『第八十七章 あの人からの警告』
スキルを組み合わせて『エコーロケーション』を作り聖天新教会の隠れ拠点を探ったタクマ。
しかし発動直後、突然意識を失い倒れてしまった。
「タクマさん‼」
涙目で呼び掛けるリーシャだが反応がない。
タクマは硬直した表情のままだった。
「何で、どうして突然・・・。」
リヴも今に泣きそうだった。
「ちょっといい?」
そこにリルアナが駆け寄りタクマの額に手を当てる。
「・・・何か、強い魔力に当てられて意識が飛んだみたい。」
「強い魔力?タクマさんは大丈夫なんですか?」
「えぇ、他に異常は感じられない。一時的な物だと思う。」
それを聞いて安心する二人。
「だがここにいるのは得策じゃない。どこか休める場所に移るぞ。」
タクマを抱え上げ先を進む一同だった。
「・・・ん?」
タクマが目覚めたのは見覚えのある真っ白な空間だった。
「やぁ、また会ったね。」
振り返ると椅子に座ってお茶を飲んでる長い黒髪女性がいた。
「アンタか。シーナ。」
タクマの中にいる謎の女性シーナ。
彼女はかつて世界に悪名を残した世界初のドラゴンテイマーだ。
「で?何で俺はまたここに来たんだ?」
「いやね、君が新しく作った『エコーロケーション』で辺りを探知した辺りまでは良かったよ?でも範囲が広すぎてヤバい物にも触れちゃったわけよ。」
シーナの説明に首を傾げる。
「ヤバい物って何だ?」
「神龍の宝玉さ。」
「⁉」
タクマは驚いた。
どうやら『エコーロケーション』で神龍が封印された宝玉に触れてしまい、その圧倒的な魔力量に当てられ自我が崩壊する寸前だったという。
「自我を失うほどの魔力量・・・?」
「神龍は常識外の存在だからね。得体の知れない力も沢山持ってるんだ。」
シーナが助けてくれなかったら危なかったみたいだ。
今回は彼女に感謝しとこう。
「それにしても・・・。」
「?」
「前回の事は記憶に残っていないハズなのに、何で君は私の事を覚えていたんだ?」
あの時シーナはここで話した事は記憶から消えると言っていた。
だがタクマは彼女の事を覚えていた。
「さぁ?何でだろうな?」
本人も分からないでいた。
「まぁアンタは博識だから記憶が残ればいろいろとありがたいが。」
「いいように使うなよ・・・。」
立ち話の何なのでタクマも席に着いた。
「君の記憶を消そうとしても意味はなさそうだ。諦めるよ。ただその代わりあの子、バハムートには私の事は伏せておいてくれないか?」
「バハムート?アイツの事知ってるのか?」
「あれ?あの子から聞いてるんじゃなかったの?あの子の前の主人て、私なんだけど?」
「・・・はいぃぃぃ⁉」
タクマは驚いた。
確かに以前バハムートは彼女の話をした時、少し様子がおかしかったが。
「前の主人・・・そういう事かよ。」
「その様子じゃ知らなかったみたいだね。全く、あの子ったらまだあの事を引きずってるのね。」
「あの事?」
「実はね・・・。」
シーナは説明しようとすると急に口を閉じた。
「・・・いや、私から話すより本人に話させた方がいいか。」
「?」
「気にしないでくれ。ただ・・・、あの子は私に対してちょっと深い傷を持っていてね。知りたかったらバハムートから聞いてくれ。まぁ彼はあんまり話したくないと思うけど・・・。」
何か気に掛かる事を言っているがかなりプライバシーな話のようだ。
タクマもこれ以上追及はしなかった。
「さて、そろそろ君を起こさないとね。仲間の女の子達が今にも泣きそうになってるから早く安心させてやりなさい。」
「そっちから引き込んだくせに・・・。」
「アハハ!そうだった!それじゃぁまたね!」
パチンと指を鳴らし、タクマの意識はそこで途切れた。
「・・・ん。」
「タクマさん‼」
「主様~‼」
目覚めると同時にリーシャとリヴにのしかかられる。
「重い、二人は重い!」
「重いって言わないで!」
ネクトたちも一安心していた。
「悪い悪い。心配かけたみたいだな。」
「俺は何とも思っちゃいないがその二人がやかましかったからな。」
ともあれ無事だったタクマ。
リルアナが何故倒れたのか理由を聞いてみると、
「神龍の宝玉に触れたから?」
「あぁ、『エコーロケーション』で触れたことで神龍の膨大な魔力量に当てられて結構危なかったみたいだ。」
「神龍の宝玉・・・、この地に神龍がいるのは間違いないみたいだな。」
「あぁ。」
封印されていながらこの危険度。
絶対に復活は避けたい。
一刻も早くエルフを助け出さなくては。
「牢屋はこの下だ。見つかる前に行くぞ!」
一同は出来るだけ物音を立てずに地下へ進んでいく。
そして鉄格子が幾つもある部屋に出た。
「恐らくここに・・・。」
それぞれで牢屋の中を確認する。
だが、誰もいなかった。
牢屋の中は者抜けの空だった。
「こっちの誰もいません!」
「ここじゃなかったのか?」
「いや、飯を食った痕跡がある。時間もそれほど経っていない。ここにいたのは確かだ。」
恐らくつい先ほどエルフ達はどこかに連れていかれたようだ。
「『鑑定』プラス、『追跡』!」
スキルを発動させると複数の足跡が浮かび上がるのが見えた。
「こっちだ!」
足跡の先へ向かおうとした時、
「何者だ!」
二人のローブ男に見つかってしまった。
「侵入者だ!捕まえろ!」
「わぁ!見つかっちゃった⁉」
ネクトが長刀を地面に叩きつけ男を転倒させる。
「何だ?今の振動は?」
別の方向から更に教会の人間が現れる。
「逃げるぞ!」
一斉にそこから離れる六人。
メルティナはリヴが抱えて走った。
「てかまたこのパターン・・・。」
「前にもあったな・・・。」
デジャヴを感じつつも攻め来る信教者たちを薙ぎ払い進む。
「やれやれ、役に立たない若者たちです。」
別室で老人がレバーを降ろすとタクマ達の足元が突如崩れ落ちた。
「うわぁぁぁぁ⁉」
崩落に巻き込まれたタクマ達はそのまま底へと落ちていく。
「ラル‼」
リーシャの髪からラルが飛び出し、彼女の従魔結石が光を放つ。
『覇王進化‼ガンズ・ド・ラル‼』
進化したラルの巨体に受け止められ地面に着地する。
「あっぶね~!サンキュー・・・リーシャ、ラル。」
どうやら拠点の一番奥深くまで落とされたみたいだ。
「ホント、こいつの進化の力何なんだ?」
「・・・あ‼昨晩皆さんに進化の相談するの忘れてました‼」
「いやおせぇよ・・・。」
どうやら落とし穴に落とされたみたいだ。
「やられたな。」
落とし穴にしてはとてつもなく広い。
石柱が無数に立つ広い空間だった。
「落ちてきた穴は?」
「無理ですね。瓦礫で完全に塞がってます。無理に剥がすと崩落する恐れも。」
来た道には戻れなそうだ。
「しゃーねぇ。このまま進むぞ。」
歩き出そうとしたその時、目の前の地面に突然魔法陣が現れたのだ。
「うぉっ⁉」
タクマは咄嗟に距離を取る。
そして魔法陣から六枚の翼を有した水色髪の色気のある女性が現れたのだ。
「ふぅ、この場所なら気兼ねなく来られるわ・・・ん?」
「え?」
女性とタクマの目がバッチリと合う。
「きゃぁぁぁぁ⁉」
「うおぁぁぁぁ⁉」
二人は互いに驚き飛び上がった。
「何だお前⁉」
「こっちのセリフよ!誰よアンタ・・・、あら?」
女性は冷静になってタクマ達を見た。
「貴方、レーネを倒したドラゴンテイマー!」
「⁉」
レーネの事を知っているという事は・・・。
「主様!そいつ神よ!」
リヴの方に振り向いた瞬間、タクマの背後に女性が両腕を広げて襲い掛かってきた。
「っ‼」
咄嗟にしゃがみ前転で距離を取る。
「あらあら、外しちゃったわ。」
(明らかに殺気を乗せてきた。間違いなくこいつはレーネと同じ神の類!)
すると女性はリヴの後ろに隠れてるメルティナに気が付いた。
「え?創造神様・・・?」
「・・・え?」




