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『第273章 五神龍集結』

書斎に座っていた大総統が急に起き上がり、窓の外を見上げた。

空には赤い星が徐々に近づいてきている。

「・・・やはり来るか。だがそれも想定済み。いくら神龍であろうと我らの計画は覆せない。」

書斎を出るとオーマン中将が出迎えた。

「お帰りなさいませ、大総統閣下。」

「オーマンか。例の守備はどうだ?」

「滞りなく完了いたしました。それよりもあの赤い星・・・。」

「あぁ、奴らが来る。すぐに機人を起動させるのだ。上層部の老いぼれ共にも出撃指示を出せ。」

「了解しました。」

オーマンが場を離れ大総統が一人その場に残る。

「さて、私は本命を起動させに行こうか。・・・いや、先に彼らと一度対話を試すか。少々の寄り道をお許しください。()()()()。」


 赤い小惑星が大気圏を通過し雲をかき消し地上へ向かって落ちてくる。

人々が慌てて避難する中、帝国内の川を泳ぐ大きな魚影。

それはモーザだった。

モーザが中央湖までたどり着くと岸に上がり口を開ける。

「タクマさん!あれ!」

「もうすぐそこまで⁉」

口の中からタクマや護竜(ガーディアン)たちが飛び出し帝国に降り立つ。

だがその直後、落下中の小惑星が突然爆発。

凄まじい爆音と光が帝国を包み込んだ。

眼を開けると天には赤熱の外殻を纏い双頭の頭部を持ち、神々しい光の翼と光輪を背に広げる巨大な龍。

「あれが、太陽神龍・アポロニカ・・・!」

「とんでもない存在感、これまで出会ってきた神龍の比ではありません・・・!」

その場にいるだけで圧し潰されそうになる存在感を放つ太陽神は帝国軍本部に振り向く。

そこには大総統の姿があった。

『愚かな先導者よ。申し開きがあるのならば一度耳を傾けよう。』

男女の混ざった声が脳内に響く。

太陽神の声だ。

「我々は国の発展に力を注いでおります。貴方様が降臨されるような理由はないはずですが?」

『とぼけても無駄だ。』

太陽神から強烈な圧が放たれ辺りが震える。

『貴様らは争いを続け多くの命を奪う。その影響で生態系は崩れ、世界の均衡も崩壊し始めた。』

その話を遠目で聞いていたタクマたちは顔を見合わせる。

「そういえばアムルも言ってた。人間同士の争いで無関係な動植物にまで悪影響が出ていると。」

リーシャも出会った死神の少女エトナを思い出し、彼女も人間を嫌っていた。

「大元の原因はルイラス帝国だったのか。」

「確かにこれだけ文明が発展していれば他国との戦争もあり得ない話ではありませんね。」

(特に一部の人間によっては強い差別も・・・。)

一同は物陰で太陽神の会話に聞き耳を立てる。

『これまで均衡復旧の兆しが見え始めた矢先、貴様らはある兵器の開発を企てている。それは決してこの世に存在させてはならない紛い物。それが貴様らの手に渡った瞬間均衡が再び崩れ始めた。それも以前よりも進行が加速するほどに。』

「お人聞きの悪い。我々はただ国のためを思って発展を進めているだけです。何も均衡を崩そうなど・・・。」

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?』

太陽神の言葉にタクマたちは違和感を覚える。

「私が何か?」

『あくまでとぼけるか。まあいい、我には関係のない事。だが貴様らが行おうとしていることは我らにとっても脅威、それも事実。故に、今ここで貴様ら人類を滅ぼす!』

その言葉にタクマたちは驚くが大総統は冷静、それどころか少し笑いを零した。

『さすれば()()()()も再びこの地に降り立つことは無くなるだろう。』

「では我々もその審判に抗うと致しましょう。」

大総統が指令を下すと軍基地の地下から無数の機人兵が現れ兵士が搭乗、起動させ太陽神の前に立ち塞がった。

「この私が何も対策していないと思わないでいただきたい。」

『愚かな人類め、よりにもよってその男に利用されるとは嘆かわしい。』

太陽神の胸のコアが輝くと背の光輪も輝きだした。

『集え五神龍!我が権能の下に!』

光りが天を貫くと空が曇天となり帝国を覆う。

その時、リーシャの胸のペンダントが強い光を放った。

「これはまさか⁉」

「ダメ!ガイアデロス!」

リーシャが抑え込もうとするが抗えず、ペンダントを突き破り天高く上る。

そして光が爆散し、大陸をも思わせる巨大な地龍、『地神龍・ガイアデロス』が帝国の大地に降り立ったのだ。


同時刻、和国では地震が蓮魔の都を襲っていた。

「なんだ⁉急に地震が⁉」

ラセンやスイレンたちも突然の出来事に動揺を隠せない。

すると都の地下にある巨大な結晶がひび割れていき、中に封じられていた巨龍が眼光と共に目覚める。

「~~~~っ‼」

黒紫の龍鱗に覆われ四本の腕と体躯よりも大きい翼を広げた三つ首の巨大龍、『破壊神・アジ・ダハーカ』が重苦しい咆哮を轟かせる。

天井を突き破り反り返る山の一つが崩れると地中から神龍が姿を現す。

解き放たれたアジ・ダハーカはそのまま天へと姿を消したのだった。

「し、神龍が復活したのか?一体何が起きてるんだ・・・。」


 巨体に見合わないマッハの速度で海を渡り、ルイラス帝国の上空に現れるアジ・ダハーカ。

その時、聞き覚えのあるシャンデリアのような咆哮と共に天から黄金の鱗粉を羽衣のように纏った純白の東龍、『神龍・燈篭(とうろう)』も現れる。

そして、曇天から機械の龍『機神龍・QED=Δ』も。

「キュディ・・・!」

世界を支える五体の神龍、その全てがここに集った。

『貴様らはこの世界に不要と判断された。覚悟するがいい、人間どもよ。』



 時は少し戻り太陽神が現れる前、動くガラクタの家にセイグリットとリリアが転移してきた。

「ふぃ~、数日ぶりの我が家じゃ。」

「ねぇ先生、ボクに見せたいものって何なの?」

「それはじゃな・・・。」

「セイグリット。」

出迎えたのは光るアジサイの花を持つイフルとバハムートだった。

「おや?緑と青のドラゴンはどうしたのじゃ?」

「先にタクマの下へ行かせた。あの空の赤い天体、どうにも胸騒ぎがするのでな。」

「相変わらず鋭い勘じゃ。流石竜王。」

イフルが前に一歩出る。

「ごめんセイグリット。私この花に触っちゃって・・・。」

「・・・観たのか?」

イフルは頷く。

「我の不足手だ。責めないでやってほしい。」

「別に攻めるつもりもないわ。ほれリリア。」

リリアを呼び寄せるとアジサイの花を見てリリアはふと思い出す。

「これ、アジサイ?なんで君たちが?これ、お父さんの好きだった花だよ?」

「貴女のお父さん?」

「リリア、この花はな、本来この世界には存在しないものなんじゃ。」

「え?」

「そしてこの光るアジサイは、お主に送られた手紙でもある。ほれ、花に触れてみるのじゃ。そうすれば、真実を知れる。」

よくわかないが言われた通り花に触れた。

その時、彼女の目の前が突然明るくなりある光景が観えた。

それは記憶、異世界からやってきた父親の記憶であった。

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