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『第四十四章 新たな刺客』

ダンジョンの奥で見つけた少女を抱え、ウィンロス達の元へ戻ってきたタクマ達。

「・・・。」

「・・・。」

「・・・。」

「・・・攫ってきたん?」

「おい。」

ヴェンとガンジ、リヴの三人はタクマが抱えた少女を見て固まっていた。

「ウィンロス、とりあえずこの子の回復をお願いしてもいいか?」

「お?おう、任しとき。」

少女をウィンロスに預け、互いに状況説明をした。

「すぐそこで倒れていたのか・・・。魔獣が居なかったとはいえ危なかったね。」

「まぁな、詳しい話はあの子が目を覚ました後でもいいだろう。で、そっちはどうだ?」

「おう!バッチリ取れたわい!これだけあれば目的の物が作れるぜ!」

ガンジは鉱石を取って満足そうに言った。

「でも正直拍子抜けね。このダンジョンが危険だっていうから警戒していたのにまったく魔獣が出てこないんだもん。」

「リヴ、そのことで少し話がある。ちょっとこちらに来い。」

バハムートに呼ばれ少し離れたところでリヴに説明する。

「じゃぁ二人の依頼は完了ってことでいいか?」

「あぁ、俺達の我儘を聞いてくれてありがとう!報酬はギルドで上乗せさせてもらうよ。」

採取した鉱石を鞄に詰め直し、一同は帰り支度を始める。

「・・・なるなる、魔獣が出てこなかったのは主様が連れてきたあの子供が原因かもしれないってことね。」

「うむ、あの少女から感じる魔力が他の人間とは明らかに異なる。正直言って人であるのか怪しい程だ。」

「人外ってこと?」

「かもしれんということだ。」

タクマ達を背に二頭は少女が何者なのか気になっていた。

「よし!準備は終わったぜ!魔獣がいない内にさっさとダンジョンから抜けちまおう!」

ガンジが大量の鉱石が詰め込まれたバッグを背負って言った。

「・・・大丈夫ですか?ヴェンさん。」

リーシャの見る先にはバッグが重すぎて中々立ち上がれないヴェンの姿があった。

「いやぁ、昔はこの程度何ともなかったんだけど・・・年には勝てないね・・・。」

このまま無理をしたらギックリ腰になりそうな彼を見てバハムートが提案を出した。

「なら我のスキル『空間異動』で街の入口まで送ろうか?」

「そんな事できるのかバハムート?」

「うむ、対象物を選ぶだけで何でも転移させられるぞ。」

何とも万能なバハムートのスキル。

来た道を戻るよりその方が一番手っ取り早く安全だ。

「だが欠点がある。その大量の鉱石を含めると一度に転移させられるのはお主ら二人までだ。その後再発動まで多少タイムラグがあるが・・・。」

ヴェンとガンジは顔を見合わせ、申し訳なさそうにタクマを見るが、

「あ、俺達の事は構わないでくれ。これでも腕には自信があるからな。魔獣が現れても大丈夫だ。」

「私も大丈夫です!」

「クゥ~!」

リーシャとラルも元気よく返事した。

「そうか、すまない。俺達が転移し終えたらすぐに君達も脱出してくれ。」

「アンタらに心配される程こっちは弱くないで?」

ウィンロスに言われ、ヴェンとガンジは安心してバハムートの『空間異動』で街へと転移していった。

「・・・さて、俺達は徒歩で帰るか?」

「そうしようよ。戦闘が出来なくて不完全燃焼なんだから。」

「リヴさん。何事も安全が大事ですよ?」

「そうだ。今は娘の言う事が正しい。この少女も出来れば共に転移させたかったがあの二人と鉱石で限界だった。少女のためまずは一早くここを出た方がいい。」

バハムートの意見にリヴは仕方なく同意し、一同は来た道を戻ろうとした。

だがその時だった。

「・・・ん⁉」

突然背後から異質な気配を感じ取ったタクマ。

振り向くと空間にヒビが入っていることに気づく。

ヒビは徐々に割れていき、中から巨大な鎌を持つ黒フードの青年が現れた。

「あ~っ、やっと着いたぜ~!」

猫背で細身の青年はふとタクマ達の方を向いた。

「あ~?何だぁテメェ等?」

青年を見たタクマ達はゾッと恐怖に包まれる。

彼の目には恐ろしい程の殺意が込められていたからだ。

(こいつはヤバい!こいつは()()()()()()()()()()()()‼)

タクマとリーシャは武器を構え、全員戦闘態勢に入る。

すると青年の目線はウィンロスが抱える白髪の少女に移った。

「ケヒヒヒッ、見~つけた!」

おぞましい笑みを浮かべる青年は少女へ切りかかる。

振り下ろされる鎌をタクマがギリギリで受け止めた。

「あぁ?」

「ふん‼」

剣を思いっきり振りかぶり、青年を弾き飛ばした。

(なんて速さだ・・・、もう一瞬反応が遅れたらこいつ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!)

青年からは人ならざる気配を感じる。

どう考えても奴は人間ではない事は明確だった。

「んだよ、人間ごときが俺の邪魔をすんなよな?」

だらんとした体勢で話しかけてくる青年。

いや、青年である以前に彼は・・・、

「死神か・・・!」

バハムートが答えた。

「死神って、あの死神ですか⁉確かに黒いフード被ってて大きな鎌を持ってますけど・・・!」

驚くリーシャの横でタクマが前に出る。

「・・・死神が何の用だ?」

剣を持ち警戒しながら問いかけた。

「人間に答える義理はねぇな?俺はただ言われたことをやりに来ただけなんだよぉ。」

死神の青年は答えようとはしなかった。

だが先ほどの攻撃である程度の狙いは把握したつもりだ。

奴の狙いはウィンロスの抱える少女だ。

理由はまだ分からないが奴をどうにかしなければこの状況を突破することは出来ないことを全員理解していた。

「・・・リヴ、頼むわ。」

「え?うわっとと⁉」

ウィンロスは少女をリヴに預けた。

「俺じゃデカい的になってまう。子供はあんさんに任せるで。」

「・・・分かった。」

ウィンロスはタクマ達と前線に出る。

「おいおい、人間が死神の邪魔をすんのか?」

「当たり前だ。突然出てきて見知らぬ少女を目の前で虐殺されてみろ。黙ってるわけねぇだろ!」

居合の構えを取り、一直線に突っ切る。

「居合・一閃‼」

高速の太刀が死神を切る。

だが・・・、

「・・・ぬるいぜ。こんな攻撃。」

死神は無傷だった。

それどころか手応えがなかった。

まるで身体がすり抜けたかのように。

「オラくらえやぁぁぁぁ‼」

ウィンロスが頭上から蹴りを放つ。

今度はその攻撃を避けた。

「逃がさん‼」

すかさずバハムートが爪で追撃する。

が、バハムートの爪も死神をすり抜けたのだ。

「何⁉」

「無駄だぁ、俺には傷一つ付けられねぇぜ?」

そう言い死神は鎌を振り回すと周りを囲うようにつむじ風が現れた。

バハムートは一早く察知し二人に呼び掛ける。

「いかん!防御しろ‼」

「ティリャァァァァァ‼」

まるで爆発のようにつむじ風が散乱し辺りの壁や鍾乳石を切り裂きまくる。

「ぐおぉぉぉぉ⁉」

バハムートは魔法壁を展開するも勢いが強くそのまま壁まで押し出された。

「きゃぁぁぁぁ‼」

「危ねぇ‼」

リーシャ達の方にも風の刃が届きウィンロスがすかさず目の前の地面を蹴り、地面の壁を建て何とか全員無事に済んだ。

「何て攻撃だ・・・。」

タクマは太い鍾乳石の陰に隠れ難を逃れたが、死神の放った風の刃で空洞のあちこちが傷だらけになっていた。

「ヒャハハハハハ‼どうした?まさかこの程度の攻撃で怖気づいたのか?」

有無を言わさない流れで今度は斬撃を飛ばしてきた。

辺りの鍾乳石が次々と砕かれていく。

タクマは石の影を移動しながらウィンロス達の元へ移動する。

「死神のくせにやたらと戦闘気質だな!あと性格も危なすぎる!」

死神の頭上からバハムートがブレスを放つもひらりと避けられた。

死神はゴーストのような動きで空洞内を飛び回る。

バハムートも負けじと追い回すがいくら広い空洞と言えど室内。

それに垂れ下がった鍾乳石が邪魔でうまく飛び回れなかった。

(くっ!環境も含めてこちらに分が悪い。なら・・・!)

バハムートはタクマに念話を飛ばす。

「・・・分かった。時間さえ稼げればいいんだな?」

「頼む!」

「任せとけ!」

炎に包まれ、火の竜化となったタクマは飛翔して死神の前に立ちはだかる。

「お前の相手は俺だ!」

「キヒヒヒヒ!面白れぇじゃねぇか、任務の前に俺を楽しませろや‼」

鎌と剣がぶつかり大規模な空中戦となった。


 一方、バハムートはリーシャ達の元へ降り立ちすぐに魔法陣を展開した。

「これって、『空間異動』の魔法陣⁉」

「タイムラグが解けるまであと数分。あの死神に後をつけられぬよう予め展開しておく。我が合図を送ったらタクマがこちらに来たと同時にダンジョンから離れた所まで転移する!」

相手は得体のしれない死神。

どんな力を有しているかさえも分からない。

保護した少女の事もあり足跡を残さない撤退が最善策だった。

「じゃぁタクマは今魔法発動の時間稼ぎをしてるんやな?」

「あぁ、お主等も我から離れるな。転移に乗れなかったら命がないと思え!」

そして死神を相手に激しい戦闘を繰り広げるタクマはバハムート達に視線がいかないようにしながら死神と戦っている。

「ヒャハハハ‼いいぜ、いいぜ‼お前やるなぁ‼ここまで俺と戦える奴は初めてだ‼」

タクマとの戦いが楽しくなったのか、死神の攻撃速度はどんどん上がっていく。

(早い、時間が経つにつれて鎌さばきが激しくなってくる!長期戦になるとこっちが不利になる!)

なるべく攻撃を受け流しやすい距離を保ちながら時間を稼ぐタクマ。

すると死神の青年が攻めに入った。

「もっと俺を楽しませろぉ‼」

死神の青年は息を大きく仕込む。

「『死術(しじゅつ)怨狂深淵(おんきょうしんえん)』‼」

けたたましい叫び声を発する死神。

「ウオォォォォォォォォ‼」

耳をつんざく音波が響き渡る。

しかも空洞内にいるため、その叫び声の威力は倍増。

八方からタクマ達を襲う。

「きゃぁぁぁぁ‼」

「ぬおぉぉぉぉ⁉」

耳を塞ぎ耐えるリヴ達。

バハムートは魔法陣の展開中で耳を塞ぐことが出来ず、根性で耐える。

だがその時、音響を受けたリーシャに異変が起こった。

突然呼吸が荒くなり、その場に倒れこんだ。

「リーシャ⁉」

「うぐ・・・が、が・・・あぁ・・・‼」

頭を抱えるリーシャ。

目は視点が定まらず、悶え苦しむ。

「いかん!リヴ!娘をこの音響から守れ!」

バハムートが叫ぶ。

リヴは訳がわからずだったが言われた通りリーシャの周りに水のドームを作った。

水に包まれたことによって音がある程度緩和され、リーシャの症状は落ち着きそのまま気を失った。

「何が起こったの?」

一方、タクマも死神の音響による影響を感じ取っていた。

(っ‼この音響、ただの叫び声じゃない!)

異変を察知したタクマは火の竜化から水の竜化に切り替え、自身を水の球で身を包んだ。

そのまま後方へ飛び、バハムート達の近くまで戻ってきた。

「バハムート、魔法陣は⁉」

「もう直だ!戻れタクマ‼」

念話で言葉を交わし、タクマは急いでバハムートの魔法陣へ向かって速度を上げる。

「おいおいどこ行く気だ?俺との勝負はまだ終わってねぇぞ‼」

死神の青年が鎌の形をした斬撃を放った。

回転しながら飛んできた斬撃はタクマを通り越し魔法陣に刺さり、陣の一部が欠けてしまい効力を失ってしまった。

「しまった‼」

焦るバハムートは急いで魔法陣の修復に入るがその前に死神がタクマとほぼ同時にこちらにやってきて一網打尽にされてしまうのは明白だった。

「くっ!」

タクマはもう一度水から火の竜化に切り替え死神を迎え撃とうとする。

「遅ぇんだよ‼」

先手を取られてしまい死神の鎌がタクマに振り下ろされる。

咄嗟に剣で受け止めるも対応しきれず、タクマは後方に思いっきり叩きつけられてしまった。

「タクマ!」

「主様!」

ウィンロスとリヴが呼び掛ける。

幸い飛ばされた先は魔法陣の中だったがこれは返ってまずい状況だ。

死神が迫ってきたのだ。

まだ魔法陣の修復は終わってない。

タクマはダメージで動けずバハムートも陣の修復で動けない。

リーシャは気絶しており、リヴは少女を抱え守るのに精一杯。

「クソが!」

唯一無傷のウィンロスが前に立った。

「これ以上仲間を傷つけられてたまるか!オレが相手したるわぁ‼」

「ケヒャヒャヒャ‼ドラゴンが相手か‼おもしれぇじゃねぇかぁ‼」

死神の青年は再び複数の鎌状の斬撃を飛ばしてきた。

先ほどよりも大きなサイズだ。

「ダメだ!逃げろウィンロス‼」

いくらウィンロスでもあれを食らったら命が危ない。

しかしウィンロスに避ける気はなく、あの斬撃を受け止める姿勢を取っていた。

「根性やぁぁぁぁ‼」

その時だった。

小さな影がウィンロスの前に出てきた。

「クァー!」

「ラル⁉」


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