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『第六十九章 ドラゴンテイマー襲来』

強大なドラゴンの気配を感じ取ったタクマ達はエルフの街を飛び出し、森の中を疾走していた。

「真っ直ぐこっちに向かってきていやがる。あのまま街に居たら被害が出てた可能性もあったな。」

「ん~、でもなんか変な気配・・・。」

「変?どういう意味だ、リヴ?」

「ドラゴンなのは間違いないけど・・・、近くに人がいる気配がするのよ。」

「何?」

そんな事を話し合いながら巨木の間を走っていると木の上から先行していたエルフのイフルが呼び止めた。

「止まって!」

全員急ブレーキで止まると、前方に人影が見えた。

よく見てみるとタクマと同い年ぐらいの紺色髪の少年で背中に黒いマントを羽織っている。

そして手には長い長刀を持っていた。

少年は目をつむってじっとその場に立ち尽くしている。

「人間や。タクマと同じぐらいやけど、何か近寄りがたいというか・・・?」

(・・・おかしい。先ほどまでのドラゴンの気配がパタリと途絶えた。どこへ消えた?)

バハムートが周りをキョロキョロしていると、

「・・・作戦成功のようだな。」

突然少年がしゃべり始めた。

それと同時にタクマ達の周りが暗くなる。

「上です!」

リーシャの声で一斉に上を向くと、巨大な影が落ちてきたのだ。

「避けろ!」

間一髪避ける一同。

土煙が晴れるとそこには、

「黒い・・・ドラゴン・・・⁉」

二足歩行型で黒い鱗に額に折れた赤いクリスタルの角、それは紛れもないドラゴンそのものだった。

「グルルル・・・。」

「あの気配はこいつだったか!」

タクマは剣を取る。

すると長刀を持った少年が話し出した。

「へぇ~、その剣で神を仕留めたってことか。」

「っ⁉」

タクマ達が神を倒したことを知っていた。

「何者だ!お前は!」

タクマが叫ぶと、

「よそ見するなよ。」

気が付くとタクマの背後に黒いドラゴンが襲い掛かろうとしていた。

(いつの間に⁉)

「タクマさん‼」

リーシャが駆け寄ろうとするとウィンロスとリヴが黒いドラゴンに飛び掛かった。

「させっかー‼」

「させない‼」

二頭のダブル蹴りが炸裂し、黒いドラゴンは後ずさりした。

「本気じゃないとはいえオレらのキックに耐えたで⁉」

「こいつ、強いわ!」

黒いドラゴンは二頭に任せてタクマとバハムートは少年の方に向く。

「リーシャ!メルティナと離れてろ!」

「わ、分かりました!」

メルティナを抱え、イフルのいる木の上に飛び乗った。

「試させてもらうか・・・。」

少年が長刀を振り回し構えた。

タクマも剣を構え互いに戦闘態勢に入る。

「誰だか知らねぇがやるってんなら相手になるぞ!」

「フッ。」

そして二人は激突した。

激しい剣技が飛び交い息をつかせない。

しかし戦いは相手の少年の方が優勢だった。

それもそのはず。

彼の扱う長刀はタクマの剣よりリーチが長く、多少離れていても攻撃が届くのだ。

タクマも何とか付け入るがそれでもリーチの差にはどうしても届かない。

だがタクマにはまだ手札があった。

「バハムート‼」

バハムートが横槍を入れた。

そう、タクマには数があった。

バハムートと連携で行けば押しきれる。

「竜王か。こいつは厄介だ。」

(アイツ、バハムートが竜王だってことも知ってる。一体どこで情報を得たんだ?)

彼の狙いも戦う理由も分からなかった。

一か所はタクマと少年の戦い、そしてもう一か所は黒いドラゴンとウィンロス達の戦いが繰り広げられる。

その様子を大樹の上から見ているイフルとリーシャ、メルティナの三人。

「何者なの?あの人間・・・。」

「しかもドラゴンを連れたテイマーだなんて・・・。」

自分たち以外にドラゴンを連れたテイマーを見たのは初めてだった。

「それにしても妙です。」

「何が?」

「彼、タクマさんと同じテイマーでありながら自身も戦うタイプのようですし、武器の扱い方からして彼はとても強いです。ですが、どこか着手に欠けると言うか・・・加減をしているように見えます。」

バハムートも応戦しているとはいえどこか身を引いている素振りを見せる少年。

リーシャの読み通り、彼は手加減をしていた。

それはウィンロス達と戦っている黒いドラゴンも同じだ。

(何か、別の目的があるんでしょうか・・・?)

リーシャが考え込んでいると、背後からの巨大な影が迫っていることに気づかなかった。

「っ⁉」

突如大樹の上で爆発が起きた。

「何だ⁉」

全員が爆発した方へ振り替える。

大樹の上からリーシャを抱えるイフルが落ちてきた。

「リーシャ!イフル!」

リヴが急いで駆け寄ろうとすると、更に上から巨大な影が降りてきた。

ズシン‼とリーシャ達の背後に土煙を上げる。

そして煙の中から機械仕掛けの翼竜が飛び出してきた。

機械の翼竜はタクマとバハムートの間を猛スピードで駆け抜け、少年の背後に周った。

「もう一体いやがったのか!」

(魔械竜⁉古代テクノロジーで生み出された人造生命体!生き残りがいたのか⁉)

更によく見ると魔械竜の口には気絶したメルティナがくわえられていた。

「メルティナ‼」

少年は長刀を背中に納める。

「よくやった、ロキ。」

少年が口笛を吹くと後方でウィンロスと対峙していた黒いドラゴンが突然跳躍し、魔械竜の隣に降り立つ。

「目的は達した。引き上げるぞ。」

「メルティナを返せーーー‼」

『居合・一閃』の速度で近づき剣を振るうタクマ。

しかしあっけなくかわされ距離を取られる。

「返してほしくばエリエント王国の王宮まで来い。それまでこいつは預かっとくぜ。」

「くっ‼」

再び攻め入ろうとするタクマだが黒いドラゴンの折れた角から発せられる強い光に視界をくらませられる。

「うわ!」

そして光が晴れる頃には既に少年とドラゴン二体の姿はなかった。

「逃げられたか・・・。」

呆然とする一同。

「―――っ!クソォォォォォォッ‼」

タクマの怒りの叫びが森中に響き渡った。


 エリエント王国の王宮。

中庭でタクマ達の帰りを待つ第二王女のオリヴェイラ。

侍女と一緒に中庭で紅茶を飲んでいた。

「タクマ様、遅いですわ・・・。連絡手段を持たせておけばよかったかしら?」

「姫様、彼らに依頼を出した際、何かあればあちらから連絡をすると申されておりました。ですので連絡がない今、無事だと思われますが?」

「それもそうね。でしたら私は彼らが戻るまでここで帰りを待ちますわ。」

そう言い再び紅茶を飲もうとすると、

「失礼をば・・・!」

突然黒ずくめの女性が現れた。

顔を隠し、黒いフードに全身を包んだ暗殺者だ。

「あら、アサシン。どうしたの?」

「ハッ、ウルノード王子が雇ったテイマーがメルティナ様を連れてご帰還なされました。」

「・・・何ですって⁉」

オリヴェイラがガタッと席を立つ。

「姫様、王子が雇ったテイマーと言うのは、ドラゴンを二頭連れておられたネクト様の事ですか?」

「えぇ、一度挨拶をした程度だけど、かなり腕の立つお方だと言っていたわ。何故お兄様に雇われているのか分かりませんでしたけど、何故メルティナ様を?」

「付け加えますと、メルティナ様は気を失っており、恐らく攫ってきたのではないかと推測されます。」

暗殺者が報告を続けるとオリヴェイラの表情が変わった。

「アサシン。すぐにテイマーの方とメルティナ様の安全を探って!可能であればお兄様の企みも掴んできて頂戴!」

「御意。」

シュバッとその場から消える暗殺者。

「お兄様、何を考えているのかは知りませんけど、私の大切なお友達を傷つけたりはさせません!」


 「よくやった。ネクト。」

ウルノード王子の部屋のソファの上に降ろされるメルティナ。

彼女は魔械竜の襲撃で気を失っていた。

「魔械竜・・・ロキの判断で一番抵抗力の低そうな奴を連れてきてもらった。」

「上出来だよ。後は彼、タクマが私の元に来れば、計画は完成する。フフフ、ハハハハハ!」

窓に向かって高らかに笑うウルノードだった。

ネクトはメルティナを抱え部屋を出てきた。

『私の部屋に寝かせていたら城の物に変な誤解を生むから私から呼び出しがかかるまで彼女を預かっててくれ。』

そうウルノードに言われたネクトはドラゴンたちを休ませてる部屋にやってきた。

「・・・あの王子め。好き勝手言ってくれる。」

メルティナを黒いドラゴンに預ける。

「金がいいから雇われてみたはいいが、アレは完全に私利私欲のために動いてやがる。あんな男が王位に就いたらこの国は恐らく終わるな。」

ドカッと椅子に腰を降ろすネクト。

するとタクマの事を思い出す。

⦅メルティナを返せーーー‼⦆

「・・・チッ!」

ぐしゃっと前髪を掴む。

「・・・明確な目的を持ってる奴は、違うな。」

どこか羨ましそうな笑みを浮かべるネクトだった。


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