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『第261章 魔械の楽園』

タクマが眼を覚ますと爽やかな木陰の草原に横たわっていた。

「・・・え?」

起き上がって辺りを見回すとそこは美しい大自然が広がっていた。

「どこだここ⁉」

状況が理解できず混乱するタクマだが深呼吸し落ち着かせる。

「え~と、冷静に思い返すと?」

セイグリットが用意した安眠コクーンに入った所までは覚えてる。

だが入った瞬間睡魔に包まれ意識が飛ぶように眠った。

それ以降の事は寝ていたので覚えてない。

「で、目を覚ますと超豊かな大自然、なんでやねん!」

一人ノリツッコミをかますが誰もいない。

「まずは状況把握と、リーシャ達を探さねぇと。」

とにかく行動あるのみ。

大草原を歩き進み小川を渡る。

そして入り組んだ渓谷へやってきた。

「このあたりなら高所が多いから辺りを見渡せそうだ。」

そびえたつ一本の石柱に上り頂上から辺りを見渡す。

「う~ん・・・、見た感じ変哲のない大自然だな。だが・・・。」

振り返ると後ろには天高くそびえたつ山。

頂上から煙が登っており活火山のようだ。

更に気になるものはある。

火山の麓にはあまりにも場違いな近未来な建物。

更にその奥には上空に浮遊する巨大な神殿のような建物も見えた。

「あの手前の建物、どう見ても誰かがいる感じだよな。一先ずあそこを目指してみるか。」

石柱から降りると奇妙な気配が複数近づいてきてることに気付く。

警戒して剣に手をかける。

そして岩陰から飛び出してきたのは苔を纏った機械のラプトルだった。

「うおっ⁉」

反射で剣を振り襲い掛かるラプトル一刀両断する。

「なんだこいつ?護竜(ガーディアン)、とは違うな。まさか別個体?」

切り裂いたラプトルは活動を停止する。

すると周りから次々と苔の生やしたボロボロのラプトルの群れに囲まれた。

「流石に逃げるか!」

多勢に無勢、剣をしまい走るタクマ。

それを追うラプトルの群れ。

「追いつかれる!こうなったら・・・!」

雷の竜化で速度アップを試みたが()()()()()()()()()()()()

「っ⁉竜化できない⁉バハムートたちとの繋がりは感じられるのに何で⁉」

しかし事実、竜化の力は使えないと発覚しタクマは全力で群れから逃げる。

そして前方に大きく裂けた崖が行く手を阻んだ。

「行くしかねぇ!」

助走をつけ勢いよく崖からジャンプしたがギリギリ向こう岸に届かず手前の崖を掴んだ。

振り返るとラプトルの群れは向こう岸で吠えていた。

「ふぅ・・・。」

しかし安心したのも束の間、掴んでいた岩が崩れてしまった。

「やべっ!うわっ⁉」

すると誰かが落ちるタクマの手を掴んだのだ。

見上げるとその人物は深い青髪をなびかせるレザージャケットと帽子を身に着けた女性だった。

「大丈夫ですか?」


 引き上げられたタクマはようやく一息つけた。

「はぁ~、誰だか知らないけど助かった。まさか人と会えるなんて思わなかったぜ。」

女性は向こう岸のラプトルの群れを見る。

「あれは野生の魔械竜。群れで行動する獰猛な種です。」

「やっぱり魔械竜か。絶滅した種が生き残ってたなんて驚いたぜ。」

「貴方は何故ここに?」

「それが俺にもよくわからないんだ。知人の家で寝てて気づいたらこんな所にいたんだ。あんたこそどうしてここに?魔械竜についても詳しそうだったが。」

「私はずっと前からこの()にいます。とある事情で周囲を調べてたんです。」

「・・・ん?島?」


 二人は高くそびえる廃墟の屋上へとやってきた。

「おぉ⁉」

そこは辺りの大自然が一望でき、よく見ると様々な恐竜型の魔械竜が数多く生息していた。

そして極めつけは、島を囲うように暗雲の壁が広がっていたのだ。

「ここは外界と断絶された絶海の孤島。独自の生態系が織りなす魔械竜の楽園です。」

「魔械竜の、楽園・・・。」

壮絶な景色にタクマは言葉を失っていた。

「ここが島だってことにも驚いたが何よりこれだけの魔械竜が生息していたことの方が驚きだ。なるほど、外界と断絶されてるなら絶滅したって言われてもおかしくない。」

「いえ、ここに生息する魔械竜は全て復元された生物です。」

「・・・復元⁉てことは、あれらを復元した誰かがいるってことか?」

「鋭いですね。確かに彼らは意思の手によって蘇りました。」

すると彼女の話を聞いていたタクマが急に話を切り出した。

「・・・なんでそんなことまで知ってるんだ?あんた、何者なんだ?」

「そういえば自己紹介がまだでしたね。私の職はトレジャーハンター。名を『キュディ』と呼んでください。」


 タクマとトレジャーハンター、キュディの二人は渓谷の表層を歩いていた。

「ますますわからねぇ。なんで俺はこんな島にいるんだ?リーシャ達は無事なのか?」

バハムートたちと念話を試みたがノイズが走って一向に繋がらない。

現状仲間たちと連絡を取る手段がなかった。

「闇雲に探し回るのはあまりお勧めしません。先ほどのラプトルのように獰猛で危険な魔械竜もいますから。」

「アイツらの実力上そこまで心配はしてないが、気がかりな点が多すぎる。まずはリーシャ達と合流を最優先にしたいな。」

「人探しでしたらやはり見晴らしのいい高所がいいですが・・・。」

「危険な魔械竜がいる、だろ?」

頷くキュディ。

「しゃあねぇ!まずは鑑定スキルで地道に探すしかねぇか。・・・あ、スキルもバハムートのものじゃん。竜化が使えなかったとなるとスキル系統も同じと考えた方が良さそうだな。」

仕方なく高い石柱に上り辺りを見回す。

(正直島と言っても割と広い。竜化もスキルも無しにアイツらを探すのは困難だ。だったら手段はこれしかない。)

タクマは深く息を吸い込むと、背から黒い炎の翼が現れた。

「悪いシーナ、一瞬だけ使わせてもらう!」

口を開け黒炎の球を真上に放ち、大爆発する。

その爆音は辺りに響き渡り大地を震わす。

「ちょ、ちょっと⁉何をしてるんですか⁉」

飛び降りてきたタクマにキュディが焦りを見せる。

「ちょっとした合図だ。これほど広範囲に響き渡れば・・・。」

その時、遠くから炎の球が打ち上げられ爆発した。

「ビンゴ!そしてラッキー!リーシャが近くにいた!」

「ですが周りの魔械竜も集まってきた!逃げましょう!」

「おうよ!」

ラプトルの群れに追われながら二人は炎が撃ちあがった場所へ向かう。

すると前方から小柄な人影が走ってきた。

「タクマさーーん!」

「リーシャ!メルティナも一緒か!」

背にメルティナがしがみついた状態で全力でこちらに走ってくる。

「リーシャ!こっちは魔械竜の群れに追われてんだ!引き返せ!」

「無理です!だって私たちも・・・!」

その時だった。

彼女たちの背後から巨大な機械のムカデが飛び出してきたのだ。

「「うえぇぇぇぇ⁉」」

「「うわぁぁぁぁ‼」」

たまらず急ブレーキしリーシャ達と一緒に逃げる。

「とんでもねぇ奴に追われてんな⁉」

「いくら反撃しても攻撃が全く効かないんですよ!」

「マジで⁉」

リーシャもそれなりの強者。

彼女でも手に負えない相手がこの島にいるなんて。

前方からはラプトルの群れも迫ってくる。

「くそ!居合・斬破(ざんぱ)!」

断崖に向かって巨大な斬撃を放ち大きな亀裂を作った。

「こっちだ!」

なんとか挟み撃ちは回避できたが後ろから群れと巨大ムカデが追ってくる状況は変わらない。

「キュディ!あのデカブツは何なんだ?」

「あれはこの辺りを縄張りにするヌシです!生態系の頂点に目を付けられるなんてツイてない!」

とにかくこのままでは合流どころではない。

タクマは意を決する。

「キュディ、俺があれを追い払う!その間リーシャ達を頼めるか?」

「一人で戦う気ですか⁉今貴方は力が使えない状態なんでしょう⁉」

「大丈夫だ、使える技はまだ持ってる!」

タクマは振り返り背中に居合を構えをとる。

「居合・大壊殴巖(だいかいおうがん)‼」

大きく振りかぶり大地を崩壊。

ラプトルの群れは亀裂のそこへと消えていった。

「これで一対(タイマン)だ。かかってこい!機械ムカデ!」


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