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『第五十章 双子神』

突如現れた双子の神。

彼らは不吉な笑みを浮かべタクマ達を見下ろす。

「リヴ!リーシャとメルティナを連れて身を隠せ!」

「分かった!」

念話でリヴに指示を出し、メルティナを空間異動でリヴの元に送った。

「アルル、アイツ等僕達とやるつもりらしいよ?」

「ネーネ、アイツ等使って遊ぼう遊ぼう!」

双子神は互いに手を合わせると頭上に巨大な陣が展開された。

そこから大きな黒い影が現れ、そのまま地面に落とされる。

土煙が晴れるとそこには虫のような胴体に獣のような上半身がツギハギだらけで無理やりくっつけられた巨大な異獣、合成獣(キメラ)だった。

「キモッ⁉何だこの魔獣⁉」

合成獣(キメラ)だ。他種族の胴体を無理やり融合させ生み出す禁忌の生命体・・・!神め、こんな禁忌までに手を出しておるのか⁉」

本来なら神が禁忌を抑止としているはずだがその抑止を神本人が使用しているというのは極めてありえない。

新生創造神というのは一体何を考えているのやら。

「ヴォォォォォ‼」

この世の生物とは思えないおぞましい雄たけびを発する合成獣(キメラ)

「実験の始まりだ!」

「やっちゃえ殺っちゃえ!」

雄たけびを上げながらタクマ達に襲い掛かってきた。

二人は攻撃をかわし、タクマはすぐさま反撃する。

「居合・水刃爆‼」

時間差で切りつけた傷から水が爆発する。

だが合成獣(キメラ)はガッツリ切り裂かれた傷を受けても尚動き続ける。

「文字通りの化け物かよ!」

容赦なく襲い掛かってくる合成獣(キメラ)にタクマの背後からバハムートが飛び掛かる。

「ぬん‼」

首元に噛みつき頭を引きちぎった。

そして頭を失った合成獣(キメラ)は力尽きて倒れる。

「・・・エグイな、子供が見たらトラウマもんだぞ?」

タクマも流石に引き気味だった。

「仕方なかろう。やらなければこちらがやられるのだから。」

ペッと血を吐き捨てて言うバハムートだった。

「アルル、やられちゃった。」

「大丈夫大丈夫。まだ玩具は沢山あるから。」

そう言い指をパチンと鳴らすと先ほどと同じ魔法陣が無数に展開された。

そして中から無数の合成獣(キメラ)が排出され大地を覆う。

「おいおい、まだいるのか⁉」

「一体一体はそれほど強くはないが、この数は流石に厳しいぞ!」

バハムートの力で一掃することも出来るがこの地は休とはいえ火山地帯。

彼の強大な力に反応して活発化してしまったら麓の採掘団体の集落が危険だ。

一体一体倒していくしか方法がなかった。

「やるしかねぇ!」

タクマとバハムートは意を決し合成獣(キメラ)を一体ずつ倒していく。

だがやはり数が多く倒しても倒してもキリがなかった。

そうこうしている内に溢れた合成獣(キメラ)は身を隠していたリーシャ達にまで迫っていた。

「きゃぁぁぁ⁉こっちに来たぁぁぁ⁉」

「フンッ‼」

リヴが水の刃を放ち合成獣(キメラ)を蹴散らす。

が、次々と合成獣は攻めてくる。

「二人とも!伏せて!」

掛け声と同時に水色の魔法陣を展開。

「フリージング・ゲイザー‼」

氷の範囲魔法で辺りを凍り付かせ複数の合成獣(キメラ)は凍り付いた。

その凍った合成獣(キメラ)を利用して他の合成獣(キメラ)の足止めを狙ったのだ。

「移動するわよ!ついてきて!」


 彼女たちをリヴに任せ、タクマとバハムートは次々と合成獣(キメラ)を蹴散らしていく。

だが、

「ホントにキリがねぇ!このままじゃこっちの体力が持たねぇぞ!」

上空を見上げると今も尚双子神が魔方陣から合成獣(キメラ)を排出し続けていた。

「奴らを叩かぬ限りこの戦いに終わりがないぞ!」

「分かってる!けど・・・!」

この場を離れたらこの合成獣(キメラ)は全てリーシャ達の方へ向かってしまう。

いくらリヴが強くても全てを相手にするのは不可能だ。

どうにか出来ないか打開策を考えていると上空で双子神に攻撃を仕掛ける影が現れた。

「ちょっと留守にしてた間に何晒しとんのやガキどもが!」

場を離れていたウィンロスが戻ってきた。

戻るや否やウィンロスは双子神に蹴りをお見舞うするが、当然ながら避けられた。

「アルル、もう一匹増えたよ?」

「ホントだホントだ!新しい玩具!」

双子神の奇妙な会話にウィンロスはぶるっと震える。

「何やこいつら⁉気色悪⁉」

「ウィンロス!そいつらは女神と同格の存在だ!気を付けろ!」

念話でウィンロスに注意を促す。

「このちっこいのが神⁉確かによく見れば羽と輪っかが付いとるが・・・。」

すると双子神がキャッキャと笑いだす。

「アルル、こいつならアレを試せるんじゃない?」

「確かに確かに!やってみよう!」

そう言うと双子神が互いに手を合わせると別の魔法陣が背後に展開された。

「ワンランクアップ♪」

「来い来い傑作♪」

魔法陣からツギハギだらけの鳥のような姿をした合成獣(キメラ)が現れる。

非対称の翼に三つの頭、鳥の首と蛇の首、そして・・・人間の首。

「っ⁉」

流石のウィンロスも恐怖を隠せないでいた。

その合成獣(キメラ)は地上のタクマ達にも目視できるほどの存在感だった。

「嘘・・・⁉人間まで・・・⁉」

リーシャは口元を押さえて青ざめていた。

「人間まで合成獣(キメラ)の材料にしていたとは・・・!」

バハムートも汗を流す。

「アハハハ!アルル、こいつら怯えているよ?」

「ホントだホントだネーネ!大方人間を使ってたからかな?」

不吉な笑みをこぼす双子神。

「アルル、こいつら人間を使った玩具を出したらもっと恐怖に飲まれるかな?」

「確かに確かに。じゃぁもっと出してみよう!」

双子神は躊躇なく次々と人間を使った合成獣(キメラ)をこれでもかと出し続ける。

それは余りにも無残な姿に変えられた人間の成れの果てだった。

「何て光景だ・・・!」

あまりの光景にバハムート達も後ずさりする。

「アハハハ!アルル、こいつら面白い!」

「そうだねそうだね!アハハハ!」

「「アハハハハハ‼」」

面白くなったのか双子神の笑いが木霊する。

その時だった。

一閃の斬撃が双子神の頭上に展開されていた魔法陣を粉々に打ち砕いたのだ。

「ハ?」

地上では蒸気が出ている剣を構えたタクマが立っている。

そして彼からは恐ろしく感じるほどの殺気が溢れ出ていた。

「タクマ・・・?」

タクマはゆっくりと前に出る。

前方では無数の合成獣(キメラ)がタクマに迫ってきているが、

「どけよ・・・。」

次の瞬間、迫ってきた合成獣(キメラ)が全てバラバラに切り裂かれたのだ。

タクマは一歩も動いていないにも関わらずだ。

いや、実際には動いていたがあまりの速さに何もしていなかったように見えただけだった。

「アルル、何?今の・・・?」

「分からない・・・見えない見えない・・・。」

双子神から笑顔が消えた。

そしてタクマは上空にいる双子神を見上げる。

「初めてだぜ・・・。ここまで相手を殺したいと思ったのは・・・‼」


 岩陰に隠れていたリーシャ、リヴ、メルティナもタクマの放つ殺気に恐怖を感じていた。

そして分かったことがある。

彼はこれまで以上に怒っていることを・・・。

「何なのこの殺気・・・震えが止まらない・・・!」

あのリヴでさえ、青ざめた表情で震えていた。

メルティナも号泣寸前の状態だった。

唯一リーシャだけは何とか冷静を保っているが。

「あんなに怒ってるタクマさん、初めてです・・・。」

命を重んじず、平気でその命を弄ぶ双子神にタクマの怒りが頂点に達したのだろう。

(でも何だろう?あの怒りから、凄く嫌な感じがする・・・!)


 凄まじい殺気を放つタクマに双子神は一瞬ビビるも、

「フフッ、アハハハ!アルル、アイツもしかしたら僕たちを殺す気でいるみたいだよ?」

「滑稽滑稽、人間ごときが神を倒せると思ってるの?」

人間であることを軽視する双子神。

だがタクマは表情を何一つ変えず、双子神を睨み続ける。

「・・・何だよその目は?」

「僕たちは神だ!そんな目で見るな見るな!人間‼」

一斉に合成獣(キメラ)をけしかけてきた。

「旦那!この鳥もどきはオレが相手する!旦那はタクマを頼むわ!何かアイツから嫌な気配を感じるんや!」

そう言い残し、ウィンロスは鳥の合成獣(キメラ)と戦闘を開始した。

(我でも気づいている。タクマから溢れる異様と呼べるこの邪気・・・、ただの怒りではない。何か別の・・・、別の何かだ!)

今も尚双子神を睨むタクマ。

すると剣から炎が溢れ出し、タクマを包むと炎の竜化の姿となる。

炎の翼で飛翔し双子神に迫る。

「アルル、こっち来たよ?」

「身の程知らず、落とせ落とせ!」

双子神も無数の光の球の雨を降らし、迎え撃つ。

タクマは降り注ぐ光の球を弾きながら真っ直ぐ双子神と距離を詰める。

そして炎の剣で双子神に切りかかる。

双子神は互いに離れ攻撃を避けもタクマはすぐさま片方に向かって剣を振り下ろす。

「このっ!」

アルルに切りかかったタクマだが咄嗟に持った光の盾で受け止められる。

「ネーネ!」

背後から光の剣を持ったネーネが切りかかってきた。

タクマは翼の炎を強く燃やし、熱風で光の剣を押し返す。

「熱ッ⁉」

たまらずネーネは距離を取った。

「よくも!」

アルルが光の盾でタクマを押し返し、すぐさまネーネが剣で斬撃を繰り出す。

タクマはその斬撃もかわし距離を取る。

「僕たちをあまく見ないでよ?」

「剣と盾、僕達二人なら最強最強!」

だがタクマの目は変わらず恐ろしい目つきをしている。

まるで何かに取り憑かれているかのように。


 一方、地上ではバハムートが一人で無数の合成獣(キメラ)を相手していた。

そこに壁沿いを通ってリヴ達が合流した。

「おじ様!」

「お主等か。」

後ろからついてきたリーシャの様子が少しおかしかった。

「・・・・・。」

「・・・娘よ、考えるだけ無駄だと思え。残酷かもしれんが、あぁなってしまっては救い出す手はもう存在しない。」

合成獣(キメラ)にされた人間たちを指して言うバハムート。

そしてリーシャは異空庫から杖を取り出し顔を上げる。

「あの人たちは、苦しんでいますよね。だったらせめて・・・その苦しみから解放させる。それが今私達に出来る最善策です。」

悲しそうな表情で杖を構え、覚悟を決める。

「白娘よ、お主は我の背に捕まっていろ。防壁で守りながら戦う。」

「わ、分かりました。」

メルティナを背に乗せ防壁で包み込む。

「我らで奴らを救うぞ!」

「はい!」

「えぇ!」


 そしてタクマサイド。

怒りに燃えるタクマとそれぞれ剣と盾を装備する双子神が睨みあっていた。

「アルル、どうする?アイツまだ僕達と戦うつもりらしいよ?」

「だったらこうしようこうしよう!神に刃を向けた報い、徹底的に知らしめてやろうよ!」

余裕の態度で言う双子神。

そして・・・、

「散っ‼」

二人は互いに離れ、両サイドからタクマに仕掛ける。

「スゥーッ・・・!」

タクマは息を深く吸い込むと僅かな一瞬で二連撃を繰り出し双子神の攻撃をほぼ同時に受け止めた。

そのまま二対一の激しいぶつかり合いになり、空中を駆け巡る。

「面白い面白い!こんな人間初めてだ!」

「アルル、行くよ!」

双子神も息をもつかせぬ連携で攻め立てる。

相手の攻撃をアルルの盾で受け止め、攻撃をネーネが務める。

まるで一人の騎士と戦っているかのような連携ぶりだった。

「アハハハ!どうした、その程度?」

タクマに反撃の隙を与えまいと言わんばかりの流れる連撃が続く。

タクマも受け止め続けるだけで反撃もしなかった。

「力を持ってても所詮人間人間!」

「神の僕達には到底及ばない!」

アルルが盾でタクマを押し止め、すかさずネーネが鋭い一撃を食らわした。

タクマはそのまま落下していき地面に激突した。

「タクマさん⁉」

地上で戦っていたリーシャ達が叫ぶ。

「アハハ!アルル、やっぱり人間は弱いね。」

「弱い弱い!これじゃ退屈凌ぎにもならないね。」

ゆっくりと高度を下げてくる双子神。

「アルル、つまんないしそろそろ終わらせる?」

「そうだね。まだ別の場所で実験もしたいし終わらそう終わらそう!」

双子神は互いに手を合わせる。

すると遥か上空から凄まじい轟音と魔力反応が現れたことに気づく。

よく見ると上空が徐々に明るくなってきた。

何かが落ちてくる。

「な、何ですか?」

「・・・まさか⁉」

バハムートが上を見上げると遥か上空に巨大な隕石が落ちてきているのが見えた。

「あれは、上位魔法の『メテオ』⁉」

しかも発動者が神なだけあってその『メテオ』はとんでもない大きさとなっていた。

「アハハハ!恐ろしいだろ?絶望だろう?」

「皆消えちゃえ消えちゃえ!」

「何考えとんのやガキども!あんなん落としたら火山が噴火してまうやろ!集落にはまだ人間居んのに、ましてや地上にはお前らの合成獣(キメラ)にされた人間だって居るんやぞ⁉」

ウィンロスが鳥の合成獣(キメラ)と取っ組み合いながら双子神に叫んだ。

だが双子神が出した答えは、

「はぁ?前任の創造神が作った生命に価値なんかないよ?時代はもう新生創造神様の物なんだから。いらない物を排除して何が悪いの?」

「要らない要らない、ゴミ掃除!」

とんでもない事を言い出す双子神。

現在この世界に生きている人間を要らない存在、ゴミとして認識ていたようだ。

その返答を聞いたリーシャ達は怒りが爆発しそうだった。

「っ・・・・ふざけ・・・‼」

その時だった。

突然地面から黒い触手のような無数の影が飛び出したのだ。

全員が驚き、影の方を見るとそこには身体からどす黒いオーラを放ち、ゆらりと立ち上がるタクマが現れた。

その姿は明らかに異常で眼光は血のように赤く光っていた。

まるで黒い化け物のように・・・。

「タクマ、さん・・・⁉」


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