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『第四十七章 左翼の存在』

翌日、メルティナが目を覚ましたことを合流したヴェンとガンジに伝えた。

おっさん二人もメルティナの元気そうな様子を見て安心したという。

一行は再びトレンストを目指して出発した。

「ん~・・・。」

「どうした、ウィンロス。」

「いや、痛みも大分引いてきてな?包帯がちょいと鬱陶しくなってきてん。」

「どれどれ?」

リヴがウィンロスの背に乗り歩きながら包帯を解いていく。

「傷は完全に塞がったわね。もう包帯が無くても大丈夫そうだけど飛ぶのはまだやめといたほうがいいわ。まだ傷の膜が薄いから。」

「あいよ。」

ちなみにタクマはもう完全に回復し、額の包帯は既に外していた。

「あとどれくらいでトレンストに着きそうなんだ?」

タクマがヴェンに聞く。

「ここまで来たら夕暮れまでには着くはずだ。」

目的地まであと少しのようだ。

「この鉱石の量を見たらアイツ等驚くだろうな。」

「あぁ、どんな顔するか楽しみだ。」

おっさん達が悪い顔をする。

しばらく道のりを進んでいると少々深い森に差し掛かった。

日の光はあまり届いておらず不気味さを感じる森だ。

「何かちょっと怖いです・・・。」

「うん・・・。」

リーシャとメルティナは揃ってリヴの後ろに隠れる。

「おかしいな?行きに通った時はここまで暗い雰囲気じゃなかったんだが・・・。」

ヴェンが不審に思っていると木々から突然数羽の鳥が飛び立った。

「きゃぁぁぁぁ⁉」

驚いたリーシャとメルティナは左右からリヴに抱き着く。

「両手に花やな。」

「うっさい。」

タクマは迂回するかと提案を出すがこの森を抜けなければトレンストにはたどり着けないと言う。

「ウィンロスはまだ飛べないし・・・どうしたものか。」

「進むしか無かろう。我が周囲を警戒する故お主等は道に迷わぬよう印を付けながら進め。」

バハムートの提案を飲み一行は森に入った。

奥に進むにつれて徐々に日の光が少なくなってくる。

今のところ近くに魔獣の気配はないが、ここまで視界が悪いといつ何が起こるか分からなかった。

「気を付けろよ?いつ足元を救われるか分からないからな。」

「うわっと⁉」

突然後ろから大きな音とウィンロスの叫び声が。

振り返ると太いつる草に足が絡まり、逆さ釣りにされたウィンロスの姿があった。

「・・・文字通り足元を救われたで。」

「やかましいわ。」

そんなこともありながら慎重に森を進む。

女子組は終始リヴにくっついたまま歩いてた。

「ちょっと、歩きづらいんだけど・・・?」

「ご、ごめんなさい・・・。でもどうしても怖くて・・!」

「メルティナは分かるけど、アンタ中身は大人なんでしょ?ビシッとしなさいビシッと!」

「いくつになっても怖い物は怖いんですよ!」

歳相応らしく、リーシャは肝が小さいらしい。

涙目になりながらもリヴにしがみつく。

「流石に二人はキツイわ・・・。こうなったら・・・。」

リヴはリーシャを抱え上げる。

「え?」

「セイヤァァ‼」

「えぇぇぇぇ⁉」

ウィンロス目掛けて思いっきり投げ飛ばした。

そのままリーシャはモフモフの羽毛にバフッと収まる。

「ぬぉっ⁉何や⁉」

背中に振り向くとリーシャが乗っかってる。

「急にどうしたん、嬢ちゃん?」

「・・・フ。」

「?」

「モフモフだぁ・・・!」

表情が緩むリーシャ。

恐怖を忘れてウィンロスの羽毛を堪能していた。

「ほんとになんやねん・・・。」


 昼でも薄暗い森。昼でここまで暗いと日没までには森を出たい。

少しペースを上げて森を突き進むタクマ達。

すると先頭で周囲を警戒していたバハムートが突然止まる。

「止まれ!」

耳を澄ますと遠くからガサガサと草木が揺れる音が鳴っていた。

「動きに統率が取れている。群れだ。囲まれているぞ!」

次第に音が近づいてくる。

そして草むらから魔獣が飛び出してきた。

「おりゃぁ‼」

ウィンロスが尻尾で魔獣を弾き飛ばす。

するとぞろぞろとオオカミ型の魔獣が数頭現れた。

「レッサーウルフか。単体では差ほど脅威ではないが数が多い。手分けして蹴散らすぞ!」

「分かった!」

馬車とヴェン達をウィンロスとリヴに任せ、残りのメンツはレッサーウルフの相手をする。

「居合・竜炎斬‼」

タクマの斬撃、バハムートのブレス(弱)、リーシャの魔術。

それぞれが技を繰り出し、レッサーウルフを仕留めていく。

何匹か馬車の方へ襲い掛かったがウィンロスとリヴが容易く蹴散らした。

「タクマさん!後ろ!」

一匹のレッサーウルフ背後から迫るもタクマはしゃがみ、バハムートが尻尾で薙ぎ払った。

「ナイスバハムート!」

「お主も良い回避だ!」

バハムートの豪快な攻撃の邪魔にならぬよう、ひらりひらりと避けながらレッサーウルフを討伐していったタクマだった。

そして一通り全てのウルフを一掃し終える。

「天使に比べたら全然だぜ。」

「タクマ。まだ気を抜くなよ?」

群れで襲ってきたという事はボスがいるはず。

草木からレッサーウルフよりデカい大きなグレートウルフがタクマ達の前に姿を現した。

「ウォォォォン‼」

「ギャァァ⁉グレートウルフだーーー⁉」

「Bランクの強ぇ魔獣だーーー‼」

おっさん二人が叫ぶ。

「グルルル・・・!」

「ほう、我と戦おうというのか?犬がっ‼」

バハムートが威圧を放つ。

だがグレートウルフは一瞬ひるむも敵意を向け続ける。

「我の威圧を受けても引かんとは・・・、相当力に自信があるように見える。タクマ、この者の相手は我にやらせろ!」

体格的にもバハムートの方が戦えるだろう。

「分かった。馬車などは俺達に任せろ。思いっきりやってくれ!」

「無論だ!」

タクマとリーシャは馬車まで下がり、バハムートの魔法壁をコピーして馬車を囲むように展開した。

「グルァァ‼」

「行くぞ‼」

互いに突進し頭部でぶつかり合う。

その衝撃で周りの空気や木々が激しく揺れる。

「ふん‼」

バハムートは爪を立て振り下ろす。

ウルフはその一撃をかわしバハムートに体当たりする。

「むぅ⁉」

カウンターで尻尾の攻撃がウルフに直撃し、吹っ飛ばす。

「グルァァ‼」

「ウォォォ‼」

互角の戦いを繰り広げる二頭。

巨体故激しい戦闘で地面が揺れ、木々が折れ倒れる。

「とんでもねぇ光景だ・・・。」

ヴェンとガンジ、メルティナが息を飲んでその光景を見ていた。

「・・・旦那、加減しとらんか?」

「やっぱりそうだよな。」

忘れそうではあるがバハムートは最強の竜王である。

Bランクの魔獣相手に互角の戦いを繰り広げている時点で既におかしい。

「ここ最近戦闘らしい戦闘をさせてなかったからな。死神の時は脱出に専念してもらってたし。」

ウィンロスとリヴにも模擬戦闘をさせようかと思っていると早々に決着がついた。

「ハァッ‼」

「ギャン⁉」

バハムートの鋭い爪がグレートウルフを切り裂き、仕留めたのだった。

「物足りはしなかったが多少は運動になったぞ。」

討伐したウルフの死骸をまとめ馬車に放り込む。

ギルドに換金すれば多少の旅費になるからだ。

気を取り直して再び出発をする一行。

だがまたすぐバハムートに止められた。

「今度は何だ?」

「・・・見て見ろ。」

前方の広けた場所の中央に大きく奇妙な黒い魔石があった。

綺麗に加工されており明らかに人為的に置かれた物だった。

「おそらくこれが森を異様な雰囲気に変えたのだろう。」

何かが不審に思うタクマは魔石の前に立ち、鑑定スキルともう一つ『記憶閲覧』のスキルをバハムートからコピーし、同時に発動させる。

そうすることで魔石の記憶を見ることが出来るのだ。

『・・・ゴのようだ。この位置には龍脈も流れている。顕現石を設置するのに申し分ない。』

タクマの脳内に映ったのは見たことのある黒ローブの信教者数名だった。

(こいつらは・・・⁉)

タクマは閲覧に集中する。

『でも、こんな辺境にまで顕現石を設置する必要があるのかしら?他は向こうの大陸で設置しているのに・・・?』

『万が一を考えて遠い位置に置いとくんだ。向こうの顕現石が何らかの拍子で使えなくなってもこっちで予め用意しとけば計画に支障はない。』

男性と女性の信教者がせっせと魔石を設置している。

他の信教者は辺りを見回りながら警戒していた。

『・・・これで良し。次の場所に行くぞ!我ら『新生創造神の左翼』が神の恩恵を授かるために!』

(左翼⁉)

作業を終えた教団は森の奥へと消え、閲覧はそこで途切れた。

「・・・何が見えたのだ?」

立ち尽くすタクマにバハムートが声を掛ける。

「・・・例の女神に与する教団が魔石を置いていったみたいだ。」

「教団⁉だが奴らは壊滅させたはずでは⁉」

「新生創造神の左翼・・・、そう名乗っていた。」

「左翼だと・・・!」

よく考えてみればそうだ。

右翼と名乗っていたのなら左翼も存在するはずだと。

「盲点だったな・・・。」

「奴らはまだ動き回っている。奴等との戦いはまだ終わってない・・・。」


 森が不気味な雰囲気になった原因が見つけた魔石によるものだとヴェン達に説明した。

「タクマさん、もしかして・・・?」

流石にリーシャは誰がこの魔石を設置したのか理解したようだ。

「リーシャ、このことは内密にしとけ。ヴェンさん達にいらない不安を与えてしまう。」

小声でリーシャ達に釘を刺しておいた。

馬車を先に行かせタクマとバハムートの二人は魔石の前に残る。

「バハムート!」

「うむ!」

タクマは居合の構えを、バハムートは爪に魔力を込める。

「居合・竜炎斬‼」

「魔爪‼」

二人の技が魔石を粉々に打ち砕いた。

「これでこの森も元に戻るだろう。」

「では先に行った者どもを追うぞ。」

「おう。」

バハムートの背に乗りリーシャ達を追いかけた。

それからしばらく時間が経ち、粉々に散らばった魔石の所に一人のフードを被った人影が現れた。

「・・・複数の人間の魔力の残滓、それに魔獣の残滓も感じる。っ⁉この魔力は・・・()()()()⁉」

木々を揺らし風が吹くとフードが外れると黒い短髪の少女が顔を出した。


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