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『第七十六章 まだ終わらぬ問題』

リーシャの『死滅の光神(ミスティルテイン)』に飲まれたウルノードに乗り移った天使。

「ぐあぁぁぁぁぁ‼」

断末魔を上げウルノードの身体から天使が飛び出してきた。

「分離できた⁉」

ばたりとウルノードは倒れ、出てきた天使は胸を押さえて苦しんでいた。

「何だ・・・今の光は⁉神格がダメージを受けているだと⁉」

バハムートがリーシャの杖に残留する光を鑑定する。

「なるほど。娘の杖から溢れる魔力は神の類に特攻した、いわゆる()()()()()だ。」

「神殺し⁉リーシャ、お前凄いな!」

「おぉ・・・。」

自分の力が未だに信じられず、杖を握りしめて震えるリーシャ。

彼女の技、『死滅の光神(ミスティルテイン)』は神に対してとてつもない効果を発揮する特別な技のようだ。

思わぬ切り札ができたタクマ達はウルノードの身体から出てきた天使に向き直る。

「とりあえず、奴をぶっ倒すぞ!」

「うむ。」

「はい!」

天使はリーシャの技を受けて既に苦しそうだ。

(くそ、こんなはずでは・・・!神に特攻した力を持っているなんて予想外だ!このまま戦ったら私の命が危ない。ここは一度引き下がるか。)

天使は翼を開き、飛び上がる。

「逃げる気か!」

「想定外の事態だ。ここは大人しく身を引くとしよう。だが次に会う時は貴方達を神の裁きでお前たちをチリと化してやる!それまで首を洗って待っておくことだな!」

そう言い残し、窓から離脱しようとしたその時、

「逃がすと思うか?元凶さんよう?」

窓の上に誰かがいたのだ。

次の瞬間、天使の身体をいかついデザインの剣が貫いた。

「っ⁉」

「がはっ⁉だ、誰だ・・・貴様・・・!」

「通りすがりの旅騎士ってか?」

剣を引き抜き再度天使を切りつけ、天使を真っ二つに切り裂いたのだった。

「私が・・・人間、ごと・・・き、に・・・。」

天使はそのままチリとなって消滅した。

「ふぅ~、間に合・・・てはないよな。こんな状況になってる時点じゃ。」

剣を背中に仕舞う赤毛の騎士。

かなり若い青年だ。

青年は窓枠から飛び降りタクマ達の前にやってくる。

「え~っと、君がタクマって言う冒険者かな?」

「あ?あぁ、そうだが・・・。」

「初めまして!君の事はロイル先輩とアルセラちゃんから聞いてるぜ。」

「え⁉」

顔見知りの名前を出され、驚くタクマだった。


 それから数日、事の発端が天使の仕業であることを王女に説明。

国の混乱を防ぐため彼女とその側近にだけ話した。

王女は兄である王子の愚かな行いに呆れ果てて言葉も出ないでいた。

ご愁傷様です。

エルフの奴隷密売に加担していた騎士団長や最高権力者などの人物はそのことが公になり身分を取り上げ、地下鉱山で永久的に奴隷として働かせられるという。

売り飛ばしていた奴隷に自らなるとは何とも皮肉な運命だ。

そして天使に媚びを売り自国を揺るがす事件を起こしたウルノードは王位継承の資格を剥奪。

一から再教育させる方針を立てたとの事だ。

よって、次期国王はオリヴェイラに決定した。

エルフの人達は歓声を上げて喜びこれで王国内の他種族とのわだかまりも無くなるだろう。

だが忘れてはいけない。

まだエルフ族の救出依頼は完遂していないのだから。

次なる目的はイフルに教えてもらった三か所の内の一つ、東街セクレトだ。


 「その街には確か、奴等が滞在していたっけ?」

エルフの大森林、イフルの自宅で出された料理を食べてる赤毛の騎士。

「・・・何で平然と飯食ってんだ。」

あの後、何故か一緒についてきた騎士の青年。

戻ってきた彼らに残っていたメンバーは反応に困っていた。

一応タクマが経緯を説明したが、彼が何者なのか未だに分かっていなかった。

「リーシャ。あの赤毛の男誰なの?」

「分かりません。助けてくれたのは事実ですし、悪い人ではないと思います。」

女子二人は耳打ちで話す。

「・・・あまり彼ら以外の人間はこの街に入れたくないのだが・・・。」

イフルも少し眉を歪めながら料理を出す。

「おっと、それはすまない。俺は彼等に用があるだけだから少し話をしたらすぐお暇させてもらうよ。」

「俺達に用事?」

料理を飲み込みタクマの前に立つ青年。

「紹介が遅れたな。俺はネオン・ギルガルダー!アンクセラム近衛騎士団三番隊隊長であり、ワールド騎士団副隊長を任されている者だ!よろしく!」

「「「えーーーーーー⁉」」」

一同は一斉に驚きの声を上げた。

「アンクセラムの近衛騎士団、三番隊の隊長⁉」

「どおりでロイルさんやアルセラさんの事を知っている訳ですよ・・・。」

懐かしい名前が出て唖然とする。

「ワールド騎士団、聞いたことがあるわ。一つの国に留まらず、世界を放浪して行く先々で民の安寧を守る世界最高組織、それがワールド騎士団だって。」

イフルが言うようにかなり有名に組織に所属しているみたいだ。

「にしても二つも所属しててアンクセラムの方は大丈夫なの?」

リヴが質問する。

「故郷の方はロイル先輩とアルセラちゃんがいれば十分な程の戦力があるんだよ。だから大団長含め、俺も国を離れてても安心できるって訳。」

確かにロイルもアルセラもかなりの実力を持っていた。

あの二人なら問題ないと容易に納得できる。

「お主が何者なのかは分かった。しかし、さっき言っていた東街セクレトに滞在している奴等とは何だ?」

バハムートが話を戻した。

「聖天新教会だ。」

「‼」

聖天新教会。

ワールド騎士団と同じく、一か所に留まることはなく世界を回る新しくできた教団である。

世間では民に祝福を与えたり、悪人には容赦ない裁きを下す神聖な教団として知られている。

しかし、タクマ達含め一部の者にはその教団は裏でエルフの奴隷密売など、悪事に手を染めていた事実を知ってしまっていた。

「聖天新教会がそんなことを・・・。」

事実を知ったネオンは驚愕する。

すると突然立ち上がった。

「俺はこの事を大団長に伝えてくる!後で王宮に来てくれ!」

そう言い残しネオンは家を飛び出し、街を後にした。

「・・・行動力がデケェな。」

「あれは一か所に留まるタイプじゃないわね。」

「・・・・・。」

「タクマさん?」

タクマだけは何やら考え込んでいた。

(聖天新教会・・・。名前からして神に精通している可能性が高いな。新生創造神の右翼や左翼のような組織なのか?いや、他の奴らが言うには相当大きな組織か。)

ましてや民からの信頼も得ている。

偽りの信頼だが。

(とりあえず、一度どんなものかこの目で確かめた方が良さそうだ。)

「皆!王宮に寄った後、すぐに出発するぞ!」


 同時刻、東街セクレト。

その中心に建つとてつもなく大きな教会。

中では聖天新教会の上層部が円形のテーブルを前に座り、何やら話し合っていた。

「ウルノード様がしくじった模様です。何でも天使様のお力をお借りしていたようですが。」

「天使様のお力を利用するとは、王子は身の程知らずですな。」

「当然の報いでしょう。」

テーブルを囲むように六人はローブを羽織り、フードで顔を隠す老人が口々に言葉を交わしていた。

すると一人の老人が語りだす。

「沈まれ皆の衆。我ら聖天新教会は聖なる組織。人を罵倒する発言は決して発するな。我らは神の身使い。神の導きを我らが代行する者だ。」

そうして六人は解散した。

先ほど話していた老人に若い使徒がやってきた。

「司祭様。先ほど自警団の方が再度悪人を捕縛、裁きを申し出てきました。」

「やれやれ、かなりの頻度で訪れますね。まぁ良いでしょう。断罪の間にお連れしなさい。そして彼女にも連絡を。()()()()()のお時間です。」


 翌日、タクマ達はエリエント王宮にやってきた。

「タクマ様~~~‼」

「わっぷ⁉」

国王となったオリヴェイラがタクマに抱き着いてきた。

「こらー!主様にくっつくなー‼」

リヴが王女を引き剥がそうとする。

「国王になっても変わらへんな。この嬢ちゃん。」

「ウィンロスさん。仮にも彼女は国王ですよ。最低限の敬意は持ってくださいね?」

「ほーい。」

オリヴェイラは侍女に引き剥がされ、そのまま王の間に通される。

そこにはネオンも同室しており、何やら張りつめたような空気を漂わせていた。

「おほん、先ほどは失礼しました。まだ国王と言う自覚が薄い物で・・・。」

「別にいいよ。俺達は友達なんだし。」

タクマから友達という言葉を初めて聞き、オリヴェイラは嬉しさのあまり涙目になる。

「感激に浸ってるとこ悪いが話を始めてくれ。」

バハムートが割って出てくれたおかげでようやく本題に入れる。

「三か所に捕らわれているであろうエルフ族の救出、ですね?」

「あぁ、イフルは今回同行は出来ないが、詳しい場所を教えてもらった。東街セクレト。西街レーロード。そして山脈地帯の巨神山岳。この三つだ。」

「東街と西街は分かりますが、巨神山岳?あそこはかつて人が住んでいたとは聞きますけど、現在は誰も住んでいない廃墟だと思うのですが?」

「我らも詳しい事は分からん。だが隠れ住むには持って来いの場所だと思うぞ?」

「確かに・・・。ですが如何せん距離がありますね。順で言うと先に東と西の街から向かった方が良さそうです。」

地図を机いっぱいに広げ意見を言い合う面々。

「東街セクレトには俺達が向かおうと思ってるんだが良いか?」

「構いませんが、西はどう成されます?流石に我が軍を動かすほど、私はまだ権限をお持ちでないのですが?」

「ん~、まだ伝えてないけど、ネクトに行ってもらおうかと考えていたんだが・・・。」

すると話を聞いていたネオンが割って入った。

「そのことなんだけどさ。」

「ん?」

「実はそろそろあの人たちが着くころで・・・。」

すると言い終える間もなく扉が開き、一人の長い銀髪の男性が入ってきた。

「おや、話の邪魔をしてしまったかな?」

爽やかイケメンの男性が笑顔で言う。

「いや、どちら様で⁉」

ウィンロスがツッコんでいると、

「やっと来ましたか!ウィークス大団長!」

ネオンが大きく手を振っていた。

男性はオリヴェイラの前に跪く。

「お初にお目にかかります。オリヴェイラ国王陛下。」

初対面のイケメンに挨拶され慌てふためくオリヴェイラ。

「あ、え、えっと・・・⁉」

「王女様。落ち着いて。」

侍女に窘められ深呼吸をし、挨拶を返す。

「コホン。お初にお目にかかります。この度、王に就任いたしました。オリヴェイラ・エリエントと申します。以後、お見知りおきを。」

挨拶を済ませ、男性は今度はタクマの前にやってくる。

「あの、何か?」

マジマジとタクマを見る男性。

後ろにいるバハムート達にも目を通し、フッと笑う。

「君が我が母国、アンクセラムを救ってくれた英雄、タクマで合ってるかな?」

英雄呼ばれは嫌なタクマ。

少し顔を引きつらせたがしっかり返答する。

「あぁ、俺がタクマで間違いないが・・・。アンタは?」

「自己正気が遅れた。私はアンクセラム近衛騎士団一番隊隊長兼、ワールド騎士団大団長、ウィークス・シフェリーヌスだ。よろしく。」

「・・・ん?シフェリーヌス?」

聞き覚えのある苗字に首を傾げるタクマとドラゴンたち。

「あぁ、君達が母国で会ったアルセラという少女がいただろう。彼女は私の妹なんだ。」

「・・・・・。」

「「「えーーーーーーー⁉」」」

驚愕の事実に驚く一同だった。


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