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『第272章 迫る脅威と希望』

遥か宇宙、太陽から現れた双頭の神々しい赤龍が小さな小太陽のように炎をその身に纏い、我らが星へと向かっていた。

その光は地上から人々の眼にも見えていた。

「ママ、あれ何?」

「何かしら?お星さまにしてはちょっと大きいね。」

その様子はルイラス帝国でも黙認でき、遠く離れた山脈を移動する動くガラクタの山。

セイグリット宅のてっぺんで休んでいたウィンロスもその存在に気付いた。

「ん~?なんやあれ?」


その頃、帝国ではミザリーが転送し捕獲した魔械竜と大きな化石を用いて軍の技術班がある計画を進めていた。

そこへ先ほど水晶でミザリーと交信していた帝国上層部の男がやってきた。

「進歩はどうかね?」

「オーマン中将!」

技術班全員が敬礼をした。

「計画は順調です。ミザリー少尉が身を挺して転送してくれた魔械竜、それに例の化石の復元も完了し、あとは既存の魔械竜からパーツを取って繋ぎ合わせれば完成です。」

「特急の計画だったが今はそれで充分。事が終わり次第徐々に改良を加えれば良い。引き続き完成を急げ。」

「ハッ!」

オーマン中尉は退室し大総統の大部屋へと足を運ぶ。

そこには不気味に輝く魔法陣、そしてその上に仮面を被った大総統が力なく鎮座していた。

「そろそろその()()()も必要なくなりますね。もうしばらくお待ちください。我が神よ。」


 深く薄暗い海の向こうから機械のモササウルスが泳いでくる。

彼の損傷した部位が錬金術によって修復されていた。

「よし、これで元通りじゃ。」

杖を置くセイグリットが一息つく。

「それにしても助かったぞ、メルティナ。お主の特殊な魔力のおかげでかなり長い時間錬金術を扱えた。」

「役に立てて良かったよ。それにしても、モーザの中ってこうなってたんだね。」

モーザの体内は潜水空母のような護竜(ガーディアン)たちが全員ギリギリ入れるほどの空間と、天井両サイドにそれぞれ三つ、計六つの個室が内蔵されていた。

当分ここで生活できるレベルの施設の充実さだった。

「・・・リリアは?」

「・・・しばらくそっとしておけ。心の整理には時間が掛かるものじゃ。」

あの後、リリアは個室に閉じこもっていた。

「・・・・・。」

『どうしてなのキュディ!どうしてお父さんに会わせてくれないの⁉』

『リリア、これからはセイグリット殿の所で暮らすのです。ここにいては、貴女のためになりません。どうか、何も聞かずここから出ていってください。』

『納得できないよ!お父さんに会わせてキュディ!キュディー‼』

『お前の父は殺されたのだ。他ならぬ機神龍の手によってな。』

『嘘だ、そんなことあり得ない・・・!』

『機神龍を殺したいか?であれば我が帝国軍へ加われ。私たちが、お前の復讐を手助けしてやろう。ふっふっふっ。』

昔を思い出すリリアは自分のしていることが何のためなのか分からなくなる。

「ボクは、どうすればいいの?教えてよ、お父さん・・・。」

広間の方ではタクマがリーシャに治癒魔法をかけてもらっていた。

「これで火傷は治りましたよ。」

「サンキュー、リーシャ。」

護竜(ガーディアン)たちも周りで身を休め今後に備えていた。

「さっき聞いた話だと帝国軍はリリアをビーコンにして島にたどり着いたと言ってたんだな?」

「はい。ですがリリアさんにはそのような物は一切持っていませんでした。なのにどうしてビーコンにされたんでしょうか?」

「まあ過ぎたことは仕方ない。何より問題なのはキュディだ。」

「彼女は突然龍となり、その場から飛び去ってしまったんだろう?」

「はい、急に苦しみだしたと思ったら拠点を破壊して・・・。でもあり得ません、あのキュディさんがあんなことを・・・。」

「そのことについては儂に心当たりがある。」

セイグリットとメルティナが階段を下りてきた。

「おそらく、島の噴火にも関わっておる話じゃ。」

セイグリットが言うにはキュディの暴走と噴火はある存在が関係しているとのこと。

それは五体の神龍の一柱『太陽神龍・アポロニカ』が目覚めた影響だと言う。

「五体目の、神龍・・・!」

「アポロニカは五神龍のリーダー的存在、一度奴が目覚めれば他の神龍は太陽神の権能によって逆らうことは出来ん。奴が目覚めた影響でこの星のマグマが活性化され、火山が噴火したと儂は憶測しておる。」

「じゃあキュディは?」

「うむ、太陽神の力に充てられたのじゃろう。」

「待ってください!でしたら地神龍(ガイアデロス)は?」

「幸い太陽神はまだ全ての権能を解放してはおらんのじゃろう。じゃが既に目覚めていたキュディを招集したということはいずれ地神龍だけでなく他の神龍も・・・。」

リーシャは胸元のペンダントを握りしめる。

「一つ解せないことがある。何故太陽神は今になって目覚めたんだ?」

アルセラの問いにセイグリットは一瞬言葉を飲み込む。

「・・・おそらく帝国軍の仕業じゃ。」

「軍が?」

「タクマとアルセラの二人には既に話したがこの際じゃ。皆に伝えておこう。」

チラッと目線をリリアの個室に移した後、セイグリットは少し声を上げて答える。

「二百年前、かつてレイガと共に儂らが封印した罪の大厄災、その全ての元凶『大罪の巨神』を帝国軍は復活させようとしておる。奴の封印が解かれたが最後、この世界は罪に飲まれ滅ぶであろう。」


 天界、神々の住まう世界ではある男が動き始めていた。

「・・・999,1000!」

遺跡の屋上では元戦神ジームルエが愛刀の大剣を素振りをしていた。

「あのちっこい身体でよくあんなでかい剣を振り回せるもんだ。」

「それがジームルエですから。」

彼女を見守っていたのは親友の天使ミレオンと強欲のグリードであった。

「もうお前は十分強いんだし鍛錬は程々でいいんじゃねぇか?」

「ダメ、タクマだってきっと強くなってる。彼が安心して一緒に戦えるように私ももっと強くならないと。」

「か~、お熱いねぇ。タクマって奴も罪な人間だぜ♪」

「私の前でその話はあまりしないでください。無性に腹が立つんで。」

「まだ引きずってんのかよ・・・。」

そこへレイガがやってきた。

「おうレイガ!何用でこっちに来た?・・・ん?お前、その()()()()・・・。」

「いつも白いマントだったがやっぱ俺はこの色の方が落ち着く。」

「まるで昔に戻ったみたいだな。」

「ふん。ジームルエ、ミレオン。しばらくこの場を任せる。」

「どこか行くんですか?」

「あぁ、昔やり残した仕事を片付けにな。行くぞグリード。」

「あいよ。んじゃお二人さん、留守番頼んだぜ。」

「行ってらっしゃ~い。」

「アンタねぇもうちょっと礼儀をさぁ・・・。あの人たち私たちの大先輩なのよ?」

ジームルエの見送りの後、二人は遺跡の廊下を歩いていた。

「何の因果かね。また奴らと闘う羽目になるとは。」

「当時は封印が精一杯だったが、神となった今は違う。今度こそ、罪の大厄災を根絶する。()()()との約束だからな。」

外に出ると既にそこにはかつて七つの大罪と世界に謳われた魔王、『嫉妬のレヴィアス』『怠惰のフェニス』『暴食のグラニー』『色欲のアスモデニス』『憤怒のドラン』『強欲のグリード』そして『傲慢のルシファード』の七人が待っていた。

「行くぞ!罪を喰らいに!」


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