『第三十六章 船旅』
お待たせしてごめんなさい。
これからは完成次第投稿をしていきますのでよろしくお願いします。
「いやっほ~‼」
巨大なガレオン船の先端でウィンロスが翼を大きく広げ海風を浴びていた。
「ウィンロス、翼を広げるな。空気抵抗で速度が落ちる!」
「あ、すまんすまん。」
サッと翼を畳んだ。
現在、タクマ達は以前海清掃の依頼で知り合った輸入船の船長ガインに船に乗せてもらい、隣のエルドラ大陸へ向かっていた。
輸入船とは聞いていたが、まさかバハムート達が乗ってもビクともしない程の巨大なガレオン船がガインの愛船とは驚かされた。
「ガハハッ!荷物を運ぶのが仕事だからな!これくらいデカくなきゃ海の男とも言えんだろ!」
とのことだった。
「ふむ、船に揺れるのも悪くない。」
バハムートはすっかりくつろいでいる。
ただ後ろで船の脅威に当てられた奴が一人いた。
「おぇ~・・・!」
「あ~、大丈夫?」
船酔いに当たったリーシャの背中をリヴが優しくさすっている。
「めっちゃ安定して揺れづらい船なのになして酔うねん・・・。」
「なんか前世から乗り物にはあまり強くないらしいぞ?」
リーシャは魂が抜けたような表情になっている。
「・・・ご愁傷様や。」
ウィンロスが翼で手を合わせた。
それからしばらく、何事もなく船旅を楽しんでいるとクル―の一人が前方で何かを見つけた。
「船長!前方で何かしぶきが上がっています!」
「あれは⁉」
タクマも先端に駆けつけ、鑑定スキルで目を凝らす。
「ホワイト・サーモン?魚の群れがあの辺に集まっているみたいだな。」
「ホワイト・サーモンだと⁉」
ガインはその名に反応した。
「ホワイト・サーモンはこの時期にしか捕れない高級魚だ。脂がのってて美味いぞ!」
「なんやて⁉」
「むっ!」
バハムートとウィンロスはバッと顔を上げる。
「考えることは一緒のようだな。」
「せやな・・・。」
二頭は互いに頷くと船から飛翔した。
「おーい⁉どこ行くんだ⁉」
ガインが叫ぶ。
二頭はホワイト・サーモンの群れに近づくとまずバハムートが魔法壁を三枚展開し海中へ投げ入れた。
その次にウィンロスが猛スピードで海に突っ込み魚を追い込む。
群れが囲まれた魔法壁に入るとバハムートはすかさず四方と底を塞ぎ魔法壁を上げた。
「大量だ!」
箱型の魔法陣の中には数十匹のホワイト・サ―モンが入っていた。
「ホント器用だな。アイツ・・・。」
タクマが感心していると、ガインがクルーに呼び掛けていた。
「俺たちも負けてられねぇ。お前ら‼」
「「ヘイ‼」」
「今夜の晩飯はホワイト・サーモン尽くしだ!釣って釣って釣りまくれ‼」
「「アイアイサー‼」」
船のあちこちから釣り糸が垂らされ次々とホワイト・サーモンを吊り上げるクルー。
まさに入れ食い状態だ。
そしてわずか数分でかなりの量が取れた。
「すごい量・・・。」
リヴが山積みになったサーモンを見て言った。
「しかしまいったな・・・。これ程獲れるとは思わなかったぞ。全員で食いきれるか怪しいし、何よりまず俺たちは料理が出来なかったぜ。」
まさかの失態。
ガインは頭をかいた。
「その点は心配いらぬぞ。」
バハムートが指をさすと、
「うおぉぉぉ‼復活です‼」
リーシャがガバッと起き上がった。
ウィンロスに状態異常回復のスキルをかけてもらい船酔いから解放されたのだ。
復活するな否やリーシャはサーモンの山に目が止まる。
「うわっ⁉何ですかこの大量のお魚⁉」
「さっき皆で獲ったんだ。そしていいタイミングだな。リーシャ。」
「?」
その夜、月明かりが照らす海の中、一隻の船の光があった。
「それでは・・・、クッキング開始です‼」
髪を後ろに束ねナプキンとエプロンを身に着けたリーシャ。
異空庫にしまっていた包丁も手に取りやる気十分だ。
隣にいるタクマもある程度料理ができるのでリーシャの助手である。
「ではまず鱗から取りましょう。頭からお尻にかけて流れているので逆側から引っ搔いていけばバリバリ取れます!」
「うぉっ!ホントだ。めっちゃ取れる!」
これだけの作業なら料理経験のないクルー達でもできるので幾つかのサーモンをお願いした。
そして数十匹のサーモンの鱗取りが終わるとリーシャは次の工程に移った。
「次はさばきます。」
頭を切り落とし、綺麗にサーモンをさばいていく。
「よし、こっちはホイル焼きとカルパッチョを作るからリーシャはムニエルを頼む。人数が多いから数が必要だ。」
「了解です!」
役割を降り、せっせと調理する二人。
手慣れた手つきでたくさんのサーモン料理が出来上がった。
「さぁ、完成だ‼」
「うおぉぉぉ‼」
出来上がった料理に全員が食らいつく。
「美味ぇ!昔にホワイト・サーモンは食ったことあるけどこれはダントツで美味い‼」
「サーモンを生で食うなんて生臭くてありえないと思ってたけど、このカルパッチョって料理も美味い‼」
クルーの人たちには大好評のようだ。
「かぁ~っ!やっぱ嬢ちゃんたちの作る飯が一番やで!」
「チーズが無いのが不満だがこれはこれで美味いな。」
「主様と契約して良かった~!」
「クゥ~っ‼」
四頭も幸せを噛みしめている。
「悪いな坊主、嬢ちゃん。俺たちの分まで飯を作ってくれてよ。」
ガインが側に寄ってきた。
「大丈夫ですよ。私、料理大好きなので!」
リーシャは器具を片付けながら言った。
すると食事中のクルーの一人が後片づけをするタクマとリーシャを見て言葉を漏らした。
「モグモグ・・・、何かお二人を見てると夫婦に見えますね。」
「え?」
「フウっ⁉」
一番反応が強かったのはリーシャだった。
「なななっ、何を言ってるんですか⁉」
顔を真っ赤にして焦る。
タクマも少し気恥ずかしそうに頬をかく。
「いや、傍から見たら仲良く料理している新婚さんに見えたもんで。」
「はう~っ・・・。」
顔を覆い丸くなるリーシャ。
その姿がとても可愛くクルーの全員が和んだ。
その様子を食べながら見ていたリヴはリーシャの事が面白くないのか、ぶす~っとしていた。
(主様の第一妻の座は私が獲るんだから!)
「ウィンロス、お主飛んで陸に戻りチーズを買ってこい。」
「無茶言わんといてっ⁉」
夜の海に賑やかな笑い声が響いたのだった。
その日の深夜、皆が寝静まる夜の海で船の上に一人の影が座っていた。
「・・・。」
「主様?」
「リヴ・・・。」
「寝ないの?」
「あぁ、目が冴えちゃってな。」
するとリヴはタクマの隣に腰を下ろした。
「何か悩みがあるんでしょ?」
「・・・バレてたか。」
「当然よ!私は主様の従魔なんだから!主人が何か考えていることぐらい分かるわ。」
タクマはフッと笑う。
「・・・多分、私も主様と同じことを考えているかもしれない。」
「そうか・・・。」
二人が考えていたことは女神の事であった。
「私達二人で天使に勝つことは出来たけどそのあとに出てきた女神。アイツを見た時、正直勝てる気がしなかったわ。」
「俺もさ・・・。奴の前ではデカい事を言ったが俺も内心ビビってた。直感で感じ取ったんだ。今の俺達では奴に勝てないって。」
運よくあちらが退いてくれたから良かったものの、あのまま戦闘続行になっていたらタクマ達はなすすべもなく全滅していただろう。
タクマは自分の非力さに思い悩んでいたのだ。
しかしそれは共に戦っていたリヴも同じ思いだった。
「海の帝王とか名乗っておきながら情けないわね。戦う前に負けを確信しちゃうなんて。」
「いや、相手は神だ。そう思っちまうのも仕方がねぇ。」
タクマは月に手を掲げた。
「いずれ女神は俺達の前に立ちはだかる。その時まで俺達ももっと強くならなくちゃいけない。大切なものを守るために!」
そして月を掴むように拳を握った。
「うん、そうだね。」
リヴも頷いた。
「じゃぁ絆を深めるために一夜を共に・・・!」
「それとこれとは話が別だ!」
翌日、タクマ達一行を乗せたガレオン船の先に大陸が見えてきた。
次の目的地、エルドラ大陸である。
「おぉ!見えてきた!」
「私はお星様が見えます~・・・。」
リーシャはまた船酔いにあい旅の後半はずっとぐったりしていた。
「よ~し野郎ども‼積み荷を降ろす準備だ‼」
「アイアイサー‼」
港に着き、船から次々と荷物が下ろされていく中、船を降りようとしたタクマ達をガインが呼び止めた。
「あ、ちょっと待てお前たち!」
「はい?」
「お前たち、このあとどうするんだ?」
「そうだな・・・、まずはこの街の冒険者ギルドに立ち寄った後欲しいものがあるからそれを探していくって予定かな?」
(欲しいもの?)
リーシャは首をかしげる。
「そうか。その、ついでで悪いがこの手紙を冒険者ギルドのギルドマスターに渡してくれないか?」
と、一通の手紙を渡してきた。
「分かった。立ち寄った際に渡しておく。」
「おう!頼んだぜ!」
そうしてタクマ達は港を後にした。
外伝作品
世界最強のドラゴンテイマー外伝 キング・オブ・メモリア
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