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『第六十七章 王族の招待』

 「私、エリエント王国第三王女、オリヴェイラ・エリエントと申します。」

「お、王女―――⁉」

タクマとリーシャは声を揃えて驚いた。

(マジかよ・・・、王女様だったとは。てことは側にいる侍女とさっき助けた女兵士は王家に仕える人間か。)

「一国の王女が何故このような街はずれに居るのだ?」

馬車の後ろからバハムートが顔を覗かせる。

侍女と女性兵士がビクッと驚き、女性兵士は剣に手を触れた。

「やめなさいミルバ。彼らは恩人です。恩を仇で返す真似はよしなさい。」

「は、はい!申し訳ありません!」

バハムート達が居ても顔色一つ変えず、真っ直ぐタクマを見る王女。

上に立つ者として肝が座っていた。

「まぁ、たまたま通りかかったとはいえ王女を助けられたのなら良かった。俺達は旅の途中なのでこれで失礼しますね。」

王族と関わるのはなるべく勘弁願いたいタクマはそそくさとその場を後にしようとすると、

「お待ちください。タクマ様。」

王女がタクマを呼び止める。

タクマは歩みを止め振り向いた。

「・・・何故俺の名前を?」

名乗ってもいないのに突然名を呼ばれたことに警戒する。

「貴方の噂は耳に入っています。神を倒したドラゴンテイマー。ここ数日、我が国でもその話題で持ちきりです。」

それもそうだ。

神を葬ったなど、前代未聞の大事件だ。

そんな人間が存在していればその力をめぐって世界が動き出すかもしれない。

だが、タクマ本人はそんな偉業にこれっぽっちも興味はない。

ただ仲間と共に世界を見て回れればそれでいいのだから。

「・・・アンタも俺達を自国に引き入れたいってことか?」

彼らはこれまで、力による勧誘は二度受けている。

何かに縛られるのは彼らが最も嫌う案件だ。

「・・・王族としての立場でしたら、そのように考えております。」

王女の言葉にタクマ含め、三頭のドラゴンも身を低くした。

リーシャとメルティナは張りつめる空気にオロオロしている。

「ですが・・・、私個人としては・・・!」

何やらプルプルと震えだす王女。

すると突然、

「もう我慢できません‼」

ダッシュでタクマに駆け寄り、手を取った。

「私とお友達になってください‼」

「・・・はい?」

先ほどの冷徹な表情に打って変わって、まるで歳半ばの少女のように目をキラキラさせながらタクマを見つめる。

突然の王女の変わりように一同は困惑を隠せないでいた。

侍女と女性兵士は頭を抱えている。

「あの姫さん、急にキャラ変わったで・・・?」

若干引いているウィンロス。

そこに侍女が説明をしてくれた。

「この事は内密にお願いしたいのですが・・・、オリヴェイラ様は王族身分のため、外との関りがとても少ないのです。ですので心を許せるご友人も出来ず、ほとんどを城に籠って暮らしておりました。今回はどうしても外せぬ御用がありましたのでこうして外出をして、帰路の途中あの盗賊に襲われてしまったのです。」

「そこで私達が偶然通りかかって今に至るってことね。」

未だに急変した王女に攻めよられるタクマ。

側でリーシャがぷく~っと頬を膨らませていたのだった。


 同時刻、とある森林地帯の一画。数名の男と布を被せた馬車が森の中を通っていた。

「やりましたね頭!大収穫ですよ!」

「あぁ、こいつは高く売れるぞ!」

馬車の揺れで布が一瞬はだけると、中には少人数の小さな子供が手足を縛られ捕らえられていた。

そして耳が尖っている。

エルフだ。

「奴隷商のオーナーも喜ぶぞ。」

そんな彼らを大木の上から様子を見る。

フードを被った人影。

どこかで見た事のあるその人物は身を潜めながら奴らを尾行していった。


 ひょんなことから王女を助けてしまったタクマ達。

彼らは今共にエリエント王国に向かっていた。

「・・・・・。」

バハムートの背に乗るタクマをキラキラした目で見つめる王女様。

一緒に背に乗っているリーシャからも何やら圧を感じる。

耐えきれずタクマは口を開いた。

「なぁ、そんなに俺と友達になりたいのか?」

「もちろんです!」

即答する王女。

侍女と女性兵士はまたため息をつく。

「姫様・・・、あまり他所の冒険者に気を許すのはいかがなものかと?」

「何言ってるのミルバ!彼は私達の恩人なのですよ!しかも彼は身分も関係なく私に接してくれます!このような方は世界広しと言えど居りません!」

(いや、只々王族に対してガサツなだけやと思うんやけど・・・?)

チラッとタクマを見ると困惑しているタクマと目を輝かせている王女。

そして圧を放つリーシャの三角の関係が目に見えていた。

(これはちょっと笑えんかも・・・。)

そうこうしていると都市が見えてきた。

「皆様、着きました。あれが我が王国、エリエントでございます!」

とても大きな大都市。

アンクセラム王国といい勝負だ。

一同は王女に招かれるがまま入国、王宮へとやってきた。

「さぁ、こちらへ!私のお気に入りの場所でおもてなし致しますわ!」

嬉しそうな足取りでタクマ達を連れていく王女。

バハムート達もそのままやってきているので城内の侍女や兵士たちが驚いていた。

「なぁ、俺達が直でこんなとこ歩いてて騒ぎにならへん?気が気じゃねぇんやけど?」

すると侍女が答えた。

「ご心配には及びません。先ほどミルバに報告を伝えに向かわせましたので大丈夫ですよ。」

「お父様には私が後程お伝えいたしますわ!」

「そ、それでいいのかなぁ・・・?」

リーシャに隠れながらメルティナがボソッとつぶやいた。

「・・・・・。」

そして終始だんまりのバハムート。

(この感じ・・・、以前にも似たような事を体験したな。あれはいつだったか・・・?)

「バハムート!遅れてるぞ?」

「む、すまん。」


 タクマ達はとんとん拍子に王女にもてなされているとそこに男が入ってきた。

男は王女と似たような高貴な装いに身を包んでいる。

「やぁ!君達が妹を救ってくれた恩人だね?」

「お兄様!」

お兄様、ということはこの男は王子という事か。

「ドラゴンを連れたテイマー・・・。もしかして、君が神を倒したと噂されている冒険者だね?」

王子の質問にタクマは警戒態勢に入る。

この王子もタクマ達を自軍に引き入れたい者の一人かもしれない。

「そう警戒しないでくれたまえ。確かに君を引き入れたい欲もあるが、私は君と友好的な関係を築きたいと思っているんだ。」

彼から出た言葉にタクマは警戒しながらも耳を貸した。

「悪いが俺はアンタ達のような王族はイマイチ信用が出来ないんだ。王女に関してはこれでも心を許しているが、完全な信用を得るまでは警戒させてもらうぞ?」

「き、貴様!王子に向かって無礼を!」

「良い。彼も色々とあったんだろう。私達がとやかくいうことはない。では皆さん、ごゆっくりしていってください。」

王子は爽やかな笑顔でその場を後にしていった。

彼らを見送ったバハムートはウィンロスとリヴだけに念話を飛ばした。

「あの男・・・、何か企んでおるな。」

「うん。気配がすっごい黒かったわ。」

「ありゃ警戒するに越したことはないわ。怪しさMAXやで。」

そこに王女が口を開いた。

「お兄様も現在王位継承の時期でお忙しいはずなのに・・・。わざわざ来てくれたのですね。」

「王位継承?」

「はい。我が国、エリエントは国王のお父様が間もなく王位を降りるんです。その際、一番信用の高いウルノードお兄様が時期国王に選ばれたのでお兄様は現在お忙しい身なのです。」

「そうなんですか。」

リーシャが紅茶を一口飲む。

タクマもあのウルノード王子が何かを企んでいるのは薄々感づいていた。

するとそこへ先ほどの女性兵士、ミルバが走ってきた。

「姫様!友国のエルフ族から緊急伝達です!隣国から密猟者が現れて、エルフの子供が攫われたと!」

「っ⁉」


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