『第281章 vs五神龍』
曇天覆うルイラス帝国皇都上空、とうとう揃ってしまった五体の神龍がとんでもない威圧感を放ちながら見下ろす。
そして相対するは数多の兵器を投入した帝国軍。
「攻撃、開始‼」
大総統の号令で一斉に砲撃が五神龍に放たれる。
すると機神龍が前に立ちバリアを展開。
全ての弾幕を防いだ。
そして次は神龍・燈篭が咆哮と同時に動き出し軍本部へ迫る。
しかし見えない壁に阻まれたのだ。
「なんだ?あの紫色っぽい魔法壁は?」
「本部全体を囲うほどの範囲とは、本当に侮れないなこの国の文明は。」
物陰から様子を伺うタクマたちと護竜たち。
「一先ず、どうする?」
タクマは魔法壁を攻撃する神龍・燈篭を見上げる。
「まずは神龍をどうにかしよう。例の作戦は地理に詳しい護竜たちに任せるしかない。」
護竜たちが頷く。
「よしそれで行こう。どのみち神龍をこのままにはしてたら作戦どころじゃねぇからな。リーシャ。」
「・・・はい。」
「ガイアデロスを頼む。」
タクマに任され、リーシャは決意を眼に力強く頷く。
「それとメルティナ。」
「何?」
「リーシャのフォロー、任せたぜ。」
「っ!」
初めてタクマから任されたメルティナはより一層やる気を見せ何度も頷いた。
「タクマ、私はどうする?」
「アルセラは護竜たちと本部に侵入、あの魔法壁を何とかしてくれ。・・・皇都に入った時から妙な違和感がするんだ。地中から、あの本部の真下だ。」
「了解した。」
「よし、行くぜ!」
炎の竜化となって飛翔し、猛スピードで本部の周りを大きく旋回。
加速した勢いで太陽神龍に激突した。
『む?何奴?』
「ちょっとした戯れに付き合ってもらうぜ!神龍の親玉!」
バハムートの空間転移のスキルを発動させタクマは太陽神と共に帝国から遠く離れたキャニオン渓谷へと消えていった。
その途端に神龍たちの統率が乱れ始めたのだ。
だが依然と四頭の意識は太陽神の手の中である。
「奴を遠くへ飛ばしても残り四頭の様子は変わらずか。そっちは頼むぞ、タクマ、リーシャ!」
アルセラは護竜たち共に本部へ続く高架橋の上を突っ走る。
当然橋の上には帝国軍が待ち構えていた。
「敵襲!護竜だ!」
「迎え撃て!今の我らはもはや護竜を恐れる必要は無くなった!」
一斉に砲撃してくるが豪快かつ繊細な身のこなしで弾幕を凌ぎ、グレイドが戦車に襲い掛かったのを皮切りに護竜たちが大暴れを始めた。
「グレイド!私たちは先を急ごう!」
アルセラを乗せグレイドは包囲網を破壊しながら突き進み、本部の城門までたどり着いた。
「さて、どうやってここを抜けるか。魔法壁もありきだし、何より頑丈そうだ。」
『入れなければ何も始まらんではないか。』
アルセラ達が頭を悩ませていると本部の制御室に誰かが入り込み、パネルを操作。
本部の城門が開いたのだ。
『なんじゃ?急に開いたぞ?』
「わからない、罠の可能性もあるが侵入できれば何とかなる。行くぞ!」
グレイドと共に神龍と奮闘中の本部に入り込み建物内に潜り込むことに成功した。
「このまま地下へ!」
帝国皇都が大騒動の最中、遠く離れたセイグリット宅で父の真実を知ったリリア。
しばらく泣いた後落ち着き、セイグリットに向き直る。
「リリア。」
「先生・・・。」
振り返ったリリアはセイグリットに深く土下座をしたのだ。
「ごめんなさい、先生が正しかった。なのに僕は目先の事しか考えず、貴女にも、キュディにもたくさん酷い事を言ってしまった。本当に、ごめんなさい・・・!」
謝罪を受けたセイグリットは怒りもせず彼女に寄り添う。
「教えてくれんか?お主に出まかせを吹き込んだ人物を。まあ大体察してはいるが。」
リリアは鼻をすすり涙をふく。
「・・・大総統です。」
「やはりか。あやつめ、自らゲンタを死へ追いやった挙句リリアに虚偽を吹き込みキュディに濡れ衣を着せるとは・・・!あまりに姑息にして卑劣、もう条約など皆無。奴に眼にもの見せてくれるわ‼」
怒りが臨界に達しオーラが吹き荒れる。
「セイグリット落ち着いて!家が壊れちゃう!」
イフルになだめられオーラを抑えた。
「ふう、してリリアよ。真実を知った今、お主はどうするべきか?」
「僕、キュディの所に行きたい・・・!キュディに、謝らなくちゃ!」
もう彼女の眼に迷いはない。
自分が何をするべきか、そして自分の本当の敵を見つけたのだ。
「いい眼つきじゃ。ゲンタと似た眼をしておる。よし!では儂らも皇都へ向かうぞ!もう神龍は都市に到達しておるはずじゃ。」
窓の外を見ると遠くの皇都から幾つもの煙が上がっており、数体の巨大な龍たちも黙認できた。
「ガイアデロスにアジ・ダハーカ。それに前に一度退けた神龍もおる。伝説の神龍がこれほど一度に会するとは。我は先に先行する。あ奴らだけでは荷が重すぎる。」
「儂等の作戦は先に伝えた通りじゃ。神龍共は頼むぞ。」
「うむ。」
バハムートは家を飛び出し飛び去って行った。
「さて、儂らも行くぞ。」
「でもここから皇都まですごい距離があるよ?バハムートに乗せてもらえば良かったんじゃ?」
「そこまであ奴の手を煩わせるつもりはない。」
セイグリットは杖を突くと異空庫が開き、様々なお宝や物資が現れた。
中にはあのグランフィッシュまであった。
「これは?」
「護竜たちに世界中から集めてもらった錬金用素材じゃ。中々希少な物もあるじゃろ?これだけあればアレが造れる。」
あれとは何か。
イフルがそう思っているとセイグリットは大きな魔女帽子を被り大人の姿となる。
「さあ、始めるわよ!」
錬成陣を展開し素材が宙に浮く。
光輝きながら素材は一つに練り合わさっていき、錬成が完了すると虹色に輝く宝玉が完成した。
「先生、これは?」
「この世で最もリソースの高いエネルギー源『大賢者の宝玉』。全世界の権力者が喉から手が出るほど欲しがるほどの代物なんだから。」
「そんなものをあっさり作れちゃうセイグリットがすごいよ・・・。」
「さぁ善は急げ!行くよ!」
宝玉が天井のシャンデリアに装着されると辺りに光が迸り、家が地震のように揺れ始めた。
すると積み重ねられたガラクタの山が蒸気が噴射するとともに崩れ落ち、大きなカメレオンのような機械獣が姿を現したのだ。
機械獣は細長い四つ足で力強く走り出し高山をを下っていく。
「すごいよセイグリット!」
「ふふ、私だってこの三百年何もしてなかったわけじゃないんだから。」
どや顔で言うセイグリットであった。
(・・・時が来たのよ。だから貴方も早く来なさい。レイガ。)
その頃、太陽神を皇都から遠く離したキャニオン渓谷へ追いやったタクマはまさかの光景を目の当たりにしていた。
「・・・まあ、相手が神龍ならこういうことも想定しておくべきだったな。」
彼の目の前には美しい大剣を握る雄々しくも神々しい赤髪の男性神が立ち塞がっていたのだった。
「我をこの姿にさせるとは。貴様、ただの人間ではないな?」
「いや、ただの人間さ。ちょっとだけ特別のな。」




