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『第七十章 囚われの白少女』

謎のドラゴンテイマー、ネクトにメルティナを連れ去られてしまったタクマ達。

戦闘のあった場所が恐ろしく騒がしかった。

「離せ!今すぐにでもメルティナを取り返してやる‼」

「だから落ち着けっちゅうてるやろ‼」

暴走気味のタクマを必死に押さえるウィンロス。

「うぉぉぉぉぉ‼」

「アカン!止まらへん!ちょっ、誰かヘルプ!」

バハムートと二人掛かりでようやっと落ち着きを取り戻したタクマ。

特にウィンロスの疲労困憊度が凄まじかった。

「落ち着きましたか?」

「すまん・・・。」

一同は状況を整理する。

「まず、あの人間。ただ者じゃないわ。」

「見ればわかる。俺と同じテイマーでドラゴンを従魔にしていた。」

「それも二体・・・。」

自分たち以外にドラゴンテイマーがいたことに戸惑うタクマとリーシャ。

「ドラゴンの従魔なんてかなり希少で近辺なら噂が立ってるはずなのに、一切そんな話を聞かなかったわ。」

「潜りかもしれんな。」

バハムートが割って入った。

「潜り?」

「自身の事を世間に知られぬよう影の世界で生きる陰浪者をそう呼ぶことがある。恐らくあの少年はその陰浪者であろうな。」

ドラゴンを二頭連れているにもかかわらず騒ぎになっていないためバハムートの読みで正解だろう。

「あの人間、実力はあるのに何でコソコソしているのかしら?」

「さぁな。だが強さは本物だった。それに・・・。」

「せやねん。あの黒いドラゴンもめっぽう強かったわ。あんなんが今まで噂の一つにもなってへんのがおかしい話やわ。」

ぐで~っと倒れながら言うウィンロス。

「角も折れてたし、いかにも歴戦って感じだったわ。」

皆が話し合ってる中、バハムートが更に割り込む。

「あの少年と黒いドラゴンもそうだが、一番厄介なのは魔械竜だ。」

「メルティナを攫った機械仕掛けのドラゴンか。」

「うむ。そもそも魔械竜という大昔に人工的に生み出された種族なぞ、とうに絶滅したと思っていたが・・・。」

そんな謎のドラゴンを連れていたとなると相手の主は相当得体の知れない奴かもしれない。

他にも何か隠しているかもしれないため迂闊に攻め入っても足元を救われる可能性もあった。

だったら彼らの考えは一つ。

「一度、姫さんの所に戻るぞ。」


 ・・・白少女がゆっくりと目を覚ます。

「あれ?ここは・・・?」

「気づいたか?」

目線の先にメルティナを攫った張本人ネクトが座っている。

「っ‼」

メルティナがバッと下がろうとすると背中に何かが当たった。

振り返ると背後に黒いドラゴンがいた。

「ひっ⁉」

「安心しろ。お前に危害を加える気はない。」

辺りを見回すと黒いドラゴンと魔械竜も大人しく腰を降ろしている。

「わ、私をどうする気なの・・・?」

恐怖で震えるメルティナにネクトが答える。

「お前にはタクマという男を釣るための餌になってもらう。俺の雇い主が奴の力を欲しているからな。」

「・・・雇い主?」

「エリエントの第一王子、ウルノード王子だ。俺はその王子に雇われている陰浪者だ。」

メルティナは警戒しながらもネクトの話を聞いた。

「タクマを捕まえるために、私を攫ったってこと?その王子様の命令で。」

「そういうことだ。」

メルティナはぎゅっと手を握る。

(やっぱり私は・・・あの人たちの足手纏いだ。何の力もない、ただいるだけの存在・・・。)

共に旅をしてきたから分かる。

自分と彼らとでは立っている場所が違う事に。

自分のせいで彼らに迷惑をかけてしまったと思っているメルティナは自身の無力を悔しく思い、涙が出てしまう。

(私は・・・私は・・・!)

その時、彼女に頭痛が走った。

「あぐっ⁉」

頭を抱えその場にしゃがみこむ。

彼女の脳内に大勢の天使のビジョンが断片的に映る。

「い、痛い・・・頭が、割れる・・・!」

するとメルティナから魔力のオーラが漏れ始める。

「っ⁉」

ネクトも何が起きたのか分からず席を立つ。

次第に漏れる魔力は徐々に落ち着いていき、メルティナの頭痛も治まっていった。

「ハァ・・・ハァ・・・。」

(今の感情、どこか覚えが・・・?)

頭痛が落ち着いたメルティナの頭を黒いドラゴンが優しく撫でた。

「え?」

思いがけない行動にメルティナは驚く。

「そいつ、クロスは強さにこだわる脳筋だが子供にはめっぽう優しいんだ。」

角が折れていて強面のドラゴンだが子供には優しいという何とも可愛らしい一面を持っているようだ。

「そ、そうなんだ・・・。ありがとう・・・。」

クロスはニッコリと笑った。すると魔械竜のロキが何かを感じ取る。

「・・・来たか。」


 エリエント王国の王宮前にやってきたタクマ達一同。

王女のオリヴェイラに貰った条約を門番に見せていると、

「タクマ様!」

オリヴェイラが走ってきた。

「姫さん!実は頼みが・・・!」

「申したいことは聞き及んでいます。取り合えず中庭へ。」

中庭に来た一同はオリヴェイラに事情を話す。

「・・・やはりそうでしたか。」

「知ってたのか?」

「はい。現在私の密偵が探ってくれています。メルティナ様は今のところ無事との事です。」

「そうか。良かった。」

タクマ達は胸を撫で下ろす。

「ところで、そちらのフードの方は?」

「お初にお目にかかります。オリヴェイラ様。」

イフルはフードをとった。

「エルフ族のイフルと申します。この度、エルフの救助要請をしていただいたこと、深く感謝します。」

礼儀正しく礼を言う。

「そう、貴女が。エルフたちが無事でよかったわ。」

二人の話を後にタクマはメルティナやドラゴンのテイマーの居所を問う。

「残念ながら、城にいることは確かなのですが、まだ居場所が分かっておりません。」

「そうか。」

するとそこへ第一王子ウルノードの執事がタクマ達の元へやってきた。

「タクマ様、ご縁談中申し訳ありませんが王子が貴方様とお会いしたいと申せ使っております。」

こんな時にと思う一同だが偉い人の申し立てなので無下にも出来ず、タクマ達は執事に案内されるまま中庭を後にした。

「・・・アサシン。」

「はっ・・・!」

一人残ったオリヴェイラの背後にあの暗殺者が音もなく現れる。

「状況は?」

「もう少しで全貌が掴めるかと。」

「引き続きで悪いんだけど、タクマ様に危害が加わりそうになったら、お願い。」

「御意。」

再び姿を消す暗殺者。

「私も動かないと・・・!」


 王子の部屋へと一人通されたタクマ。

他の皆は外で待機中である。

「やぁ、よく来てくれたタクマ。」

席から立つウルノード王子。

彼の浮かべる笑みはどこか偽りを感じさせていた。

「・・・悪いが話なら手短に頼む。俺はこれから用事がある。」

「あぁ、手短に済ませるとも。タクマ。私の傘下に入らないか?」

「・・・あ?」

突然の要望に一度困惑するがウルノードは更に答える。

「話は聞いている。君の仲間の少女が連れ去れたんだろう?」

タクマの目つきが鋭くなる。

「何故知っているって顔だね。実は私の使いから情報を受けてね。君の仲間がドラゴンに連れ去られたって話を聞いた。私は君を気に入っている。だから力になりたいんだ。」

「どういう風にだ?」

「実は、彼女の居場所に心当たりがあるんだ。」

タクマは一歩出てウルノードに問いただす。

「何っ⁉どこだ、メルティナはどこだ!」

「そう焦らない。場所は・・・。」


 部屋の外で待たされるバハムート達。

そこに部屋からタクマが出てきた。

「タクマさん、王子様は何と?」

「・・・メルティナの居場所が分かった。」

「え⁉」

全員がタクマに振り替える。

タクマはウルノードから聞いた場所を皆に話した。

「そこにメルティナがいるのね。」

「てことはあのテイマーとドラゴンもおるかもしれへんな。」

「あぁ、けどそこはエルフの森の奥深くだ。イフルに案内を頼もう。」

「行きましょう!タクマさん!」

意気込む彼らの傍でバハムートだけは何やら意味深な表情で考え込んでいた。

(・・・王子がメルティナの場所を教える理由がいまいち理解できん。何故わざわざ我らを呼び出してまで教えるのだ?・・・何か引っかかる。)

だが今はメルティナが心配だ。

ウルノードに対する不信は一旦後回しにし、メルティナ救出に向かう一同だった。

「・・・さぁ、君の出番だよ。ネクト。」


 イフルに事情を説明し、メルティナの居場所まで道案内を頼んだタクマ。

イフルも承諾してくれて一同はエルフの大森林を越え、岩山へとたどり着いた。

「この辺りにメルティナさんが・・・。」

辺りを見回してもごつごつした岩柱などが視界を遮る。

「ウィンロス。『空振動』借りるぞ。」

「あいよ。」

タクマはウィンロスから『空振動』のスキルをコピーし、辺りを探る。

すると少し離れた所に三つの反応を感じ取った。

「こっちだ!」

足場の悪い岩道を登っていくと、クレーターのように窪んだ地形に出る。

そしてその中心に彼らはいた。

「いたぞ。奴らだ。」

タクマも彼らを目で捉えると同時に岩の柱を伝って猛スピードで飛んでいき、彼等の目の前に降り立つ。

「よう。また会ったな。」

「・・・・・。」

タクマとネクト。

二人のドラゴンテイマーが再び相まみえたのだった。


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