神龍⁉」

すると神龍の移動に巻き込まれたクロスが落ちてきてタクマのすぐ近くで地面に突き刺さった。

「え、クロス⁉何でお前まで?」

「これで役者は揃った。今こそ神龍の力を解放せし時!」

ジエトは魔法陣に手を入れると翡翠色の魔石を取り出した。

「従魔結石⁉奴も持ってたのか!」

ジエトは結石を持って神龍に向く。

「さぁ、従魔結石による真の解放だ!」

そう叫ぶと、何と結石を神龍の身体に埋め込んだのだ。

「~~~~っ‼」

神龍は苦しそうな咆哮を上げ従魔結石がずぶずぶと身体に入っていく。

「限界の先へと誘え!神龍!」

身体からは翡翠色の稲妻が迸り、黄金の鱗粉もまるで羽衣のように形作っている。

その姿には見覚えがあった。

「極限状態・・・!」

かつてレーネを打倒した時の従魔結石による強化状態。

『極限状態』だった。

(あれは神をも倒せる力。それがただでさえ強力な神龍が解放されたら!)

「~~~~~~っ‼‼」

これまでよりも凄まじい咆哮が大穴を揺らす。

「―っと、このままじゃ穴が持たないな。」

ジエトが神龍の魔法を発動させると周囲がグニャリと歪み始め、朝日の雲海のような背景に無数の岩が辺りに漂う神秘的な空間へと変わった。

「フィールド!」

以前一度だけ相まみえた発動者に有利な効果を及ぼす魔法だ。

「スゲェ!これが神龍の創り出すフィールド魔法か!この力があれば世界を作り変えるのも容易い!」

神龍の力に興奮気味のジエト。

タクマと地面に突き刺さってるクロスは浮かんでいる岩の一つに立っていた。

「あのクズ勇者の比じゃねぇな。クロス、戦えるか?」

ボコッと地面から抜けるクロス。

「悪いが俺と戦ってくれるか?クロス。」

クロスは頷く。

「サンキュ・・・。」

遥か上空では極限状態の神龍が佇んでいる。

側の岩にはジエトが乗っていた。

「アイツ等、まだやる気か・・・。身の程知らずが。さぁ神龍、解き放たれたその力を奴らに見せつけるんだ!奴らを始末しろ!」

ジエトはそう命令を出す。

しかし、神龍は動かなかった。

「・・・おい、どうした?奴らを始末しろって言ってんだよ!」

ジエトが叫ぶ。

そして次の瞬間、神龍はジエトに牙を向き始めたのだ。

「何⁉」

ジエトは別の岩に飛び移りなんとか逃れるが。

「おい!何故俺を攻撃する!アイツ等を殺せと言ってるだろ!」

どんなにわめくも神龍はジエトの言う事を効かない。

「~~~~~~っ‼‼」

耳がつんざく程の咆哮が空間を揺らす。

「何故だ⁉何故俺の言う事を効かない⁉」

焦るジエトだがタクマは何となく理由を知っていた。

「恐らく従魔結石で極限状態にさせた影響だな。いくら神と言えど神龍をテイムするのはかなりギリギリだったみたいだ。それを極限状態に開放したことで許容量を超えてしまったんだ。もう神龍には何を言っても通じない。暴走状態だ!」

狂乱の龍と化した神龍は手当たり次第に暴れ始めた。

体中からレーザーを発し辺りの岩を打ち砕いていく。

「くっ!」

「あぶね!」

ジエトは飛翔して避け、タクマはクロスに抱えられて別の岩に飛び移っていく。

神龍は未だにレーザーを放出し続ける。

「完全に我を忘れているな。このまま放置するもの危ない。クロス、神龍に近づけるか?」

クロスは頷く。

「よし!頼む!」

タクマは背に乗り移りクロスは浮遊する岩の上を飛び移って神龍に近づく。

するとクロスの接近に気付いた神龍はこちらに向かってブレスを放ってきた。

咄嗟に回避したが放たれたブレスは浮遊岩を貫通、幾つもの足場を砕かれた。

「くそ、足場を持ってかれたか。せめてバハムート達も呼べれば・・・!」

クロスは翼を持たないドラゴン。

彼だけでは神龍に太刀打ちするのは厳しい。

しかしフィールド魔法のせいか召喚陣を出そうとしてもうまく展開できない。

「なかなか厳しい状況だな・・・。」


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