『第六十五章 再びの旅立ち』
しばらく投稿をお休みします。
ストックが出来次第順次投稿をしていきますのでよろしくお願いします。
眠っているタクマの精神世界で彼は謎の女性と対話をしていた。
「世界初の、ドラゴンテイマー・・・?ちょっと待て⁉世界初のドラゴンテイマーって千年も前の人物じゃないか‼」
「おや、私を知っているとは意外だったな。」
「歴史の教科書でたくさん出てきたからねアンタが‼」
大声で言うタクマだがスンと冷静になって言葉を詰まらせる。
「・・・でも、歴史に出てくるアンタは、そんなに良い人物じゃなかった。」
「というと?」
「歴史じゃアンタは化け物と言われる世界で最も恐れられた怪物。そう記されていた・・・。」
「・・・・・。」
「アンタは、その歴史の人物、シーナ本人なのか?」
シーナはカップを降ろし、口元で手を組んだ。
「君にとって、私は何に見える?」
何かを試されているような雰囲気を醸し出す。
「・・・正直、アンタからはそんな感じはしねぇよ。」
「そうかい。君から見たら、私は綺麗で良いお姉さんに見えるのかい。」
「そこまでは言ってねぇよ。」
「そこは黙ってそうですって言ってよ!」
頬を膨らませてプンプン怒るシーナ。
(何なんだこの人・・・?)
キャラが分からないタクマは困惑するも彼女と話を続けた。
「君の事は前から見てたよ。あの神を三人も倒すとはやるじゃないか。」
「三人?一人はレーネとして、後は双子神の事か?でも双子紳は倒した覚えはないんだが?」
「おや、あの緑の子から聞いてないのかい?あぁ、君はずっと寝てるから聞いてなくて当然か。実はあの襲来には双子神も来てたんだよ。」
「何ぃ⁉」
タクマは驚きを隠せなかった。
「安心しろ。その双子神は君の従魔、風刃竜が倒したから。もう彼らが君の前に現れる事はないさ。」
タクマは唖然としていた。まさか双子神まで来ていてそれをウィンロスが一人で倒してしまったと言うのだから。
「従魔がどんどん強くなっている気がする・・・。」
「君の従魔は元から強いからね。それに君達が神を倒せたのは従魔結石のおかげさ。結石の力で従魔を極限まで強化された。更にタクマ、君は従魔の力を共有できる。故に結石で力が跳ね上がった彼らと同様、君も強化されたって訳さ。」
タクマも従魔結石で極限解放されたのはそんな理由だった。
「アンタ何でそんなに詳しいんだよ。」
「勿論、世界初のドラゴンテイマーだからね。テイマー知識は誰よりも持ってるさ!」
ドヤるシーナ。
タクマはシラ~っとした目で彼女を見ていた。
「―っと、そろそろ時間だね。」
シーナがそう言うとタクマの意識が朦朧としてきた。
「目覚めようとしているね。ここで話した記憶は全部無くなるからそのつもりで。」
シーナはタクマの頭を優しく撫でた。
「あの子、バハムートをよろしく頼むよ。」
その言葉を最後に、タクマの意識はそこで途切れた。
目を覚ましたタクマの周りにリーシャとリヴとメルティナの三人がくっついて寝ていた。
「またこの状態かよ。トレンストでもこうだったじゃないか。」
起こさなように器用に抜け出し、テントを出る。
そこはタクマにとって懐かしいルナの牧場の夜景だった。
「倒れた後ここに連れてこられたか・・・。」
散歩がてら牧場を歩いていると月をバックにバハムートが飛来してきた。
「目覚めたか。タクマ。」
「バハムート、どこかに行ってたのか?」
「ちと、夜の散歩にな。」
「俺と同じかい。・・・なぁバハムート。連れてってほしい所があるんだけど・・・。」
寝静まる夜の中、タクマを背に乗せ上空を飛ぶバハムートはオルビス学園へやってきた。
そして中庭の一本の木の前に降り立った。
「懐かしいな。」
「あぁ。」
そこは学園生活最後の日に貴族のオルトに喧嘩を売られた場所だった。
「こっから色々あったな。」
「そうだな。当時の我らは、神をも倒す偉業を成すとは到底思わんかっただろう。」
「ありすぎて凄い昔に感じるぜ・・・。」
二人は出会った頃の思い出に浸った。
「どうする?旅は続けるか?」
「当たり前だろ。こんな充実した人生、今更辞められるか!」
「となると、またルナとは別れになるな。」
「本当だったらまだ帰るつもりじゃなかったんだけどな。流石にもう黙って出るのは無理だろうし・・・。」
タクマは考える。
どうやってルナにどやされずに旅に出られるかを。
「う~~~ん・・・。」
「正面から打って出るしかなくないか?」
「ですよね~。」
結局何も思い浮かばなかった。
翌朝、散歩から帰ってきたタクマに勢いよく飛び掛かる女子たち。
無事に目覚めた事を泣いて喜ぶ彼女たちの後ろでルナが何とも言えない表情をしていた。
「えっと・・・ただいま・・・。」
「はぁ・・・お帰りなさい。」
ため息をついたルナだが笑顔で迎えてくれた。
そしてリーシャ達が沢山作ってくれた料理を皆で食べていた。
「全員無事で良かったです~~!」
「分かったから泣くな。ほら、鼻噛め。」
紙を渡されチーンと鼻を噛むリーシャ。
「・・・ねぇタクマ、ちょっといい?」
「え⁉お、おう・・・。」
途中ルナに呼び出された。
少し離れた牧場の草原に二人きりになる。
「えっと、その・・・勝手に出ていって、ごめん・・・。」
ルナはだんまりしている。
気まずい空気の中、ルナが口を割った。
「それもあるけど・・・、お礼を言いたかったのよ。」
「お礼?」
ルナはタクマに向き直り、頭を下げた。
「ありがとう!私達を、国を救ってくれて!」
「お、おい!らしくないぞ⁉」
幼馴染みであるが故、ルナが頭を下げるなんてこれまで一度となかった。
そんな彼女がタクマに頭を下げている。
「それだけの事を貴方はしてくれたの!神を倒しちゃうなんて、幼馴染だからこそまだ信じられないけどね。」
頭を上げて少し笑った。
「ルナ・・・。」
「でも勝手に出ていった事はしっかり言わせてもらうからね?」
「うぐっ!やっぱりですか~・・・!」
また昔のように、二人は二人の時間を過ごしたのだった。
「それで?改めて聞くけど、この子達とはどういう関係なのかしら?」
皆の元に合流したタクマとルナ。
しかし、ルナはタクマとリーシャ達女子組との関係を改めて問い詰めた。
無理もない。
幼馴染みが三人も美少女を連れていたのだから。
四人は並んで正座させられている。
「ルナの思ってる関係性じゃないと思うぞ?」
「前にも言いましたけどタクマさんは私の命の恩人です!」
「恩人でしたら私も一緒だと思う・・・。」
「わ、私はただの従魔よ。」
「はいそこの青い子!前に貴方が言った言葉覚えてるからね!堂々と嘘つかない!」
ビシィッとリヴを指さすルナ。
もの凄い気迫だ。
「だって貴女目がマジで怖いんだもん!本当の事言ったら何されるか分かったもんじゃないわ!」
リヴも反論するがドラゴンである彼女に一切引かず問い詰め続けられるルナも案外凄かった。
(私の本心は気づかれてないっぽい。良かった。)
内心ホッと胸を撫で下ろしたリーシャだった。
「何なんあの金髪の嬢ちゃん・・・、あのリヴに突っかかっとるで・・・。」
「ルナは中々肝が座っとるぞ。あの女神に一度心を折られたが、見ての通りもうすっかり元に戻っておる。」
「鋼メンタルやな・・・。」
ウィンロスもルナの逞しさに驚いていた。
リヴと口論をしていたルナの矛先がタクマに移った。
「タクマ‼」
「はいっ‼」
ツカツカと歩いてきて肩にポンと手を置いた。
「大事な仲間なんでしょ?だったら死んでも守りなさいよね!」
(あれ?てっきり女子つれてた事を怒っているのかと思ってたけど・・・?)
「お、おう・・・。」
ついなまり返事をしてしまった。
ルナの怒った表情は徐々に緩やかになる。
「ほんと、あの子たちが羨ましいわ・・・。」
「え?」
「な、何でもないわよ!それと、すぐにまた旅に出るんでしょ?さっさと準備しなさい!」
何故かルナに指揮されているが彼女の勢いに振り回されるタクマ。
「ほら!そこで座ってる獣たち‼」
「せめてドラゴンて言うて⁉」
「貴方達も準備なさい!タクマ一人じゃ荷が重いわ!」
ドラゴン二頭もルナの勢いに押され準備を始めた。
「凄い、ルナさん・・・。バハムートさんとウィンロスさんを手ごまにしてます・・・。」
「多分このメンツの中で一番強いんじゃないかしら・・・?」
「うんうん・・・。」
尻に敷かれる男組を遠くで見ながら女子たちも支度を進めたのだった。
翌日の早朝、国を救った英雄として祭り上げられるのは御免なのでタクマ達はまだ住民が起きてない早朝に旅に出ることにした。
だが今度は見送りにエリック先生ともう二人、マリア先生とルナも来ていた。
「タクマ少年に助けられる日が来るとはな。長生きしてるといい事あるもんだ!」
「アンタも存外タフやな~。ルナに話じゃ天使に殺された言うてたに・・・。」
「俺の筋肉は全てをはじき返す!」
ボディビルポーズで言うエリック先生。
その横でマリア先生はリーシャと話していた。
「これからも末長くタクマ君をよろしくね。リーシャちゃん。」
「ふぇっ⁉」
そして、タクマとルナ。
「・・・・・。」
「・・・・・。」
二人は互いにだんまりしている。
「・・・今度は、いつ帰ってこれるの?」
「さぁな、恐らく・・・しばらく帰らないのは確実だ。ひょっとしたら何年、何十年後か・・・。」
すると突然ルナがタクマに抱き着いた。
「お、おい⁉」
「どんだけ時間がかかってもいい!ここがアンタの帰る場所なんだから・・・!」
ルナの頬に涙が滴る。
「アンタが安心して帰ってこられるように、私も頑張るから!アンタも頑張りなさい!」
彼女とここまで抱きしめあったのはいつぶりだろう。
幼少期、母親のセナを失って、この国にやってきて、絶望に撃ちしがれていたタクマを慰めるように優しく抱きしめてくれた。
その彼女の暖かさに当時どれだけ救われたか。
「・・・あぁ、頑張るよ。いつか帰ってきたら、旅の土産話たくさん聞かせてやる。」
「フフッ、楽しみにしとくわ。」
さよならは言わない。
また帰ってくるために。
タクマ達はバハムートとウィンロスの背に乗る。
「行くぞ皆!」
「「おう‼」」
「「はい‼」」
二頭は力強く羽ばたき空に舞う。
タクマは見送る三人に手を振り、王国を旅立った。
「・・・早いもんだな。あんな小さかった子供が今じゃドラゴンを三頭も従える英雄だぞ?」
「入学当初の彼からはとても想像がつかなかったわね。」
教師の二人が教え子の成長に喜ぶ。
ルナも空高く飛んでいく彼らを見上げていた。
(いつかまた、あの頃のように・・・!)
同時制作作品はこちら。
『無人鉄機の進撃車 次元を駆ける復讐者』
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