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『第八十四章 行方』

タクマ達が聖天新教会との戦闘を終えた少し後。

神の住まう天界で彼らの様子を見ていた一人の男性神がいた。

「力を与えたあの老いぼれを倒すとは。やはりレーネと双子紳を倒しただけあるってことか。」

腕を組んで水晶を覗くのは長髪の知的な見た目の神、知神レストだった。

「創造神様の命で見張ってはいるが、どうにもな・・・。」

すると部屋に水色髪の女性が入ってきた。

「はぁい♡レスト。今いいかしら?」

「エルエナか。構わんがどうした?」

色気のある美神エルエナがレストの隣に座る。

「特にこれといった用はないんだけど、創造神様が言っていたレーネ達を葬った人間が気になっちゃって。」

「丁度俺もそいつらを見ていた。俺の信者が一人その人間たちにやられた所だ。」

エルエナは水晶を覗き込みタクマ達を見る。

「へぇ~、この子たちがそうなの。中々可愛いじゃない♡」

「可愛いなんてものじゃない。こいつ等の戦いを見ていたがとんでもない力だったぞ。特にこの少女だ。」

レストはリーシャを指した。

「この子が?ぱっと見ただの女の子のようだけど・・・あら?」

エルエナは何か違和感を感じ取った。

「この子の魔力・・・、なんか嫌。」

「お前もそう思うか。どうやらこの少女の持つ魔力は俺達神に特攻した力を持っているみたいなんだ。」

「神殺し?そんな力聞いたことないわ。」

二人はリーシャについて話し合っているとレストは兵士に呼び出された。

「―っと、悪い。少し席を外す。ついでにこの事を創造神様に報告してくるから見張りを頼めるか?」

「りょーかい。」

退室するレストを見送り水晶に向き直る。

「神殺しの少女、ねぇ・・・。」

クセっ毛をいじりながら水晶を眺めているとエルエナはある事を思い出した。

「そうだ。確かジエトが新しい道具をテイムしようとしてたっけ?それが成功すればかなりの戦力アップに繋がるって。そうすればこの子達にも対抗できるかもしれない。ちょっと様子を見てこよう♪」

エルエナも退室しジエトの元に向かった。

そこに屋根から一羽の鳥が王宮から飛び立っていったのだった。


 教会に捕らわれたエルフの救出に成功したタクマ達。

トップを失った東街セクレトの聖天新教会は次に権力の持ったシスターがまとめ役としてこの先やっていくことになった。

そして教会の聖女を辞めた断罪聖女こと、リルアナ。

彼女はネクトの仲間として感情を取り戻すため、旅に同行することとなった。

そして宿に戻ってきたタクマ達を待っていたのはふて腐れているメルティナだった。

「ほら~メルティナ?美味しいお菓子買ってきたから出ておいで~?」

リヴがお菓子で釣ろうとしてもメルティナは布団から出ようとしなかった。

相当引きずっているようだ。

「菓子で釣るとかどうなん?」

「どうでしょう・・・。」

子ども扱いされたのが嫌だったのか更に布団に潜ってしまった。

「リヴ、その作戦は流石にどうかと思うぞ?」

「うっ・・・。」

しかしメルティナが機嫌を直してくれなければ出発が出来ない。

どうにか彼女の機嫌を直したいところだが。

「ちょっといい?」

リルアナがベッドに腰を降ろし布団に潜るメルティナに話しかける。

「メルティナさん。一人置いていかれて寂しかったのは分かります。貴方は彼等に構ってほしかっただけなんですよね?」

リルアナの言葉を聞いて布団の隙間から顔を覗かせるメルティナ。

「貴女も年頃の女の子。誰かに構ってほしいと思うのは自然の事。そして今彼らはここにいます。寂しいなら寂しいとちゃんと伝えてください。皆貴女を大切に思っているのですから。」

メルティナは何も言わず布団からゆっくり出てくる。

そんな彼女をリルアナは優しく抱きしめた。

「ぐす、うぅ・・・。」

泣くメルティナを慰めるように頭を撫でた。

流石元聖女。

感情を失っても尚、母親のような安心感は健在だ。

「ところで、リルアナは幾つなんだ?」

「十四歳よ。」

前言撤回。

母親と言うよりお姉さんだ。


 さて、メルティナの機嫌も直ったことで一同は情報を一旦整理する。

「そういえばネクトが掴んだ三つ目の売られたエルフの居場所の情報は聞いてなかったな。」

「あれ?言ってなかったっけ?」

全員が首を横に振った。

ネクトは改めて売られたエルフの行方を話した。

「この持ってきた売買契約書を見て更に確信が付いた。売られた先は全て同じ場所だったんだ。」

契約書の項目には確かに同じ名前が記載されていた。

「聞いたことない街の名前ね。ここにエルフがいるのかしら?」

「恐らくな。次の目的地はこの街に決ま・・・。」

「ん?ちょっと待て。」

バハムートが窓の外に何かいるのを見つけた。

それはワールド騎士団が伝達で使う伝書鳩だった。

鳩の足には手紙が括り付けられている。

「ウィークスからの連絡だ。」

手紙にはこう記されていた。

『タクマ。突然の連絡失礼する。西街レーロードでエルフの密売をしていた商人組織を取り押さえることに成功、情報を得た。一度君達と合流したい。東街と西街の中央に位置する草原で仮拠点を設けたからそこまで来てくれ。』

との事だった。

丁度いいタイミングだったため、タクマ達はウィークスの指定した場所までバハムート達に乗って向かったのだった。


 西と東の中央にある草原に着くと既に幾つものテントが設けられたワールド騎士団の仮拠点が健在していた。

タクマ達は拠点中心のテントにいるウィークスと合流する。

「そちらは片付いたみたいだね。」

表情から察せられた。

勘が鋭すぎる。

「ん?そっちの女性は誰だ?」

ネオンがリルアナを見て言った。

「あぁ、聖天新教会に所属していた元断罪聖女のリルアナだ。ネクトの仲間になったからよろしくな。」

ネオンは飛び上がって驚く。

彼等も断罪聖女の事については聞いていたみたいで顔を青くしていた。

流石のウィークスは顔色一つ変えず友好的にリルアナに挨拶をしていた。


 互いの近況報告も済、これからの事を話し合う。

「私達が得た情報はこれだ。」

ウィークスは入手した書類をテーブルに広げる。

「俺達もこんな感じだ。」

タクマもリーシャの異空庫からエルフの売買契約書を出す。それらの書類から情報をまとめているとネクトが何かに気づいた。

「ん?ちょっといいか?」

ネクトは散らばった書類を幾つか並べ直し見比べている。

すると、

「やっぱり・・・、売られたエルフの行先が全て同じ場所に繋がってる!」

タクマ達も書類に目を向け直すと確かにどの書類にもエルフが連れていかれた行き先が一致していた。その場所は・・・、

「巨神山岳・・・!」

等々最後の目的地を炙り出せた。


 同時刻のとある洞窟内の牢屋。

水の滴る通路に一人の白いローブを羽織った小柄の老人が歩いてた。

そこに一人の若い男性がやってきてローブの人物に耳打ちをする。

「・・・そうですか。ローヴェルトがしくじりましたか。情報感謝いたします。下がってよろしい。」

若い男性は一礼そしてその場を離れた。

「やれやれ、自身の傲慢さに身を滅ぼすとは。とんだ愚か者でしたね。まぁいいでしょう。材料は十分集まりました。」

とある牢屋の前に立ち止まる。

牢屋の中には数人のエルフが手足と口を縛られ拘束されている。

教会や国に売られたエルフ達だった。

「いよいよですな。従神ジエト様の悲願。神龍の復活が近い!」


暗い闇が飲み込む大穴の底に、一つの宝玉が小さく鼓動を鳴らしていたのだった。


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