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『第275章 辺境の大賢者』

ゲンタの隠れ住む洞穴の前に神々しい機械の龍が飛来する。

『なんとも原始的な所に住んでますね。』

機械の龍『機神龍・QED=Δ』が若干呆れ気味にゲンタに問う。

「これでも脱獄の身だからね。理由は道中話した通りだよ。」

『えぇ聞きました。現代の状勢を。なんとも度し難いとしか言いようがありません。何故人間はこうも上に立ちたがる種族なのでしょう?』

「人間誰しもそうとは限らないよ。」

『理解しています。この帝国の上層部の事を私は言ってるのですよ。』

「アハハ、君とは本当に気が合いそうだ。」

荷物をまとめたゲンタが再びキュディに乗る。

『大賢者を探しているとのことですが宛てはあるのですか?』

「いや、でもこの山岳のどこかにいるということは確かだと思う。まあ僕も人から聞いた情報だけどね。」

『なんとも曖昧ですね。』

それから数日間、キュディは山岳の上空を飛び回ったが人の居そうな場所は特に発見できず、二人は途方に暮れ始めていた。

「闇雲に探しても難しいか。」

『非効率的です。一度情報を求めに人の居る場所を当たってみますか?』

「・・・いや、そんなことしたら帝国、皇都に僕の居場所が割れるかもしれない。なるべくリスクは避けたいな。」

『追われの身とはなんとも不便ですね。』

そんなことを話し合っていると山岳のごく一部に何かが積み重なったような場所を見つけた。

「行ってみよう。」

そこは不法投棄された鉄くずの山々であった。

「戦車に武器、どう見ても帝国軍の物としか思えない。」

『これは約百年前の戦車型ですね。帝国の産物で間違いないでしょう。』

だが中には新しめの鉄くずもあり、何か使える物があるかもしれないと思った二人はゴミの山々を探索する。

『私にとっては材料に山、ゲンタ、この辺りに拠点を構えるのはどうですか?私もそろそろ研究所が欲しいですし。』

「それは僕も考えた。これだけ鉄くずがあればカモフラージュも出来るかもしれないし。」

その時だった。

遠くから何やらガシャガシャと足音のような音が聞こえたのだ。

「キュディ。」

『はい、聞こえました。これは、機械が動くような音です。』

「行ってみよう。」

二人は足音のする方へ向かうとゴミ山の奥から見えたのは巨大に積み上げられたガラクタだった。

しかもガラクタには四本の足がついており、その場を歩いていたのだ。

「何だあれ?」

『わかりません、私も初めて見ます・・・、こんな、こんな興味深いカラクリは!』

「ちょっとキュディ⁉」

眼を輝かせるキュディは機龍の肉体を自身の体内に収納し人間体となった彼女が動くガラクタの前に立ち塞がり、ガラクタは動きを止めた。

「何やってるのキュディ!危ないよ!」

「ですがこれは現代の技術!何としてでもこれがどう動いているのか解き明かしたいのです!」

慌ててゲンタも降り探求心に興奮するキュディをなだめようとしていると、

「何じゃお主らは?」

ガラクタの山から出てきたのは大きな杖を持った金髪の少女だった。

(子供?)

「こんな荒れ地に人間がおるとは。旅の者か?」

「い、いや、僕たちは人を探してここにいるんだ。この山岳に大賢者が隠れ住んでるって話を聞いて・・・。」

「・・・ほう?」

少女はピクリと眉を動かし二人をジッと観察する。

「見たところ帝国の人間ではなさそうじゃな。」

「彼女は違うけど、僕は帝国から逃げてきたんだ。奴隷として働かせられるのはもう嫌だったから。」

「ほう、そんな動機であそこから逃げ出せるとは、お主中々やるの。」

脱出の際ダークエルフの女もいたが今は言う必要はなさそうだ。

「一先ず中へ入れ。連れの女もそろそろ落ち着かせんと本気で食われそうじゃ。」

「キュディ、本当に落ち着いて・・・。流石に恥ずかしくなってきた・・・。」


 動くガラクタの中にゲンタたちは通される。

「居住だったのか・・・!」

「外見にそぐわず広いじゃろ?空間魔法で室内を作っておる。」

すると小さな人形が出迎える。

少女と瓜二つだった。

「この子は?」

「儂をモデルに作った小型ゴーレム統括人形じゃ。ほれ、あそこで働いてる妖精サイズの儂をまとめておるんじゃ。」

「すごいファンタジー・・・。」

すると人形はキュディを見た瞬間血相を変え少女の後ろに隠れた。

「ん?どうしたんじゃ?この子が怯えるとは珍しい。」

「キュディ?」

「はい何です?」

キョトンとした顔で返事する。

気になった少女は鑑定魔法でキュディをスキャンするとその存在感に一瞬思考が止まった。

「・・・んじゃぁ⁉お主、もしや神龍か⁉」

動揺のあまり人形を抱きかかえる。

「おや、鑑定程度で私の正体を見抜くとは流石ですね。もしや貴女が噂の大賢者ですか?」

「え?」

少女は落ち着きを取り戻し姿勢を正す。

「おっほん!如何にも。巷で大賢者と呼ばれておる魔女、セイグリット・アントモーメンである。」

三人は人形達におもてなしされ席に着く。

「まさかお主らの探し人が儂じゃったとはの。」

「こんな子供が僕たちの探してた大賢者?」

「誰が子供か!こう見えて三百年近くは生きておるぞ?」

「三百⁉」

「ここは貴方のいた世界とは別なんですよゲンタ。常識が違うのも当然です。」

「先も話されたがお主、まさか異世界人じゃったとはの。帝国め、禁術の異界召喚にまで手を出すとは・・・。」

「彼は帝国で不当に扱われる亜人たちを救いたいと願っています。私は彼に封印を解いてもらった恩があります故手を貸すつもりですが。」

お茶を飲んでたセイグリットはしばらく間を置き、ため息をついた。

「お主ら、今の帝国をどう思う?」

「腐ってますね。私はまだ直接見たわけじゃなく知識的な偏見ですが今のご時世、あのような奴隷扱いはよろしくありません。」

「奴隷制度は各国にあるとはいえあくまで身寄りを失った者を保護するための制度。派遣や身受け取りのような扱いじゃ。じゃが帝国は保護など程遠い。まるで旧時代の奴隷のような扱いじゃ。」

「そんなことが許されるのか?」

世界の状勢を知らないゲンタでも異様だと感じてならない。

「ここが鎖国国家と言うのもあるが世界で最も文明が発展しておる国じゃ。軍事力が凄まじく聖公国サンドリアスでさえあまり強くは言えん。何より、今代の大総統に変わってから帝国は一変した。」

「友人のベンから聞いたけど、前の大総統は亜人たちに優しかったんだよね?」

「うむ。差別はあったにせよ育る場を失った亜人たちを受け入れた。奴ほど国のトップに相応しかった人間を儂は知らんな。」

だが今は違う。

大総統が変わってから帝国はより亜人差別に強くなった。

それどころか旧奴隷扱いにまで。

「僕は、友人や他の亜人たちを自由にしたい・・・!」

「それは帝国に反逆するという意味じゃぞ?」

「覚悟の上だ。」

ゲンタの眼は真っ直ぐで信念が籠っていた。

彼の眼を見たセイグリットはある少年とエルフの少女を思い出し、また一つため息をつき、

「全く、どうして儂はこういう者と縁があるんじゃろうな・・・。ならば儂も手を貸そう。帝国には個人的に恨みがあるからの。」

「助かります!ありがとうございます!」

二人は固い握手を交わした。

「改めて、儂はセイグリット。こう見えてもお主より年上じゃからな?」

「僕はゲンタです。よろしくお願いします、セイグリットさん!」


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