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『第七章 冒険者ギルド』

「おおぉ‼これがギルドか‼」

タクマの目の前に建つ木造建築の大きな建物、この街唯一の冒険者ギルドだ。

「黒狼の牙?アルセラさんこの看板は?」

「このギルドの組織名だ。それぞれの街によって名があるんだ。」

隣に付き添ってくれている騎士アルセラ。

この街に無事に入ることが出来たのは彼女のおかげでもあった。

街にまでついたはいいが門の手前でバハムートに対する問題が起きてしまった。

無理もない、この地域では珍しいドラゴンが突然現れたのだから。

門兵に囲まれ絶えることのない尋問を掛けられ疲弊しきったときに騎士団長であるアルセラが事情を説明してくれて何とか疑いが晴れ街に入ることが出来た。

だがタクマの疲労は凄まじいもので現在でも疲れが顔に出ている。

「全く、あの程度の尋問で情けない。」

「誰のせいだと思ってんだ・・・。」

ギルドへ向かう途中、街の人たちに注目の的にされずっと視線を浴びていたことも疲労の原因の一つ。

主にバハムートのせいだったので憎しみの目でバハムートを睨むタクマであった。


 気を取り直し、いざギルドの中へ足を踏み入れる。

中は冒険者パーティで活気があふれていた。

「すげー賑わいだな。というか入った瞬間一斉にこっち向かれたんだが?何で?」

「タクマ殿、後ろ。」

アルセラに小声でささやかれ後ろに振り向くと、キラキラに輝く銀色の鱗が目の前に。

「て、何でついてきてんだお前⁉」

そこにはデンとたたずむバハムートがいた。

「おかしいか?主に付き添ってついていくものかと思ったが?」

「間違いってわけじゃないけど目立つから、ていうかお前どうやって入ってきた?」

ギルドの入口はせいぜい三メートル前後の高さしかなかった。

「『空間移動』で入っただけだが?」

真顔で答えるバハムート。

もはや何でもありだ、この竜は。

「とにかくお前は外で待っててくれ。すぐ戻るから。」

「仕方ない。」

渋々表へ戻るバハムートにタクマは頭を抱える。

(今度あいつに人間の常識教えとくか・・・)

再び気を取り直し受付へ向かう。

「はい、ご用件は何でしょう?」

明るい雰囲気の受付嬢が出迎える。

タクマは冒険者登録を申請すると受付嬢は一つの水晶玉を取り出した。

「ではこちらの魔力測定機に触れてください。」

魔力測定器。

文字通りその人の魔力を測る装置。

ギルドの水晶の測定可能数値は999値までの上質な代物が使われている。

タクマは水晶に触れると薄っすらと小さな光が灯った。

「貴方様の魔力値は10ですね。」

すると周りの冒険者たちからざわつき始めた。

中にはクスクスと笑う者もいる。

「あの、魔力値が10ってかなり低いんですか?」

ささやき声で受付嬢に訊くと

「そうですね、一般の数値ですと150が平均値ですね。」

平均値にも満たなかったから笑われたようだ。

だがタクマの魔力が低いからこそバハムートの力を宿すことが出来るので何も問題はなかった。

「となると・・・貴方様の職業(ジョブ)は結構限られてきますね。」

「いえ、俺は剣を使うので剣士でお願いします。別に魔導士とかなりたいわけではないので。」

「わかりました。ではご職業は剣士で登録しますね。しばらくお時間を頂きますので近くの席でお待ちください。」

待機のためアルセラが待つテーブルへ向かった。

アルセラは防具を一部外してお茶を飲んで待っててくれていた。

「どうだ?申請は通ったか?」

「はい、あれ、デス・リザードの件の報告は?」

「あぁ、ついさっき済ましたところだ。」

アルセラは周りを確認し隣に座ったタクマに耳打ちをする。

「もちろん作戦のことも忘れていないぞ。」


それは街へ向かう道中アルセラから事情を聞いた時だった。

「この件を任せろとはどういうことだ?」

「アルセラさんたちが何者かによってハメられたとなると、まず依頼を出したギルドを疑ったほうが自然だ。」

「た、確かに・・・。」

そこでタクマはある提案をした。

討伐対象はロア・リザードではなくデス・リザードに変異しており苦戦していたところを一人の旅人に救われ、無事討伐完了となりそれをそのまま報告する。

ただ相手にはアルセラがハメられたことに気づいていないと思わせる。

気づかれていないと思い油断しているその隙にタクマが事の真相を探るという作戦だ。

「作戦は理解したがそれではタクマ殿に迷惑が・・・、」

「心配してくれるのは嬉しいですがどのみち俺も冒険者ギルドを利用するんで面倒事は早い内に潰しときたいんですよ。でもギルドが根源だとまだ断定していませんからただ探りを入れるだけです。」

何気ない表情で笑うタクマ。

「・・・わかった、微力ながら私たちも手を貸そう。」

「ありがとうございます。」

そうして現在、ギルドには何も知っていないと装い手掛かりが掴めるまでは普通に過ごすことにした。

(とりあえず今は生活資金を稼いでおきたいな。)

すると受付から呼びが掛かった。

冒険者登録が完了したらしい。

さっそく受け取るとカードの職業欄に違和感を感じた。

「ん、『テイマー』?」

職業欄には剣士の隣にテイマーと書かれていたのだ。

どういうことか受付に聞いてみると、

「はい、先ほどの魔力測定器に入れたタクマさんの魔力から情報を基に記載したのですが、そこにテイマー適性が優遇されていたのでこちらで新たに申請しました。」

どうやらバハムートを召喚したことでタクマの魂にテイマー適性が記されたようだ。

確かにバハムートを連れている職業剣士はおかしい。

考えが浅はかだった。

これからは自分のことも気を付けていこうと思った。


 登録も済み、晴れて冒険者となったタクマは掲示板に張られた依頼書を眺めていた。

新人冒険者は全てにおいてFランクから始まる。

ランクはFから順にSまでありランクが上がるにつれ受けられる依頼の数も増える。

(Fランクだからやっぱり簡単な依頼しかできないな。)

悩んでいるタクマにアルセラが話しかけてきた。

「悩んでいるな。」

「はい、初めてなもので何を受けたらいいのかイマイチ判らなくて・・・。」

するとアルセラは一枚の依頼書を指した。

「やはりここは安定の薬草採取がいいんではないか?初心者向けで私のおススメだ。」

依頼書を見ると報酬金は低いものの危険な土地ではなく採取量もそこまで多くない。

まさに初心者向けの依頼だ。

「無難に行きますか。」

そう言いタクマは依頼書を剥がし受付へもっていった。


 国門街から数キロ離れた森の中、二人と一体は黙々と薬草を探していた。

「・・・何故我がこのような雑用を・・・。」

「これも立派な仕事だぞ?」

不機嫌そうなバハムートにタクマは言い返す。

タクマ達が受けた依頼はネラム草という少々希少な薬草。

主に傷薬などによく使われる一般的な素材の一つで木陰などに生えている。

ちなみにアルセラは部下がまだ療養中で仕事が空いているのでタクマ達と同行することにしたようだ。

「しかし少々希少とはいえなかなか見つからないなぁ。」

アルセラの腰に付けた革袋の中には微量のネラム草しか入っていない。

おそらく森の魔獣たちが食べてしまったのだろう。

「それじゃちょっとアレを使うか。バハムート!借りていいか?」

「すきに使え。」

タクマは目を閉じて集中すると右目に小さな魔法陣が浮かび上がった。

「『鑑定』‼」

右目の瞳が緑色に輝きだす。

まるでエメラルドのように。

「タクマ殿、それは?」

「あぁ、植物に特化した鑑定スキルです。これなら手早く見つかるかもしれません。」

タクマは緑の鑑定眼で辺りを見渡すと点々とした位置に反応があった。

「まだ残ってるネラム草発見!」

早速摘み取り依頼量のノルマ達成!

「それじゃ引き上げるか。」

帰りの道中草木をかき分けて進んでいると付近に何かが落ちているのに気付いた。

「ん?二人とも、ちょっと待って!」

タクマはその落ちている物のところへ駆け寄ると紫のラインが入った緑色の巨大な一枚の羽があった。

長さは二メートルは裕に超えている。

「羽か?鳥にしてはとんでもなくでかいな。」

後ろからアルセラも追いつく。

「タクマ殿、どうした?」

「アルセラさん、これ見てください。」

「・・・何だこれは?初めて見るな。鳥?にしては大きすぎるか・・・。」

二人が羽をじっくり見てるとのっしのっしとバハムートも追いついた。

(む?この羽は?)

羽を見たバハムートは目を見開いた。

あとの二人はこの羽が何なのかわからないのでギルドで見てもらうため持ち帰ることにし、森を後にした。


 ギルドに着くなりまずは依頼の報告を済ませる。

「はい、ネラム草規定数、確かに確認しました。こちら報酬です。」

受付嬢がトレイを出すと少ないが金善が乗っていた。

取り合えず初仕事は成功だ。

「おぉ、こんな感じなんだ。」

タクマがギルドの仕事に感心してるとアルセラに肩を突かれた。

「タクマ殿、例のあれを。」

「あぁ、そうだった!」

タクマは懐から森で拾った巨大な羽を取り出した。

「すいません。これ森で拾ったんですけど何の羽かわかりますか?」

「羽?ですか・・・え⁉ちょっと待ってください⁉その羽って⁉」

受付嬢は羽を見るな否や後ろの棚にあった魔獣図鑑を取り出した。

ものすごい勢いでページをパラパラめくりある一ページで泊まる。

すると受付嬢は驚愕した。

「間違いありません・・・、これは『風刃竜ウィンロス』の羽です・・・!」

その名前を聞いた他の冒険者は一斉にこちらに振り向く。

隣のアルセラも顔面蒼白で固まっていた。

「風刃竜?何だそれ?」

「知らないのかタクマ殿⁉風刃竜は厄災級の魔獣だぞ!奴が通った後は暴風に見舞われ、最悪の場合竜巻が発生して村が崩壊したという前例もあるんだ‼」

話を聞く限り、その風刃竜は相当な力を持った上位竜のようだ。

「今のとこ実害は無いみたいですが皆さん気を付けてください。」

(俺も気を付けとくか。)

 ちょっとした騒動があったがタクマ達はギルドを後にし、アルセラの勧めで国門街を見て回っていた。

「ここがこの街一の噴水広場だ。」

案内された場所は街の中心にあるかなり広い広場。

真ん中には大きな噴水がありいろんな出店が立ち並んで人々で活気が溢れていた。

「ここにはいろんな店が集まって安売りをしているこの街の観光名所だ。」

楽しみにしていたのかアルセラもテンションが高い。

やはり女性は買い物が好きなようだ。

回りを見渡すと魔獣を連れた人も何人かいる。

おそらくテイマーの人であろう。

(ここならバハムートがいてもあまり騒ぎにはならないかも。」

タクマは念話でバハムートに呼び掛けた。

「バハムート!この広場はテイマーの人が多い。お前が来ても大丈夫そうだ。」

「もう来ているぞ?」

「え?」

振り返るとキラキラに輝く銀色の鱗が目の前に。

「・・・デジャヴ。」

「何となく察しておったわ。少ないが町中に魔獣の気配がしていたのでな。」

「左様ですか・・・。」

タクマが呼び掛ける間もなく転移で来たようだ。

案外抜け目のない竜である。

「とりあえず見て回るか。」

タクマ達は広場に並んだ店を回り食事をしたりと束の間のひと時を過ごした。

そして気が付いたらすっかり日が暮れていた。

「いや~堪能した!」

一同は広場に設置されたテーブルで休憩していた。

辺りはランプの光でまるで祭り会場な雰囲気に包まれている。

「タクマ殿はほとんどが魔術に関する店しか行ってなかったな。」

「小さいころから魔術が好きでしたから。そういうアルセラさんこそ、アクセサリーや洋服が多いじゃないですか。やっぱり女性なんですね。」

「むっ、それはどういう意味だ?」

頬を赤くしながらジト目でタクマを睨む。

「いえ、別に?」

半笑いで目をそらす。

そのやり取りに二人は思わず笑ってしまった。

「バハムートも楽しめたか?」

「うむ、このような場所でもチーズを堪能できるとはなかなかだ。」

好物のチーズが食べれて満足気のようだ。

「ではそろそろ宿に行きましょうか。念のため先に予約を入れておいたので。」

「おぉ、ありがとうございます!」

一同は宿に向かうため広場を後にしようとしたその時ある一つの出店から声をかけられた。

「そこのローブを羽織った兄ちゃん。ちょっと寄ってくれねぇか?」

声をかけてきたのは武器屋のおじさん。

しかしよく見ると身長は低くがたいが良すぎるいかにも鍛冶師の見た目のおじさん。

(ドワーフだ‼)

ドワーフは製造に長けた種族で主に鍛冶や大工などを生業にしている。

そんな製造者が何故かタクマを呼び止めた。

「俺のことですか?何でしょうか?」

「兄ちゃんの腰につけてる剣、よく見せてくれねぇか?」

よくわからないが持っていた剣を見せるとドワーフのおじさんは剣にじっくり目を通した。

すると、

「兄ちゃん、この剣なまくら刀だぞ?」

「え?」

「刃こぼれも酷ぇし刀身も曲がり始めてる。言っちゃぁなんだがもう使い物にはならねぇな。」

(そんな!まだ一回しか使ってないのに⁉)

最後に使用したのはデス・リザードと戦った時、だがこの剣はその時一度しか使っていなかった。

ドワーフのおじさんに原因を聞くと

「おそらくだが剣に強い力がのしかかってその力に耐えられなかったのかもしらねぇな。」

強い力とは間違いなくバハムートの魔力だろう。

しかしたった一回で使えなくなってはこの先困る。何か打開策を練らねば。

「すまないタクマ殿。私たちを助けたばかりに君の剣が・・・。」

申し訳なさそうにアルセラが謝ると

「いや、旅をなめてたのは俺だ。よく考えたらこんな安物の剣じゃバハムートの力に耐えられないのも無理はない。」

タクマは剣を返してもらうとドワーフのおじさんにあるお願いをした。

「おっさん!腕のいい鍛冶師を紹介してくれ‼」

ドワーフのおじさんはニヤリと笑う。

「おう‼そのつもりだったさ‼」


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