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『第五十九章 騎士と海竜』

アルセラとアムルの戦いに参上して思いっきりスベッたリヴは顔を覆ってその場にしゃがみこんでいた。

(か、彼女でも恥ずかしがることがあるんだな・・・。しかし、彼女がここにいるという事は・・・。)

アルセラはタクマがこの国にいることを察した。

「貴様、リヴァイアサンか・・・。」

「どうも、穴があったら入りたいリヴァイアサンです・・・。」

こんな危機的な状況なのに凄い緩い返事をするリヴ。

そんな彼女を見てアルセラはつい笑いを零してしまった。

「・・・フフフッ!意外な一面だな。君がそんなに恥ずかしがるなんて。」

「そりゃ私だって女の子だし!」

正確にはドラゴンの女の子だが。

そこにアムルがリヴに切りかかった。

リヴは魔法陣で剣を受け止める。

「相変わらず血の気が多いわね。」

「あの時の屈辱、忘れたわけではない・・・!」

剣と魔法が激しくぶつかり合う中、呆然としていたアルセラも加わり二対一でアムルに仕掛ける。

しかし天使であるアムルはやはり強い。

ましてや名を授かり強化もされているため、二人掛でも苦戦を強いられていた。

「天の型、居合・聖滝綴‼」

魔法陣もなしに居合を繰り出し光の刀身が辺りを切り裂く。

二人はギリギリかわし距離を取る。

「前に戦った時より強くなってるじゃない!どういうこと⁉」

「分からない。だが、以前より気は抜けない。リヴ殿!合わせてくれるか?」

「モチもロン!私達の仲だからね!」

グッと親指を立て散開。

二方向から仕掛ける。

「はぁ!」

「ふっ!」

アルセラは剣技、リヴは水魔法で両サイドから攻撃するが、

「無駄だ・・・。」

アムルは翼を広げると羽の形をした光の刃が無数に現れ二人の攻撃を相殺する。

「っ⁉」

そのまま流れで羽を操り二人に襲い掛かる。

何とか弾くが数が多く、アムルに全く近づけなかった。

(くっ!飛び散る刃が邪魔で近づけない!)

一瞬の隙も無い攻撃にアルセラは体勢を崩してしまう。

「しまっー!」

羽がアルセラの腹に直撃し、吹き飛んでしまう。

「アルセラ⁉」

何とか急所をずらし致命傷にはならなかったが、それでもダメージは大きい。

「だが、・・・まだ動ける!」

羽は容赦なく迫ってくる。

アルセラは羽を弾き斬撃を食らいながらもアムルと距離を詰める。

「っ!」

アムルは羽をアルセラに集中させる。

だがそれがアルセラの狙いだった。

手薄になった反対方向からリヴが一気に距離を詰め、アムルの懐に入った。

「貰った!」

「無駄だと言ったハズだ!」

剣を左手に持ち替えリヴの物理攻撃を受け止めた。

「まだまだ!」

リヴは拳を何度も打ち込む。

止まらない連撃にアムルはリヴに注意を引かれ、背後からのアルセラの接近に反応が遅れた。

「『破極牙線(はきょくがせん)』‼」

魔力を帯びた斬撃がついにアムルを捕らえた。

彼女の右腕に傷をつけた程度だがその小さな傷は大きな意味を持った。

「私が・・・ただの人間に傷を、付けられた・・・?」

リヴとアルセラの渾身の一撃が決まった直後、アムルは突然内に秘めていた魔力を放出し始めた。

「うあぁぁぁぁぁぁぁ‼」

重い魔力の風圧に煽られ二人は吹き飛ばされる。

アルセラはうまく受け身を取り、リヴは水をクッションのようにした。

「おのれ、人間・・・!一度ならず二度までも!許さん、許さん‼」

常に人間を見下していたアムルはアルセラに一撃を与えられたことに怒り狂い膨大な魔力を放出し続ける。

「どんだけ人間嫌いなのよ・・・。」

「だが勝機は見えた!リヴ殿!二人なら勝てる!」

「じゃぁ少し本気を出しますか!」

アルセラとリヴは一斉に走り出す。

「人間風情がぁぁぁぁぁ‼」

大きく振りかぶり巨大な光の斬撃が繰り出される。

斬撃をかわすと同時にリヴは竜の姿に戻りアルセラが飛び乗る。

水のベールを纏い一気に距離を攻め、アムルに突撃する。

アムルは魔力を自身に纏い剣で激突を受け止める。

勢いに押され続け広けた場所まで出てきた。

「フンッ‼」

リヴを弾き飛ばしすぐに切りかかる。

そこにアルセラが前に出てアムルの剣とぶつかる。

二人が剣を交えている隙にリヴはぐるっと囲むように身体を伸ばし身体から魔法陣を展開、氷塊を無数に発射しアルセラを援護する。

だが、

「『魔流爆破(まりゅうばくは)』‼」

更に強い魔力の爆風が炸裂しうまく連携を取っていた二人はあっという間に流れを崩されてしまう。

「「うわぁぁぁ⁉」」

リヴはドラゴンの巨体でそこまで大きなダメージにはならなかったが、一番近くにいたアルセラはその魔力を帯びた爆風をモロに受けてしまい、状態異常の『魔力過剰反応』になってしまった。

この症状は外から濃密な魔力を受けることで発症してしまい、体内の魔力循環に異常をきたし身体をうまく動かせなくなってしまうのだ。

身体の自由を蝕まれ床に伏せるアルセラ。

過呼吸になりながらも立ち上がろうとするが前からアムルが容赦なく迫ってくる。

「終わりだ!屈辱を持って死ぬがいい‼」

息の根を止めようと剣がアルセラに振り下ろされる。

その瞬間、地面から氷塊が現れアムルの手元を凍らせた。

「何っ⁉」

背後からリヴが身体をしならせ、尻尾を鞭のようにして放ち、アムルを弾き飛ばした。

「アルセラ!」

リヴはアルセラを咥えその場から離れる。

遠くへ飛ばされたアムルは魔力放出の反動を受け、しばらく動けないでいた。

「おのれ・・・!」


 状態異常を受けたアルセラを戦線から離脱させ、リヴは住民が避難している離れた丘までアルセラを連れてきた。

「きゃぁぁぁぁ⁉」

「ドラゴンだーーー⁉」

タクマの従魔とは知らない国の住民はリヴに驚いた。

護衛していた数人の兵士が前に出てくる。

「待て!彼女は友人の従魔だ!武器を収めてくれ!」

苦しみながらもアルセラはリヴは味方だと必死に伝えた。

兵士は武器を降ろしアルセラを介護する。

そこにマリア先生とルナがやってきた。

「アルセラ様!すぐに状態回復を!」

「あぁ、すまない・・・。」

アルセラはしばらく戦えない。

アムルの相手はリヴ一人でやらなくてはならない。

「アルセラを頼んだわよ。」

リヴが王都に戻ろうとすると、

「あ、あの!」

ルナに呼び止められた。

「何?」

「あ、貴女はもしかして・・・タクマの従魔、なの?」

恐る恐る質問してくるルナにリヴは応える。

「えぇそうよ?主様から聞いてたけど、アンタが幼馴染のルナって子ね?いろいろ聞きたいことがあるみたいだけど後にして。私達はあのクソ女神どもを倒さなきゃいけないのよ。」

ドラゴン姿のリヴの迫力にビビりながらもルナは話を続ける。

「守られる側の私がこんな事言うのもおかしいけど・・・お願い、私たちの故郷を・・・タクマを守って・・・!」

リヴはしばらく黙る。

「・・・アンタに言われるまでもないわ。私達は主人の守りたいものを守るだけ!」

そう言い残し、リヴは再び王都へ飛び去って行った。


 魔力消費の反動が回復し、街の中を歩くアムル。

「私も学ばぬな。感情的になって魔力を放出しすぎてしまうとは・・・。」

そこに上空から再びリヴがアムルの前に現れた。

「アンタは私が相手するわ。」

「抜かせ・・・。」

以前にも戦った二人。

互いの一騎打ちが始まった。

「テイン・ロウ‼」

剣先から光線を放ち、身体をくねらせ避けるリヴ。

魔法陣を二つ展開しブレスを二つ繰り出し、アムルを押しのける。

アムルはブレスをかき消しリヴに攻め入った。

剣に魔力を集中させ刀身を大きくさせる。

「ハァッ‼」

アムルの剣技が速い速度でリヴを追い詰めるがやはり巨体に見合わない素早せでリヴはかわし続けた。

そして彼女を剣に噛みついて動きを止める。

「掛かったな!」

「⁉」

突然大きくなった魔力の刀身から剣が引き抜かれた。しかもその刀身を鞘にして、

「天の型、居合・空麟の輪‼」

大きな光の輪のような斬撃がリヴに直撃する。

攻撃を食らったリヴは飛ばされ、アムルが更に畳み込みリヴの首元を押さえつける。

リヴも負けじと身体を起こし尻尾で薙ぎ払う。

アムルは寸前で避け高い位置の瓦礫の上に立つ。

「テイン・ロウ‼」

「ストリーム・ブラスト‼」

互いの攻撃がぶつかり押し合いとなる。

だが威力はアムルの方がやや上であり、リヴのブレスは徐々に押し返される。

(ウググ、あの天使、前より強くなってる!技の威力が以前よりも桁違いだ・・・!)

名を授かったアムルはやはり強い。

ブレスはそのまま押し返され、リヴに直撃してしまった。

「うぁぁぁ‼」

正面からモロに受けてしまい倒れるリヴ。

そこにアムルがゆっくりと歩み寄ってくる。

「貴様にはレーネ様を侮辱された前例がある。その報いを受けろ!」

アムルは剣を掲げると刀身が光の包まれ、先ほどよりも巨大になる。

(あの一撃は・・・まずい!)

その光から感じる魔力にリヴは恐怖する。

「天の型、居合・()()()‼」


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