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『第八十一章 奪われた心』

聖職者ローヴェルトの策略で感情を全て失ってしまい敵対する断罪聖女。

「あの野郎・・・!」

歯を食いしばるタクマは居合の構えを取る。

「居合・一閃!」

猛スピードでローヴェルトに迫るが聖女の幻影に阻まれてしまう。

「くそ!幻影の癖に実態あるとかメンドクセェ!」

すると聖女にネクトが攻め入り互いの武器が火花を散らす。

「タクマ、そのクソ野郎は任せる・・・。」

ネクトの目はこれまでない程憤怒に燃えていた。

「・・・分かった。俺もこいつには一発殴らねぇと気が済まなかったんだ。」

もう一度一閃を繰り出し、ローヴェルトと共に後方へ押して行った。

その場に残ったネクトと聖女は互いに睨み合う。

しかし、感情を全て奪われてしまった彼女からは何も感じられなかった。

「道具になり下がりやがって、それでも聖女か?」

「・・・・・。」

(つっても、意思がないんじゃ話せねぇよな。世のため人のために感情を捨ててまで尽くしてきたのにこの有様。哀れだな。)

ネクトは槍を構える。

「哀れで、可哀そうだ。そんな奴を放っておけるほど、俺は腐っちゃいねぇ!」

聖女も器具の幻影を次々構え始めた。

「お前は、俺が助ける!」


 「フロスト・ファング‼」

氷の牙で首の一つに噛みつくリヴ。

噛みついたところから徐々に凍ってくがすぐ別の首に阻まれる。

「あぁもう!鬱陶しいわね!」

凍らせた首も徐々に回復してしまう。

「自動回復スキルがあるとか、糧にされたお爺ちゃん達の誰かが回復魔法持ってたのかしら?」

「だとしたら長期戦は不利です!一気に畳みかけませんと!」

しかし、今この場にはバハムートもウィンロスもいない。

彼女達だけで何とかするしかなかった。

「ラル!」

(任せて!)

ラルは高く跳躍し、魔弾の雨を降らせる。

魔弾は五つ首に命中し怯んだ。

「今だ!『マグn――っ‼』

その時だった。

下に撃ったはずの魔弾の少数が上に向かって弾きかえってきたのだ。

「っ⁉ラル!避けて!」

しかし今のラルには翼がない。

空中では当然身動きも取れず魔弾が直撃してしまった。

「ラル!」

落下してくるラルをリヴがうまく受け止めた。

「ラル、大丈夫⁉」

(なんとか・・・、でも、今のは一体?)

するとどういうタイミングなのかウィンロスから念話が届いた。

「何か教会から凄い音しとるが大丈夫か?」

「ウィンロス⁉急に何⁉」

現在バハムートとウィンロスは騒ぎが街中に響かぬよう、街の外から防音結界を張ってもらっていた。

「一個伝え忘れてたんやけどその教会の裏庭にある草は反射の術式が組み込まれとんねん。だからそこで戦う際は気ぃつけや。」

「・・・早く言え‼」

リヴの怒号を最後に念話は切れた。

「だってさ。」

「なるほど・・・。」

原因は分かったがこの場では迂闊に魔法を放てない。

肉弾戦で行くしかなかった。

(となると僕は足手纏いになっちゃうね。)

「・・・いえ、アンタはそのまま戦いなさい。ただし銃は使わずにね。」

ラルの戦い方を見ていたリヴはラルに銃で殴るという提案をしてきた。

「確かに、ラルは銃で殴ったりもしてましたけど。」

「アンタは肉弾戦にも対応できるわ。だから足手纏いなんて考えないで。」

リヴに言われ、ラルは少し安心した表情を見せる。

(・・・うん。ありがとう!お姉ちゃん!)

無垢な笑顔を見せる。

ラルにリヴはハートを撃たれる。

「ま、まぁね!私はアンタより年上だしね!」

お姉ちゃんと言われたのが嬉しかったのかツンデレになるリヴにニヤニヤ笑うリーシャだった。


 遠くでリヴ達の猛攻が五つ首のドラゴンを押している。

「・・・想定外ですね。私の創り出した竜が押されてるなんて。」

「こっちには本物のドラゴンが二体いるからな。」

互いに強い一撃がぶつかり合い互いに距離が開く。

「あのドラゴンが倒されてしまうのは少々困りますね。貴方との戦いは第二ラウンドへ持ち越しましょう。」

「は?」

そう言うとローヴェルトと移動速度強化の魔法を自身にかけ、タクマを横切って行った。

「あ、待て!どこ行きやがる!」

タクマも後を追うのだった。


 断罪聖女の放つ器具の幻影を縦横無尽に切り裂くネクト。

どうにか近づこうとするも攻撃の頻度が高すぎて近づけないでいた。

(魔力放出が高くなってる!このままじゃ魔力が底をついて最悪命を落とす!くそっ!)

攻撃をやめても向こうから追撃してくる。

攻撃をしていない隙が無かった。

早く攻撃をやめさせない彼女の魔力が底をつき命が危ない。

「魔槍解放・アルファ!」

防御特化の槍に変え真っ直ぐに突っ込む。

聖女からの攻撃もアルファの前ではビクともせず、懐に入ることが出来た。

「ちょっと痛いぞ?」

ネクトは槍を聖女の腹元に構える。

「限定解放・オメガ!」

攻撃力の強いオメガの威力を一瞬だけ解放し、聖女の腹部に打ち込んだ。

「かはっ⁉」

衝撃を受けた聖女はよろけ攻撃が止む。

「今だ、ロキ!」

ネクトは指輪を投げロキを解放、再び鎖を口から放ち聖女の動きを止めた。

「ロキ!そのまま押さえてろよ!」

聖女の頭を掴むネクト。

「アンチ・ショック!」

柔い衝撃波が頭に炸裂し、聖女は膝をついた。

ネクトの衝撃波で気絶させることに成功した。

「何とか沈めることは出来たが・・・。」

感情を全て奪われてしまった聖女。

目を覚ましたとしても、もう彼女は感情のないただの抜け殻。

「・・・くそ!」

しばらく聖女を休ませることにした。遠くではリヴたちが戦ってるのが見えている。

「そっちはしばらく任せるぞ。」


 五つ首のドラゴンがラルを突き飛ばす。

(うわぁ!)

「ラル!」

リヴも隙をつかれ強烈な一撃を食らってしまい地面に倒れる。

「くっ・・・、やっぱり五体相手してるみたいでキツイ!」

「ヴォォォォォォォ‼」

重苦しい咆哮が響き渡る。

すると五つ首の頭の上にローヴェルトが飛び乗った。

「あ!あのジジィ!」

(お姉ちゃん言葉悪いよ・・・。)

頭の上に乗ったローヴェルトはリヴたちを見下ろす。

「少しの間だけ待っていただけますかな?お嬢様方。」

そう言い魔法陣を展開すると五つ首から突然黒い靄みたいなのが溢れ出てきた。

「うわ⁉何ですか⁉」

すると何かを感じ取ったのかリヴがリーシャとラルを捕まえ上空へと非難する。

「⁉」

後方からローヴェルトを追ってきたタクマも異変を感じ炎の竜化となって飛翔した。

五つ首から溢れる黒い靄は庭園の木に触れると木はあっという間に枯れ果ててしまった。

「あんなのに触れてたら一発アウトね・・・。」

黒い霧は徐々に五つ首のドラゴンに戻っていく。

「さぁ、第二ステージです。」

ローヴェルトはズブズブと五つ首に沈んでいった。

すると五つ首は禍々しい風格から更に禍々しくなり、ドラゴンを通り越したもはやただの異形の怪物と化したのだ。

真ん中の首の頭部には五つ首と一体化したローヴェルトがいる。

しかも若干若返っていた。

「フハハハハ‼これが神に与えられた力だ!選ばれし力だ!私こそが偉大なのだ!」

魔獣と一体になったことで思考が乱れたのか狂気の声を上げるローヴェルト。

もはや人ではなくなってしまったようだ。

「文字通りの化け物ね。」

「なんとでも言いなさい。魔獣と一体となった私に敵はなし!」

五つ首が咆哮と同時に襲い掛かってきた。

空中にいたリヴ達は避けるが五本の首が同時に掛かってきたため避けるのに精一杯だ。

そこにタクマが後方から一閃を繰り出し首の一つを切り落とした。

「タクマさん!」

「主様!」

「二人とも大丈夫、―ってそのドラゴン誰⁉」

当然ながらタクマもラルに驚いていた。

(どうもこんにちは。いや今の時間帯ならこんばんは?ラルだよ!)

「ラル⁉お前が⁉何つーか、デカくなったな・・・。」

「文字通りにね・・・。」

しかし、そんなことを話している場合ではない。

タクマが切った五つ首の首が再生し、何と元に戻ったのだ。

「この程度の攻撃、私には聞きませんね。」

「マジかよ・・・。」

「さぁ、今こそ悪を滅する時!この私直々に裁きを下しましょう!」

「ヴォォォォォォォ‼」

五つ首の悍ましい咆哮が身体の芯まで響く。

「見た目的に悪はどっちよ・・・!」


 街の端くれ。

そこには二頭のドラゴンが合流していた。

「戻ったか。ウィンロス。」

「おうよ!反対側の防音結界も完璧やで。」

グッと翼を立てる。

「これで街の人間に教会の騒ぎは聞こえんな。」

バハムートの側には先ほど救出したエルフ達が集まっていた。

その中の一人、エルフの女性が話しかけてきた。

「あ、あの!本当にありがとうございます!この御恩は一生忘れません!」

「そんなんええがな。オレ達は偉い人から頼まれただけや。アンタらが無事ならこれ以上ない報酬やで。」

ウィンロスの心の広さに感激しているエルフ達。

皆が揃ってウィンロスを拝んだ。

するとエルフの女性は少し思詰めた顔で何かを言おうとしている。

「・・・我らに伝えたいことがあるなら遠慮なく申せ。」

「は、はい・・・。実は・・・。」

女性エルフは別れ際、タクマに残した言葉を発した。

「神龍?」

「はい。私達を捕らえた人たちが話していたのを耳にしたんです。エルフは魔力が高いから神龍の復活に使えるとか・・・。」

バハムート達は女性の言葉に深く耳を傾けたのだった。

そして話を終えると、

「・・・やっぱり絡んでやがったか。」

「あぁ、これは早急にタクマに話さなくてはな・・・。」

新たな事実を知った二頭は鋭い表情になっていた。


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