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『第三十二章 竜対天使』

初めて出会ったときと同じように、また助けてくれた。

「・・・タクマ!」

「間に合ってよかった。教団の根城で情報を吐かせたときは肝を冷やしたぜ・・・。」


 時は少しさかのぼり、タクマは本格的に『新生創造神の右翼』を叩きに向かった。

「ゴミが捨てられていたポイントから察するにそう離れていないはずだ。」

草木をかき分け森を進むと洞窟らしき穴を見つけた。

入口には松明が設置されており明らかに人の手が加わっていた。

「ビンゴ!」

岩陰に隠れながら洞窟の中を進んでいくと少し広い空間に出た。

広間には大勢の信者たちが集まっており祭壇に向かって何かの儀式をしていた。

「今ここに!世界の粛清を‼」

「「世界の粛清を‼」」

信教者たちが一斉に腕を掲げると祭壇に置かれている大きな魔石が紫色に光出した。

その光を見たタクマは嫌な気配を感じ取った。

「まさか⁉」

咄嗟にタクマは広場に殴り込み教団を一掃していった。

リーダーっぽい男をひっ捕まえて情報を吐かせると、つい先ほどアンクセラム王都の周りに配置した魔石を起動させ悪魔を呼び寄せたと白状した。

(チッ、もっと早く止めていれば!)

捕まえたリーダー格の男を気絶させ、奥の部屋にある書棚や書類を漁っているととんでもないレベルの王都壊滅計画が練られていた。

「奴ら、最後の手段に出たか・・・。」

急いでバハムート達の元に戻り全員に事情を説明し王都へと向かったのだった。


 そして現在悪魔の襲撃で街が壊滅しているのかと思っていたらまさか天使と戦っているアルセラを見つけた時は思いも寄らなかった。

「しかし天使がいるとはな。大丈夫か?アルセラ。」

「あぁ、また君に助けられたな。」

よく見るとアルセラの怪我は酷く、特に腹の傷から出血が止まらないでいた。

「まだ在庫が残っていたはず・・・。アルセラ、これを。」

タクマは懐からバハムートと作ったポーションを渡した。

アルセラは受け取りポーションを飲むと傷がすっかり塞がり一命を取り留めた。

「ぷはっ、はぁ・・・はぁ・・・。」

「相当疲弊しているな。やっぱりさっきの天使と戦っていたからか?」

「あぁ、悪魔の出現とほぼ同時に現れて・・・一緒に戦ってくれた冒険者と私の部下が、奴に・・・‼」

彼女は悔しそうに唇を噛みしめた。

「・・・そうか。アルセラはここで休んでいろ。ここから出来るだけ遠く離れて。」

そう言いタクマは剣を抜く。

「タクマ?」

「限界したタイミング的に教団と関わりがあると思うんだ。もしかしたら王国壊滅の信託をした女神の使徒かもしれない。ちょっと行ってくる。」

「待てタクマ!・・・奴は天使。私達人間の常識は通用しないかもしれない。注意してくれ。」

アルセラの忠告を聞いてタクマはフッと笑った。

「心配ねぇ。俺は常に()()()の連中と旅をしているからな!」

少し苦笑しながらその場を後にした。


 タクマの奇襲を受け遠くへ飛ばされた天使は瓦礫をどかし立ち上がる。

「くっ、私がこのような様を晒すとは。」

翼を広げ身体にかかった砂利を掃う。

「その翼、間違いなく天界の者だな。」

上空から暴風と共にバハムートが降りてきた。

「・・・下界の竜王か。」

ズシンと地面に降り立つバハムート。

「天使が下界に直接手を下すとはどういうことだ?よほどのことがない限り下界への手出しは禁忌とされているはずだが?」

「女神レーネ様直々の命だ。下級悪魔に代わり私がこの国を滅っせよと。」

するとバハムートの背中にタクマが飛び乗った。

「女神の関係者がお出ましか。いよいよ本格的に絡んできたな。」

「貴様、さっきの!」

「この国は友人の国だ。そう安々と壊滅されてたまるか!」

両者はしばらく睨みあった後、互いの剣がぶつかり合った。


 一方、王都周囲に張り巡らされた魔石の対処に当たっているロイル。

今も魔石からは光の柱が立っており下級悪魔も後を絶やさず湧き続けている。

「くそっ、キリがない!魔石を叩こうにも悪魔が多すぎて手が回らない。このままでは!」

その時ロイルは不意を突かれ背後から切りつけられてしまった。

「ぐあっ!しまった⁉」

気づいた時にはもう遅かった。

無数の悪魔が一斉にロイルに襲い掛かったのだ。

(これまでか!)

「『フレイム・ピラー』‼」

諦めかけた瞬間目の前で無数の炎の柱が降り注ぎ周りにいた悪魔を全て消し炭と化した。

「な、何だ⁉」

驚いていると上空からリーシャがふわりと降りてきた。

背中にはラルが服を掴んでいるのが見える。

「ありがとう、ラル。」

「クゥ~!」

「ロイルさん!大丈夫ですか⁉」

「リ、リーシャ嬢・・・?どうしてここに?」

「話はあとです。すぐ魔石から離れてください!」

「えっ?」

言われるがままロイルはリーシャに引っ張られ外壁の側まで下がる。

「ウィンロスさん!お願いします!」

念話で合図を送ると少し離れたところから強い魔力反応がした。

「な、何だ⁉」

「今から魔石を一掃しますので。」

「えっ?」

すると遠くの方からもの凄い轟音と共に森を駆け抜けるウィンロスが現れた。

風魔法を身にまとい地面すれすれの高さで飛んでいる。

「オラァァ!木でも岩でも魔石でも全部なぎ倒したるわぁ‼」

木々諸共なぎ倒しながら次々と魔石を砕いていく。

とてつもないスピードでリーシャ達の前を横切って行った。

「あのスピードなら五分はかかりませんね。」

しれっととんでもないことを言うリーシャの隣でロイルはあんぐりと口を開けて固まっていた。


 半壊した街の中、剣がぶつかり合う音が鳴り響いていた。

「ハァ!」

「フッ!」

凄まじい剣技のぶつかり合い、そして互いに後方へ距離を取る。

「・・・貴様、本当に人間か?」

「どっからどう見ても人間だろ。失礼な奴だな。」

(いや、人間とはいえ天使である私についてこられるはずがない。)

タクマの実力に不審を持つが今は戦闘に集中する。

「貴様はいずれ我らの脅威に成りうるかもしれない。ここで始末する。」

「ついで見たいな感じで殺されてたまるか!」

両者は剣を構え直し、再び剣技の横行となる。

(・・・やはり並みの人間より遥かに強い。竜王の力か?いやそれだけではない、これは・・・。)

「オラァァ‼」

「⁉」

つい深く考え込んでしまいタクマの一撃で退勢が崩されてしまう。

タクマはすかさず連撃を叩きこんでいき天使をどんどん押していく。

(やはり、竜王の力とは別に・・・()()()()()()()()⁉)

その様子を天界から覗く女神レーネは考え込んでいた。

「ん~?あの子が押されているなんて珍しいわね。展開ではトップクラスの実力を持つ天騎士なのに。それにあの人間、もしかして・・・。」

レーネはタクマをじっと見てつぶやき、ニヤリと笑った。

「・・・私も会ってみようかしら?」


 天使を押し返し優勢に戦うタクマ。

腰を低くし剣を鞘に納める。

「居合・風裂傷‼」

無数の風の斬撃を飛ばし天使を追い詰める。

「くっ!」

地上で戦うのは分が悪いと踏み、天使は翼を広げ上空へと飛翔した。

「バハムート!」

後方で待機していたバハムートを呼び背に飛び乗りこちらも飛翔する。

「・・・理解できん。」

「む?」

「竜王。貴様は何故その人間に与している。長年貴様は何者の下に就こうとしなかったはずだ。」

「・・・。」

黙り込むバハムート。

「そうなのか?」

「・・・あぁ、そうだ。確かに我は過去何度も契約をせがまれたことがあった。だがその者どもはただ私欲のために我の力を欲していただけで我を従える資格など微塵もなかった。だがタクマ。お主だけは違った。力ではなく純粋に我を必要としてくれた。我がタクマに就いた理由はそれだけで十分だ。」

「バハムート・・・。」

誇り高い竜王であるバハムートが従魔になってくれた理由にタクマは嬉しく思った。

「純情な感情か。くだらん。そんなちっぽけな理由で人間に与するなど、竜王が落ちたな。」

「天使が情を下げずむか。本当に落ちたのはどちらだろうな?」

「黙れ。人間に与した貴様も抹殺対象だ。その人間諸共散るがいい!」

剣を突き立て迫ってくる天使。

だが二人は至って冷静だった。

「初めて出会った従魔がお前で良かった。」

「我もお前に召喚されて幸運だったぞ。」

タクマはローブを翻し剣を持つ。

「行くぜ、()()‼」

「おう‼」

一触即発。

目にも止まらぬスピードで戦う両者。

互いに隙を譲らず息を飲む戦闘が続いた。

「我が剣技を受けろ!『テイン・ロウ』‼」

天使の持つ剣が輝き一線の光が突き出される。

バハムートが魔法壁で受け止めその隙にタクマが背から飛び出す。

「居合・竜炎斬‼」

タクマも負けじと炎の斬撃を繰り出すもかわされてしまう。

「そのまま落ちろ!」

天使が蹴りを食らわせタクマは落とされる。

だがバハムートが落下地点に先回りし地面すれすれで受け止めた。

「サンキュー!俺も飛行能力追加だ!」

タクマは剣の炎を強め自信を包み込むと赤髪状態の竜人と化した。

「竜の力を身に宿したのか⁉」

「ご明察。」

背に生やした炎の翼で羽ばたき天使に向かって飛翔し、剣をぶつけ合う。

「これで条件は対等だな。」

「人間ごときが・・・!」

両者の戦いは剣技がぶつかり合う空中戦と化した。

「バハムートさん!」

「む?どうした娘。」

突如リーシャから念話が届いた。

「王都の周りに配置された魔石を全て破壊しました!」

気づけば光の柱も消えており悪魔の数も少なくなっていた。

「今ウィンロスさんとリヴさんが残りの悪魔の駆除をしています。もうすぐ終わりそうなので直にそちらに合流できそうです。」

「うむ。了解した。」

念話を切りバハムートは上を見上げる。

「・・・後は奴だけだな。」


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