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『第六十二章 従魔結石』

タクマとレーネの激しいぶつかり合いが行われる。

だが先ほどよりもタクマに勢いがなかった。

翼が発光し本気モードになったレーネに思いっきり蹴り飛ばされ瓦礫に叩きつけられる。

「ぐっ!」

「あらあら、さっきまでの威勢はどこに行ったのかしら?」

煽るようにタクマに歩み寄るレーネ。

そこに炎のブレスが二人の間に放たれバハムートが立ち塞がる。

「タクマ!剣技が乱れているぞ!集中しろ!」

「わ、分かってる・・・!」

果敢にレーネに攻めるがやはりタクマの動きが妙にキレがなかった。

苦労して破壊したバリアもすぐに復活してしまいこれまでの戦いが無駄になってしまい、密かに絶望してしまっていたからだ。

(タクマの心に乱れがある。何とか持ちこたえさせねば!)

バハムートはタクマと代わりレーネの相手を引き受ける。

「女神の相手は我がする!お主はしばらく心身を落ち着かせろ!」

「バハムート⁉」

そう言い残し、バハムートはレーネと共に遠くへ押し通していった。

「心身を落ち着かせろ、か・・・。確かにモヤモヤした感じがあるな。」

少しとはいえ絶望の感情を出してしまい体が思うように動かせなかったことを自覚する。

「無理もない。あれだけ必死に戦ってやっとの思いで厄介なバリアを壊せたと思ったのに・・・すぐに直せる上に今まで本気じゃないと来たんだからな。こっちは命かけて戦っているってのに・・・。」

タクマは剣を突き刺し、深呼吸をする。

目を閉じ、これまでの事を思い返した。

(正直言って、レーネを倒す算段は完全に消えてる。でも、例え倒せなくても追い返せればこの事態は収まる。何とか追い返せる方法はないか・・・。)

そこまで考えたタクマはあることを思い出し、その考えを否定した。

(いや、追い返すだけじゃだめだ!それだけじゃいずれ同じことを繰り返えされる。もう二度と、奴のせいで悲しむ人を増やさないために!レーネは、ここで討つ!)

剣を再び握りしめ歩み出す。

(それに俺は一人じゃない。俺には、アイツ等がいる!)

左腕の腕輪にはめた従魔結石が一瞬だけ光を放った。


 「ぐあっ⁉」

バハムートの攻撃も神相手には無意味で全て弾かれ、手痛い反撃を食らってしまう。

「竜王と呼ばれてる割には弱いわね。貴方、本当に竜王なのかしら?」

「ハッ、神と比べたら我などそこらの獣と同様だろう。だが王とは力が全てではない。他者を想いやり、導く者もまた王の資格を持つ者よ。」

しかし流石のバハムートも息が上がっている。

そろそろ限界に近いようだ。

「哀れね。人間なんかに就いたから貴方の存在価値も底辺に落ちてしまった。貴方は過去にも人間に仕えていたみたいだけど、どうしてそこまで人間を信頼するのか理解が出来ないわ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

首を傾けて煽る表情をするレーネ。

「・・・確かに()()()は命を懸けて守った人間に裏切られ、命を落とした。当時の我だったら人間を忌み嫌い、憎んでいただろう。だが今は違う!タクマと出会い、再び世界を見て回り見る目が変わった。道を間違った人間は変われる。人と人が支え合い助け合っていた。中には救いようのない愚か者もいる、だがそれでも!我はもう一度賭けたんだ。人間の可能性を!」

レーネから笑みが消える。

「人間の可能性?反吐が出るわね。人間は同じ過ちを繰り返す。自身の行いを理解しない大馬鹿者ばかり、それが人間よ。可能性なんてあるわけないわ。」

「いや、可能性ならあるさ・・・!」

二人の間にタクマが現れた。

「性懲りもなく出て来るわね。貴方達じゃ私には一生勝てないって何で理解しないの?」

レーネの言葉を無視しタクマは話を続ける。

「お前が言う通り、人間は同じ過ちを繰り返す。だがバハムートの言った人間は変われる。これも事実だ。実際自分の過ちに気づき、変われた奴がいる。」

タクマはメーレンとワーウルフの事を思い返す。

「俺達は実際にこの目で見てきた。人と人がつながり合い助け合っているのを。人間の持つ無限の可能性を否定するのなら・・・、お前を討って、証明してやる!」

剣をレーネに突き立てそう言い放った。

「なら証明してみなさいよ?出来るのならね‼」

無数の光の鎖が二人に襲い掛かる。

タクマはバハムートの前に立ち鎖を弾いていく。

「バハムート、ありがとな。おかげで迷いが吹っ切れた。」

「そうか。」

「それに・・・。」

「?」

「俺は一人で全て背負おうとしていた。だから焦ってたのかもしれない。」

鎖を全て弾き飛ばしバハムートに向き直る。

「でも俺には、お前やリーシャ、ウィンロスにリヴ、ラルにメルティナ、皆が俺についてきてくれた。だから、一人で背負い込むのはやめる。俺には、最強で最高の仲間がいるんだからな!」

笑顔を見せたタクマにバハムートはフッと笑いながら立ち上がる。

「本当、くだらないわ。何が貴方達をそこまで動かすのかしら!」

さっきよりも多い本数の鎖を放ってくる。

二人で鎖を弾きながらタクマが叫ぶ。

「だったら教えてやるよ!絆さ!信じ合う心があればどんな事だって成し遂げられる!」「貴様らのような理不尽な神に我らは何度も抗って見せよう!」

「世迷言を!貴女達が必死に守ろうとしているこんな古い世界、創造神様の作る新世界には不要なのよ!神の言う事は絶対。私達が正しいのよ!」

レーネも次第に感情的になって言い合う。

「テメェ等こそ世迷言を吐くな!素人の俺から見てもお前らの行いは間違ってると確信してるぞ!新世界を作りたいから今の世界を、多くの命を奪うと言うのか?ふざけんじゃねぇ!新世界ってのは今を生きる人たちが繋げる明日なんだ!無限に変われる未来を、神の勝手で崩させたりさせない!」

するとタクマの従魔結石が強い光を放った。

(従魔結石が⁉)

そして従魔結石から強い光と共に翡翠色の稲妻が溢れ出てきた。

その現象は従魔である三頭にも現われる。

「な、何だ⁉」

リヴから発せられる翡翠色の魔力破がアムルのトドメの一撃を押し返す。

「これは、主様・・・?」

ウィンロスにも同様、翡翠色の魔力が溢れ出ていた。

「こいつは・・・?」

『アルル、何あれ・・・⁉』

『分かんない分かんない・・・⁉』

従魔結石は従魔の力を極限まで引き出せる魔石。

その魔石がタクマとバハムート達の思いに答えたのだ。

「だから、負けるわけにはいかないんだーーーーーーー!!!!」

「「「ウオォォォォォォォォ!!!!」」」

バハムート、ウィンロス、リヴの三頭の身体から翡翠色の稲妻が溢れ出る。

目は白くギラつき極限状態となる。

タクマの身体にも翡翠色の稲妻が迸り、髪は結石と同じ翡翠色へと変化する。

『アルル、こいつ変わった⁉』

『関係ない関係ない!ただの悪あがきだ!このまま踏みつぶせ!』

双子神の鎧が足を振り下ろす。

だが潰される直前にウィンロスの姿が消えたのだ。

『消えた⁉』

『どこ行った⁉』

すると突然鎧の頭部が何かにぶつかり体勢を体勢を崩した。

『ネーネ、ネーネ!今何が起きた⁉』

『分からない、分からなかった⁉』

よく目を凝らすとそれは目にも止まらぬ速度で縦横無尽に駆け回るウィンロスだった。

稲妻のように早く動き回り、双子神は完全にウィンロスを見失っていた。

『早すぎて攻撃が当たらない!』

『だ、大丈夫!アイツの攻撃はこの鎧には効かない!防御力はこっちが上・・・。』

そう言いかけた時、鎧の胴体にウィンロスが強い蹴りを入れた。

『無駄無駄!そんな攻撃じゃ鎧には傷一つ付か・・・。』

「どうかな?」

ウィンロスは蹴りを入れた一点を重点的に凄まじいラッシュを繰り出す。

ありえない速度で打ち出される連撃はこれまでの比ではない。

(な、何だこの連撃⁉さっきまでの奴とは明らかに違う⁉)

次第に傷一つつかないはずの双子神の鎧にヒビが入った。

(そんな⁉僕たちの作った神の鎧にヒビが⁉)

「ハァァァァッ‼」

強力な一撃が鎧の胸元を粉々に打ち砕いた。

そして中から光輝く神格が表に出る。

「そこか‼」

『させるか‼』

寸前で盾でウィンロスの攻撃を止め、弾き飛ばす。

『死ねぇ‼』

剣から光線を放つ。

だが光線はウィンロスに当たらず消えたかのようなスピードで壁際を旋回する。

どこから仕掛けてくるか分からない双子神は防御の態勢に入る。

「これでしまいや‼」

ウィンロスは真正面から仕掛けた。

「『ウィニング・ジェットインパクト』‼」

雷豪のごとき勢いでキックを繰り出す。

双子神も盾で神格を守るがキックの威力が強すぎてあっけなく盾は打ち砕かれ、ウィンロスは双子神の神格を貫いた。


 「おのれ、死損ないめ‼」

アムルに無数の水のレーザーが降り注ぐ。

従魔結石の力で極限解放されたリヴは数えきれないほどの魔法陣を周囲に展開し、アムルを追い詰めていた。

「図に乗るな!テイン・ロウ‼」

光線が放たれるもリヴのブレスでいともたやすく相殺される。

「今までの分、倍にして返すわ!」

巨体に見合わない速度でアムルと間合いを詰める。

「馬鹿め!そっちから私の間合いに入ってくるとは!」

剣を魔法陣に刺し、魔力を上げる。

「天の型、居合・滅尽綴(めつじんてつ)‼」

巨大な刀身がリヴの首筋を捕らえる。

だが首を切ったと思ったらなんと刀身が砕けたのだ。

「なっ⁉」

「残念だけど、アンタはもう私を切ることは出来ないわ!」

至近距離から大きく口を開け、ブレスを撃とうとしてくる。

アムルは咄嗟にブレスの塊を切り裂き水蒸気爆発を起こす。

「くっ、視界が!」

すると目の前の煙から低い体勢で拳を握る人型のリヴが現れた。

「っ⁉」

流流水拳(りゅうりゅうすいけん)‼」

水を纏い突き上げる強力な拳がアムルの腹に思いっきり炸裂したのだった。


 「何だ?どんどん反応が消えてく?」

リーシャと戦っていたガミウが急激に消えていく魔力反応に気が付いた。そこにラルの銃口が物理で迫り鎌で受け止める。

「銃持ってんのに殴るとか脳筋か?」

(それはどうかな?)

するとガミウはラルの後方で杖に魔力を溜めているリーシャに気づいた。

彼女の従魔結石から魔力を杖に集中させ光の槍へと変貌する。

(な、何だあの魔力は⁉)

その魔力からは神格の底まで悪寒を感じた。

(何だか分かんねぇが、あれはヤベェ‼)

ラルを蹴散らしリーシャに襲い掛かるガミウ。

「させねぇぞ、ガキ‼」

だが寸前でラルが尻尾でガミウを捕まえ投げ飛ばした。

「くそが!諸共消えろ‼」

感情的になったガミウは鎌を掲げ上げる。

「死術・怨霊貪(おんりょうたん)・・・‼」

「させない‼」

わざを出そうとしたガミウにエトナが現れて妨害された。

「エトナ!テメェ・・・‼」

「今よ‼」

エトナがガミウを押さえてくれている内にリーシャの光が溢れ出る槍が完成する。

地面がひび割れ凄まじい重圧を放つ。

「『死滅の光神(ミスティルテイン)』‼」

リーシャの必殺技、『死滅の光神(ミスティルテイン)』をガミウに向かって投げつける。

轟音と共に放たれた槍は真っ直ぐ飛び、エトナが軌道から離脱する。

その一瞬まで足止めされたガミウは『死滅の光神(ミスティルテイン)』に対処しきれず光に飲まれた。

「ぐぅぅ‼くそがぁぁぁぁぁ‼」

彼の持っていた鎌は砕かれ無数の魂が解放されたのだった。


 仲間達が次々と敵を倒す中、従魔結石の力で極限解放されたタクマとバハムート。

向かいには無数の魔法陣と光の鎖をちらつかせる女神レーネ。

「例え強化されても、神には到底かなわないのよ‼」

鎖と光線が一斉に襲い掛かる。

「行くぞ、相棒‼」

「おう‼」

二人は散開しレーネの攻撃を打ち砕いていく。

「居合・牙贋炎焦(ががんえんしょう)‼」

三つの炎の輪が鎖を粉砕、

「居合・鬼炎(きえん)‼」

炎の一閃が光線を一刀両断、

「居合・流倫華翔(りゅうりんかしょう)‼」

そして炎の花びらが全ての攻撃を相殺した。

バハムートも一発一発のブレス威力が凄まじく、放つたびに空気が揺れた。

そうしてレーネの攻撃を蹴散らしながら間合いを詰めていく。

「女神を、私を舐めるな‼」

光線と鎖が一点に集まりタクマ達に繰り出される。

「「斬っ‼」」

タクマの剣とバハムートの爪の斬撃がその大きな攻撃を切り裂いた。

そしてレーネの天使の輪を捕らえる。

「っ⁉」

「『居合・獄炎斬(ごくえんざん)』‼」

超天(ちょうてん)竜牙爪(りゅうがそう)‼」

両サイドから技を繰り出す二人。

レーネはありったけの魔力でバリアを展開、剣と爪とバリアがぶつかり合い火花を散らす。

(こいつら!さっきとは比べ物にならない程強くなってる⁉これが従魔結石の力なの⁉)

更にレーネにとって予想外の事が起こる。

ありったけの魔力で強化したバリアにヒビが入ったのだ。

(な、何で⁉さっきは普通のバリアでさえ死に物狂いだったはずなのに⁉)

次第にヒビが広がっていく。

「「ウオオォォォォォォォ‼」」

そしてついにバリアは砕かれ天使の輪に手が届く。

「ハァァァァ‼」

タクマの一閃が天使の輪を真っ二つに切り裂いたのだった。


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