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『第七十五章 真相』

タクマに放たれた光の魔法攻撃。

城全体を揺るがすほどの衝撃が鳴る。

「流石は七天神の一人、レスト様の加護を授かったシスター。素晴らしい魔法でしたよ。」

「あ、ありがとうございます・・・。」

しかし、シスターの様子が少しおかしかった。

(人々を魔の脅威から守るために授かった加護が、このような使用法でよろしいんでしょうか?レスト様。私の行いは果たして正しいんでしょうか?)

王子ウルノードからの命令でこの場にいるがシスター自身に戦闘の意志はない。

命令で仕方なく従っているだけだ。

そして彼女の放った魔法で煙が立ちこむ方を見ると一人の人影が立っていた。

「・・・え⁉」

煙が晴れると先ほど光の柱が直撃したはずのタクマが多少の傷で立っていたのだ。

「そんな⁉神から授かった魔法が効いていない⁉」

驚くのも無理はない。

その魔法はあらゆるものもチリと化す程の破壊力。

それがタクマに全く聞いていなかったからだ。

「ふぅ~、危ねぇ。にしてもバハムートも防壁どんだけ固いんだよ。」

寸前でバハムートの魔法壁をコピーして防いだタクマ。

埃を掃い前に出る。

「さてと・・・。」

タクマの目が赤く変色すると凄まじい重圧が放たれる。

「~~~~っ⁉」

重圧に当てられたシスターは目を白くして気絶してしまった。

だが、ウルノードはその重圧を受けても気絶せず、平然としていた。

「『竜王の威圧』か。伝説の竜王しか使えないスキルを。やはりあの銀竜は竜王だったか。」

(バハムートの威圧を受けても意識を保てるとは。人間には無理なはずだ。)

ウルノードに対しての不審がより一層強まる。

「居合・風裂傷‼」

風の斬撃を王子に放つ。

瓦礫が崩れ落ち、玉座が砕ける。

「!」

しかし、玉座の位置には防壁が張られており、無傷のウルノードが立っていた。

「流石の威力だ。」

パチパチと手を叩きながら歩み出てきた。

先ほどの一撃なら大抵の魔法壁も砕ける威力だったがそれでも無傷。

タクマの頭に一つの可能性がよぎる。

「お前・・・、誰だ?」

「誰とは?」

「お前の張った防壁に見覚えがある。あの女神が使ってた防壁にそっくりだ。」

ウルノードが使った魔法壁は女神レーネが使っていた魔法壁に酷似していたのだ。

あれは()()()()()()()()使()()()()()()のはず。

それを人間のウルノード王子が扱えるのはどう考えてもおかしい。

「何者だ?」

鋭い目つきで睨むタクマ。

するとウルノードは静かに笑い出した。

「やはり神を倒したと言うのは本当のようだね。そこまで察しがついているとは!」

歩み出てくるウルノードの表情が変わる。

「隠す必要もないし、君には特別に見せてあげよう。」

そういうとウルノードの背後から白い靄が出てきたと思ったら人の形へと変化する。

そして出てきたのは、

「天使!」

「そう。私は天使だ。この人間と契約をして望みを叶えようとしている最中さ。」

現れたのは男性の天使。

事の発端はこの天使の仕業だったという訳だ。

(天使が絡んでいやがったとは。ウルノード王子は気を失ってる状態だし、全部あの天使が仕向けてたんだな。)

正体を知ったタクマは天使に問いかける。

「俺を始末しに来たのか?」

「いやいや。私は半年前からここにいる。君の事を知ったのはつい最近さ。今の天界がどうなっているのかそこまで把握してないが、神を葬った人間がいると言う報告だけは受けたね。」

(なるほど、あくまで俺はついでって訳か。)

だが相手が天使と分かれば加減はしない。

タクマは炎の斬撃を天使目掛けて放った。

「おっと!」

天使はウルノードの身体に戻ってかわし、再び彼の身体を使い始める。

「容赦ないね。流石神を葬った人間。」

「そいつはどうも!」

切り掛かるタクマをバリアで受け止め、側に落ちてた剣を拾って応戦し始めた。

(腐ってもあの身体は王女の身内。出来るだけ負傷させたくない。なら!)

タクマは『竜王の威圧』と『分離』のスキルをコピーし、ウルノードに放った。

しかし、

「分離しない⁉」

天使をウルノードから引き剥がそうとしたが出来なかった。

「この人間は王位を欲しさに天使に契約を求めるほどの図太い精神の持ち主だ!私との契約は根元の奥深くまで繋がっているのですよ!」

まずい。

ウルノードの身体を傷つけず天使を倒すのは雲をつかむように難しい。

どうにか身体から天使を追い出す方法はないか。

戦いながら考えるタクマだった。


 「おらぁぁぁぁ‼」

大剣を振り下ろし訓練場の地面を叩き割る。

ネクトは後ろに飛び長刀を振り回す。

「我流・突破‼」

鋭い突きの風圧を打ち出すが団長の大剣であっけなく弾かれる。

「見た事ねぇ技ばかりだ。お前面白いな!」

「じゃぁもっと面白い物見せてやるよ。」

そう言いネクトは長刀に魔力を込める。

「魔槍解放・アルファ‼」

長刀が解放されると、青いオーラを纏った盾の付いた槍に変化した。

「さぁ、かかって来いよ。」

指をまげて挑発するネクト。

団長はまんまと引っかかる。

「面白れぇ!いくぜぇ‼」

強靭な一撃が繰り出される。

だがネクトの盾の付いた槍はビクともしなかった。

「何⁉」

「アルファは防御特化の形態だ。生半可な威力じゃ効かねぇ!」

大剣をはじき返し腹部に鋭い突きを食らわせる。

「ぐほぉ⁉」

「我流・防牙突(ぼうがとつ)‼」

追撃で技を繰り出され、団長は後方へ吹っ飛ばされた。

「陰浪者、なめんじゃねぇよ。」


 一方、暗殺者同士であり師弟関係の従者たち。

互いに人間離れした身のこなしで駆け回り、気が付けば屋根の上にまで来ていた。

「フッ!」

「っ!」

暗殺者の放った吹き矢がアサシンの足に刺さり、膝をついてしまう。

「しびれ針!」

「どこからどんな攻撃が来るか予測しろと教えたが、まだまだひよっこだったか。」

呆れたため息をつき、短剣を突き立てる。

「終わりだ!」

しびれて動けないアサシンに止めを刺そうと迫る暗殺者。

だがアサシンはもう片方の足で避け、屋根から転げ落ちいった。

「何を考えている?」

不審に思い、下を覗き込むと屋根の縁に鎖の付いたクナイが突き刺さっていた。

「っ⁉」

鎖に引かれアサシンが駆け上がり下から暗殺者の顎に蹴りを食らわした。

「ぐはっ⁉」

そのまま屋根に着地する。

「ハァ・・・ハァ・・・。」

「まさか、落ちたと見せかけ奇襲を仕掛けるとは。しかもこれは私の戦法・・・。」

「先生の技術を誰よりも近くで見てきましたから。」

「ふ、ふふふ!」

倒れる暗殺者は密かに笑う。

「ひよっこかと思ってたら、ここまで実力を身に着けていたとは。成長した、な・・・。」

そう言って暗殺者はノックアウトしたのだった。

「全部、先生の教えの賜物です。」


 二人の決着がついた頃、タクマと天使の戦闘が繰り広げられていた。

未だにウルノードから天使を引き剝がす方法を考え中のタクマ。

「殴って飛び出させる?いやいや、それじゃ王子までダメージ受けるな。何か有用なスキルはないか?」

「一人ぶつぶつとつぶやきながらとは、果たしてその余裕いつまで続くかな?」

天使が一方的に攻めているが天使よりもっとランクの上の神と戦っているタクマにとってまだ軽い相手だった。

「ハァァァァ!」

息もつかせぬ連撃だがタクマも余裕であしらっている。

「一度バハムートを呼び出して相談してみるか。」

天使を弾き飛ばしたタクマは後方に下がり、魔法陣を展開する。

「来い!バハムート!」

魔法陣からバハムートが召喚された。

「何用だ、タクマ?こっちは王女のお守で忙しかったのだが?」

バハムート達にはエルフの大森林で王女の護衛を頼んでいた。

「すまん、ちょっと聞きたいことがあって・・・、って、リーシャ⁉」

何とバハムートの尻尾にリーシャがしがみついていた。

「何してんだお前⁉」

「いえ、その・・・、先に戻って皆さんと合流した後、転んだ拍子にバハムートさんの尻尾を掴んでしまって、そしたら突然ここに・・・。」

「我と共に召喚されたのか。これまた珍妙な。」

ゆっくり尻尾を降ろし、リーシャを降ろす。

「やはり貴方が竜王でしたか。噂通りの風格ですね。」

ウルノード姿の天使が口を挟む。

「む?王子から別の存在を感じるぞ?」

「あぁ、実はな・・・。」

タクマはこれまでの経緯を二人に話した。

「天使に乗っ取られていたのか。しかし、欲望を満たさんがために天使に契約を持ち込むとは。他者の力で上に立って何が楽しいのだ?」

王の立場であるバハムートの言葉に重みがあった。

「王女様になんていえばいいのやら・・・。」

リーシャもウルノードの行為に呆れていた。

「で、王子の身体からアイツを引き剥がしたいんだ。協力してくれるか?」

「無論だ。そのために我を喚んだのだろう?」

「おまけですけど、私もやります!」

二人もやる気十分だ。

「行くぞ!」

一斉に天使に掛かる三人。

まずは相手の動きを止めなくては。

「フリージング・ゲイザー‼」

リヴの氷魔法をコピーし、放つ。

だがあっさりとかわされてしまう。

「そう簡単には捕まるつもりはない!」

「ならば叩き落す。」

背後に周ったバハムートの翼で地面に叩き落される天使。

「今だ!フリージング・ゲイザー‼」

天使の足元を凍らせ、今度こそ動きを止めることに成功した。

「この程度・・・!」

「リーシャ!頼む!」

前方からリーシャが距離を詰め、天使の腹部に杖を突き立てる。

「至近距離!エア・ショット‼」

ゼロ距離から放たれる風の魔法。

凄まじい風圧が天使を襲うがそれでもウルノードから引きはがすことは出来ない。

「残念♪」

剣でリーシャを弾き飛ばす。

「うわぁ!」

「リーシャ!」

「先も言った通り、私は根深くこの人間と繋がっている。引き剥がすことは不可能・・・、っ⁉」

足元の氷から抜け出そうとしたが氷は微動だにせず、天使の足を掴んでいた。

「砕けない?この程度の氷が、天使の私でも抜けられない⁉」

「当たり前だ。その氷はあの海の帝王の氷だぞ?しかもあやつは訓練を重ね、より強固な氷へと進化させている。我らドラゴンも日々成長しているという事だ。」

どうやらリヴはこの先の戦いのために密かに特訓していたようだ。

そのおかげで天使を確実に拘束できている。

「下界の氷ごときにこの私が・・・⁉」

するとリーシャの声が突然聞こえてきた。

「タクマさん!バハムートさん!離れてください!」

リーシャの構える杖に光が渦巻いている。

以前見せたリーシャの必殺技だ。

その光を見た天使は背筋が凍るような感覚に見舞われる。

(な、何だ⁉あの光を見ていると、とてつもない恐怖心が浮き出てくる⁉アレはまずい!)

必死の表情で逃げようとするが凍らされた足元が動くことはなかった。

「ライト版!『死滅の光神(ミスティルテイン)』‼」

杖は光の槍となって撃ち出され天使を飲み込んだのだった。


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