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『幕間の外伝 異世界バレンタイン』

時折、このような幕間も入れていきます。

彼らの生活メインのお話です。

「ふ~ふふんふんふ~ん♪」

旅の途中、とある街に滞在中のタクマ達。

その街のギルドにてリーシャが厨房を借りて何かを作っていた。

「クゥ~?」

「ダメだよラル。飛んだら羽が落ちちゃう。」

ラルも不思議そうに辺りをうろつく。

リーシャの前に広がるのは菓子用の調理器具とこげ茶色の液体をボウルに入れて混ぜいている。

そこにリヴが厨房に入室してきた。

「リーシャ?何か作ってるの?」

「リヴさん!今日は何日か知ってます?」

「え?二月十四日だけど?」

「そう!二月十四日、即ち・・・バレンタインです‼」

ビシッと決めるリーシャ。

だがリヴとラルは首を傾げた。

「ばれんたいん?何それ?」

「クゥ~?」

「・・・・・え?」

リーシャは耳を疑う。

わなわなと震えながらリヴ達に向く。

「それは・・・リヴさんはドラゴンだから、人間の風習を知らないんじゃなくて・・・?」

「何度か地上に赴いことからある程度の風習は把握してるつもりだけど、ばれんたいんなんて言葉は一度も効いたことが無いわね。」

「ちょ、ちょっと待っててくださいね?」

そう言い、リーシャは厨房を出ていくとしばらくして戻ってきた。

「今、その辺にいる女性の人たちに聞いて回ったけど・・・誰もバレンタインの事を知ってませんでした・・・。」

リーシャはガクッと肩を落とす。

どうやらこの世界ではバレンタインという風習が存在しないみたいだ。

「私達が知らないってことは、あんたの前世の世界での風習だと思うんだけど?」

「はい、その通りです・・・。私の前世では二月十四日は想い慕う男性の方にチョコを渡すお祭りがあるんです。中にはそれを期に自分の好きな男性に告白を持ちかける人も多くいました・・・。」

よよよと泣き崩れながらもリヴに説明をした。

「この世界でもチョコレートの存在があったからてっきりバレンタインもあると思ったんですが・・・。」

「知ってたのはあんただけだったって訳ね・・・。」

そこでリヴはふと考える。

(この子の前世ではそんな風習があったのね。それにしても、思い慕う男・・・そして好きな男に想いを伝える・・・。ふ~ん?)

何やら意味深な笑みを浮かべた。

(好きな男、つまり主様の事!こんな風習があるなら乗らない手は無いわ!)

「この風習は私達しか知らないってことよね?」

「ショックですけど、その通りですね・・・。」

「面白そうじゃない。私もそのチョコってお菓子を作るわ!」

「え?」

急にやる気に満ち溢れるリヴ。

一体何を思っての事だろうか。

「リーシャ!そのばれんたいんのこと、もっと教えて!」

ぐいぐい来るリヴに多少押されながらも二人は楽しく彼らに贈るチョコを作り続けた。


 その日の夜。

厩舎の庭にて一同が食事を済ませると、

「リヴさん!(小声)」

「うん!(小声)」

二人は異空庫をゴソゴソする。

「ん?」

「む?」

「何や?」

何事かとこちらを見る三人。

そして二人はリボンのついた箱を取り出した。

「まずは大本命から!」

「よし!」

箱を手に二人はタクマの前に立つ。

「どした、二人とも?」

「タクマさん・・・、」

「主様・・・、」

「「これをどうぞ!」」

タクマに二つの箱が手渡された。

当然タクマもバレンタインを知らないため、何が何だか分からなかったが。

「何だこれ?」

「日頃の感謝の贈り物です!ささ、開けてみてください!」

そう言われ二つの箱を開けると、リーシャからは綺麗にデコレーションされたチョコのカップケーキ。

そしてリヴからはシンプルなハート形のチョコが入っていた。

「チョコ菓子?今日何かあったっけ?」

まだ理解が追い付かないタクマにリーシャが説明した。

「私の前世では二月十四日に日頃の感謝を込めて女性が男性の方にチョコを贈るお祭りがあるんですよ!」

「で、その話を聞いて私も大好きな主様に贈ったってわけ!」

説明を聞いたタクマは少し恥ずかしそうに頬をかいた。

「そんな祭りがあるんだ。二人ともありがとな!」

満面の笑みでお礼を言うタクマ。

リーシャとリヴは顔を赤くし俯いた。

「そうそう!おじ様とウィンロスにもあるわよ!」

「何っ⁉オレらにもくれるんか⁉」

「ほう。」

二頭にもチョコが渡される。

「でも本当に美味そうだな。食べていいのか?」

「どうぞ、召し上がってください!」

三人はまずシンプルなリヴのチョコを食べた。

すると三人の表情がだんだん微妙になっていく。

「・・・これは。」

「しょっぺぇ‼甘いのとしょっぺぇのが交互に襲ってくるで⁉」

「リヴ・・・何これ?」

「リヴさん?」

全員がリヴに説明を求める。

「フッフッフ、私は海の帝王よ。私らしく海を使って作ったのよ!」

「何を使った?」

「海水。」

「海ってまんま海水かい‼」

ウィンロスの全力のツッコみが炸裂した。

その後、三人は頬がとろけるほど美味しいリーシャのカップケーキで口直ししたという。


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